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トリプルマーカーによる測定法、慢性腎疾患の死亡と末期腎不全の予測精度を向上

公開日時 2011/05/11 22:59

慢性腎疾患(CKD)を対象に実施した前向きコホート試験REGARDSの結果、クリアチニンと尿中アルブミン/クレアチニン比(ACR)、シスタチンCの3つのマーカーを組み合わせた検査アプローチが、クレアチニンだけよりも、全死や末期腎不全の発見の精度を向上させることがわかった。米サンフランシスコVA医療センターCarmen A. Peralta医師らの研究グループが、学術誌「JAMA」4月20日号で報告した。


2003年1月~2010年6月までに登録した、45歳以上の被験者26643人を対象に、クリアチニンとシスタチンC、ACRを測定。CKDの診断におけるシスタチンCとACRの有用性を評価するため、クレアチニンでCKDと診断された被験者を、 (1)クレアチニンのみでCKDを定義した被験者群と(2)クレアチニンとACRで定義した被験者群、(3)クレアチニンとシスタチンCで定義した被験者群、(4)全バイオマーカーで定義した被験者群の4群に分け、また、クレアチニンではCKDを検出できなかった場合の、シスタチンCもしくはACRの有用性も評価するため、クレアチニンではCKDとされない被験者を、(5)どのバイオマーカーでもCKDと定義されなかった被験者群と(6)ACRのみで定義した被験者群、(7)シスタチンCのみで定義した被験者群、(8)ACRとシスタチンCで定義した被験者群の4群に被験者を分け、合計8群において全死と末期腎不全の発生を追跡した。追跡期間の中間値は4.6年間。
被験者は平均65歳、40%が黒人、54%が女性、21%が糖尿病で59%は高血圧であった。追跡期間中に1940人が死亡、177人が末期腎不全を発達させていた。


クレアチニンによる糸球体濾過量推定値(eGFR)でCKDと診断されたのは2904人(11%)。このうちクレアチニンとACRの二つのバイオマーカーでCKDとされたのは148人(5%)、クレアチニンとシスタチンCのマーカーでは1172人(40%)、全てのバイオマーカーでCKDと診断されたのは883人(30%)であった。
クレアチニンでCKDと診断された被験者のうち、シスタチンCまたはACRでもCKDとされた被験者は、死亡率と末期腎不全の発生率がより高い傾向が見られた。クレアチニンのみで診断された被験者と比べ、クレアチニンとACRの二つのマーカーでCKDが認められた被験者では、死亡のハザード比(HR)が3.3(95%CI:2.0-5.6)、クレアチニンとシスタチンでCKDとされた被験者では3.2(95%CI:2.2-4.7)、また全バイオマーカーでCKDと診断された被験者では5.6(95%CI:3.9-8.2)となった。


末期腎不全リスクは、全バイオマーカーでCKDとされた被験者が最も高く1000人・年あたり34.1人(95% CI: 28.7-40.5)であった。クレアチニンだけで定義された被験者は1000人・年あたり0.33人(95% CI: 0.05-2.3)。
一方、クレアチニンではCKDと診断されなかった23739人のうち、ACRまたはシスタチンC、もしくはその両方のマーカーでCKDが確認されたのは3863人(16%)。このうち、ACRでCKDが確認された被験者は、どのマーカーでもCKDとされなかった被験者と比べ、死亡のHRが1.7(95%CI:1.4-1.9)、シスタチンCでCKDとされた被験者は2.2(95%CI: 1.9-2.7)、ACRとシスタチンCの両方で確認された被験者は3.0(95%CI:2.4-3.7)となった。
クレアチニンとACRによるeGFRにシスタチンCを加え、被験者を再分類した場合、死亡は13.3%、末期腎不全は6.4%改善された(どちらもp<0.001)。


これらの結果から研究グループは、クレアチニンとACRの測定にシスタチンCを加えた検査方法で、CKD患者の全死と末期腎不全の予測精度が向上すると結論した。
 

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