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ASCOキーハイライト エーザイのエリブリンは市場で有利に

公開日時 2010/07/08 04:01

今年6月に米シカゴで開催された「ASCO(米国臨床腫瘍学会)2010」のキーハイライトセミナーがサイニクス主催で7月6日に開催され、同学会で話題となったがん領域における開発品にフォーカスし、臨床試験の結果や上市後のインパクトなどに関し、米医薬系のコンサルタント企業KantarHealthのオンコロジースペシャリストのリチャード・ワグナー氏(シニア・ディレクター)とゴードン・ゴコナワ氏(シニア・コンサルタント)が解説した。両氏は多発性骨髄腫や転移性乳がん、非小細胞肺がん、慢性骨髄性白血病を始めとする7テーマについて、最新のトピックを説明した。

転移性乳がん(MBC)の領域では、エーザイが申請中(10年3月に日米欧同時)のエリブリンの有用性についてワグナー氏が解説した。MBCでは様々な薬剤が用いられているが、有用な薬剤がない。米国ではアンソラサイクリンで治療された患者にゼローダ(カペシタビン、ロシュ)が単剤療法で最も多く使用され、その次にゲムシタビン(ジェムザール、イーライリリー)やビノレルビンの使用頻度が高い。

ASCOではエリブリンのP3「EMBRACE」(762人の患者が対象)の結果が発表され、対照群(医師が選択した治療=TPC)に対し、エリブリン群でPFS(無増悪生存期間)で統計学的有意差はなかったものの、OS(全生存期間)の中央値では有意に延長(エリブリンvs対象群=13.1カ月vs10.7カ月)したとの結果が発表され、話題となった。

安全性についても毒性はその他の薬剤に比べてそれほど多くなく、「初めてMBCで生存期間(OS)の延長が認められた薬剤。ベストプラクティスといえる。OSの延長を乳がんで示すことは難しい状況で、これは大きな成果。ほとんどのこれまで承認された薬剤はPFSの改善によるもので、OSのベネフィットは示されていなかった」とコメント。

一方で、「PFSとOSの結果が連動していないため、全てで統計学的有意差が出たわけではない。よって、OSの結果はどのように得られたのか」と疑問点を挙げつつも、「PFSは副次評価項目であり、改善が認められたのは事実」と評価した。

承認の見通しや市場のポジションについては、「米国で最初に承認される見通しで、今年の早い段階。11年に欧州と日本がほぼ同時に承認されるだろう」と語った。一方、市場での競争力については「他の薬剤に比べてサバイバルベネフィットを主張できるので強力だし、毒性が少ないメリットもある」と解説。イグザベピロン(イグザンプラ、BMS)に比べて毒性が低いことが米国で示されているとして、「大変な競合相手になる」とコメントした。さらに「日本ではイグザンプラは市場にないし、エリブリンは海外では有利な位置づけをとることになるだろう」と期待を示した。

●ファイザーのALK阻害剤 12年に承認か

ASCOで非常に優れた臨床効果が発表され、会場からどよめきが起きたといわれる個別化医療の筆頭として期待の高いファイザーのALK阻害剤(非小細胞肺がん)についても取り上げた。ワグナー氏は「ファイザーとアボットはP3試験で診断薬の試験を導入しようとしており、治療薬と同時に診断薬を発売しようとしている」と述べ、早期承認に期待を示した。承認は12年と考えられていることも明かした。
 
また、慢性骨髄性白血病(CML)のグリベックに続く新世代の治療薬に注目が集まっているが、ASCOではダサチニブ(スプリセル、BMS/大塚製薬)やニロチニブ(タシグナ、ノバルティス)の2剤に関して、標準治療薬イマチニブ(グリベック、ノバルティス)との直接比較試験の結果が発表された。

いずれも初発慢性期のCML患者を対象とした試験で、ダサチニブのP3試験(「DASISION」、患者数は519例)やニロチニブのP3試験(「ENESTnd」、846人)でそれぞれ結果は良好だった。ワグナー氏は「特に分子遺伝学的寛解(MMR)ではグリベックに比べニロチニブの奏効度の高さが時間の経過とともに差が開いている。長期にわたるアウトカムに関しても差が出ることが示唆される」と評価した。安全性も忍容性も優れていたという。「米NCCNのガイドラインではダサチニブもニロチニブは同等に扱われている。より奏効度を高め、生存期間を延長させることができるので、イマチニブの代わりになる薬剤」と期待を示した。

しかし、一方でイマチニブが15年に特許が失効し、ジェネリックが登場することが予想され、次世代薬と薬価差が出ることが想定される。そのため、抗がん剤の高薬価が問題となっていることを踏まえ「イマチニブで治療をスタートし、耐性が出た患者に次世代の薬剤に切り替えるという段階的な使い方が提唱され、医薬品のラベルに表示することも考えられている。また、ファーストラインでイマチニブ、セカンドラインでダサチニブを使うという“バックアップセラピー”という考え方もある」と述べた。

一方、多発性骨髄腫(MM)の領域ではゴコナワ氏が3つの臨床試験(「MM-015」「CALGB 100104」「IFM 2005-02」)の結果を踏まえてレナリドミド(製品名:レブリミド、セルジーン)、移植後の維持療法として有益であるとの結果が出たことや、移植未実施の患者に対しても導入療法の後の治療で良好な結果が得られたことを評価した。
承認時期の予想やマーケットの位置づけについても触れ、MPR-Rレジメン(レナリドミド、メルファラン、プレドニゾンの3剤併用療法の後にレナリドミド維持療法を行う)の承認は欧州では2010年下半期、米国では10年後半か11年に申請が予定されるとした。

日本では6月に承認になったが、ファーストライン治療のブリッジング試験等の結果はなく、サリドマイドで治療していた患者で再発した人や抵抗性を示した人がレナリドミドに切り替える、との見方を示した。同剤の世界売上は17億ドルとブロックバスターに成長したが、今後の新たな承認を見越し「売上に数億ドルが追加されるだろう」と期待を示した。

レブリミドがMMの次に適応追加を目指している疾患は複数にのぼり、マントル細胞リンパ腫、12年に承認を予想)、マントル細胞リンパ腫の化学療法にリツキサンと併用した維持療法(14年の承認を予想)、慢性リンパ性骨髄腫(14年の承認を予想)、前立腺がん(14年の承認を予想)、骨髄異型性症候群(15年の承認を予想)、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(17年の承認を予想)などがある。同氏は「セルジーンがレナリドミドをなんとかして血液がんやリンパ腫領域におけるアバスチンのような薬剤にしたいと考えている。複数の固形がんに効く薬剤として位置づけるため、幾つものリンパ腫または骨髄腫の適応薬として育成したいと考えている」とコメントした。
 

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