ロシュ 抗がん剤で価格問題を認める 価格変更の準備へ
公開日時 2011/07/13 04:00
ロシュファーマシューティカルズのPascal Soriot最高業務責任者(COO)は、ASCO(米国臨床腫瘍学会)年次総会で、薬価が高いとの批判が高まっている抗がん剤の価格問題に言及、「コストが問題になっていることは明らか」としたうえで、「今後2~3年で価格戦略を考えたい」と価格問題を見直す考えを明らかにした。
抗がん剤の薬価は社会問題化しており、ロシュ子会社ジェネンテクは、アバスチン(ベバシズマブ)の卵巣がん適応については、ラベル通りの使用に限定して、年58000ドル(1万mg分)を上限に薬剤費の支援を行っている。1万mgを超過した分については無料で供給している。
最近発売されたデンドレオンの前立腺がん治療薬Provengeは年90000ドル、ブリストルマイヤーズスクイブの黒色腫治療薬Yervoyは120000ドルと抗がん剤で一番高い価格となった。これは医療費の問題として浮かび上がってきている。薬剤給付管理会社(PBM)Medcoは、最近の「2011 Drug Trend Report」と題する報告書で抗がん剤とそのコンパニオン診断薬の高価格に焦点を当てた。保険支払者の一部では、高コストのがん治療について標準治療を構築するために「クリニカルパス」を検討している。
Soriot COOは、薬剤が結果に応じた価格でかつ適応症に見合った価格でなければならないという考えを示し、欧州各国のオピニオンリーダー、政策決定者らと価格問題について従来と異なるアプローチを設定するような協議を行っていると話した。ロシュは診断薬部門を持ち、コンパニオン診断薬を活用、個別化医療を進展させやすいポジションにあるが、価格の問題もそれに伴う。市場シェアの拡大、製品化までの時間短縮、低い開発コスト、高い成功率と共に、層別化した患者への価格決定力を持つことによるベネフィットが上乗せされることになる。
個別化医療とR&D生産性向上のためのそのメリットは、ロシュとジェネンテクが投資家に対し、がん領域に集中することを説明するときのテーマだった。
それを象徴するかのように、ロシュは、世界抗がん剤市場では31%を占め、2番手のノバルティスの11%に大きく差をつけている。同社の投資およびプロジェクトの半分は抗がん剤だ。特筆されるのは、後期ステージでの成功率の高さで、業界平均(KMRグループ調べ)よりもかなり高い。(下表)
<ロシュ/ジェネンテクの開発における高い成功率>
2008年 2009年 2010年 2011年(1-5月)
成功 失敗 成功 失敗 成功 失敗 成功 失敗
フェーズIII 21 2 20 1 10 6 6 0
フェーズIII
成功率 91% 95% 62% 100%
フェーズIII
業界成功率 63% 64%(2009-2011)
ロシュのこの成功率の高さが将来の価格にどう反映するか注目される。
(The Pink Sheet 6月27日号より) FDAと米国製薬企業の情報満載 “The Pink Sheet”はこちらから