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田辺三菱 一部品質試験せずにリプルなど注射剤出荷 厚労省立ち入り調査

公開日時 2011/01/27 04:02

田辺三菱製薬は1月26日、製造子会社の田辺三菱製薬工場の足利工場で製造した4注射剤(うち1剤は1物2名称)の出荷判定に必要な一部品質試験について実施していないにもかかわらず、試験記録を作成し、その記録にもとづいて出荷していたことが判明したと発表した。試験不実施が疑われる製品は同日から自主回収することになった。この事態を受け厚生労働省と栃木県は同日、薬事法違反の有無を見極めるため同工場に立ち入り調査した。

自主回収される製品は、慢性動脈閉塞症などに用いるリプル注、パルクス注(リプルと1物2名称製剤で、大正富山医薬品が販売)、関節リウマチに用いるリメタゾン静注、敗血症、肺炎などに用いるパズクロス点滴静注液。対象製品の出荷時期は製品によって異なるが、全体では08年5月~10年9月までで、おおよそ200万本に上る。保存しておいた製品による確認試験では品質上の問題はなく、健康被害の報告はなかったとしている。不正を働いたと疑われる社員を試験担当から外した後に製造された製品は、試験が行われたうえで出荷されており、これら製品について安定供給には問題がないとしている。

発覚の経緯は、10年9月に子会社の業務監査や本社内の内部通報で、試験不実施の疑いが指摘され、社内調査を実施。10月に「試験は実施されていた」とのけ結論をまとめたが、12月に朝日新聞がこの問題について取材。それに押される形で、本社が社外弁護士による調査を依頼し、1月24日までにいくつかの試験が実施されておらず、他にも実施していない疑いがあることが判明した。

不実施の疑いがある試験は、医薬品を承認書に定められた重金属やヒ素などの不純物に混入を調べる純度試験と、製品に含まれる不溶性微粒子試験。社外調査チームは、計測データの記録が残らない試験というが、試験に必要な試薬や資材の購入実績と試験実績が符号しないことなどの傍証から不正を判断した。試験担当者は40代の男性一人で、02年10月~10年8月まで担当、不正の動機については詳しくは詰め切れていないが、単純作業が多く、試験途中で機器の調子が悪くなったりした際に、再試験が面倒になって、試験を実施したことにしたといった理由などが考えられるという。

土屋社長 会見し謝罪 進退「信頼回復を果たした上で考えたい」

田辺三菱は10年4月に、製品の承認申請データの改ざんで業務停止処分(25日間)を受けているが、その問題が取り沙汰されている時も担当者は不正を働いていた可能性がある。この日、都内で会見した土屋裕弘社長(写真:左から2人目)は謝罪し、「信頼回復の途上で起きた問題であり、極めて残念」と話した。自らの進退を問われると、今回の問題を受けて設置した社外有識者による「危機管理委員会」から今後受ける緊急提言の実施など「信頼回復を図るのが社長の責務。それを果たしたうえで考えたい」と述べた。

承認申請データの改ざん問題による社外調査委員会委員長で、今回の問題の調査にもあたった郷原信郎弁護士も会見に同席し、「(見えてきたと思っていた)コンプライアンスの向上はいったい何だったのかという思い」「また、このような重大な問題で謝罪しなければならない事態になったことは誠に残念」と述べ、今後、徹底調査するとの姿勢を強調した。

厚労省医薬食品局監視指導・麻薬対策課の蛭田浩一課長補佐は、本誌に「24日に田辺三菱製薬から課に報告があった。今は(立ち入り調査で)事実を確認している段階で、この先の見通しを話す段階にはない。一般的には、事実関係を明らかにし、薬事法違反に抵触するか否かを検討し、違反しているなら行政処分を検討するという流れになる」と話した。

 

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