転職活動中に突然、連絡がとれなくなってしまったOさん。そのワケとは？

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「前回の選考は本当に惜しいところだったんですよ。でも、徐々に面接の評価はあがってきていますから」
「それは自分でも感じています。少しずつですけど、思っていることを上手にまとめて話せるようになってきました」
「その調子で、来週の面接も頑張ってください」
「はい！」

現職企業の業績悪化で転職活動中のOさん（24歳）は、とても素直な青年で我々のアドバイスを忠実に実行してくれていた。
はじめの頃は、企業のするどい質問に対応しきれず、あたふたしてばかりだったが、いまでは圧迫面接にも怯むことなく対処できる度胸も身についてきた。我々の激励の言葉は決して大袈裟ではなく、Oさんは内定までもう少しというところまできていたのだ。

ところが、この電話のあと、週末を挟んだ翌週から、彼との連絡がまったくとれなくなってしまった。

転職希望者の方が急に音信不通になることは、実はごく稀であるが、おこることがある。自主応募の企業から内定が出た、あるいは、私的な事情ができて急に転職を諦めることになったとなると、どうも気まずく思う人が多いらしく、何も言わずに去っていってしまうのだ。
我々としては「転職を止めたのかどうかわからない」というのが一番困る状況で、企業側への説明責任もあり、ひたすらメールを入れ、電話をかけ続けることになる。

後ろめたさを感じながら、何十件も連絡をもらうより、メールで簡潔に
「○○○のため、転職活動は休止することにしました」
と、送る方がよほど気が楽だと思うのだが、そうしない人が多いのは不思議なことである。

Oさんも自主応募で面接を受けていることを知っていたので、それまでリレーションが良かっただけに、連絡しづらいのかなあなどと思いつつ、我々は繰り返しメールを送っていた。
十日ほどたった頃、恐縮しきった声で彼からの電話があった。

「あ、あの、また転職の、その、色々なことを、お願いしたいんですけど…」
「Oさん！心配していたんですよ。転職活動のことは大丈夫です。面接を待っていてくれている企業もありますから。それにしても、この十日間、一体どうしていたんですか？」
「実は、自主応募で面接を受けた会社の方で、内々定だと言われまして…」
「その会社に行くつもりだったんですか？」
「いや、悩んでいたんですけど、その会社の重役の方から『うちに来るつもりなら、転職エージェントと連絡をとるのは止めろ』という指示があって…」
「連絡を取るな？」
「はい。内定をもらったなんていうと、断るように仕向けてくるからって…」
「そんなことはしませんよ」
衝撃の告白に、思わず我々の声も大きくなった。
「僕もそう思ったんですけど、重役の方は『いや、それが転職エージェントの仕事だから、彼らには相談しないで一人で考えなさい』って」
「そうでしたか…。で、結局その会社は断ったんですね？」
「はあ、なんだかかえって、うさん臭いなと思ったんです。エージェントさんは、色んな会社を受けて、必要なら他の紹介会社にも登録して、色んな人に意見を聞きなさいって言ってくださったじゃないですか。その方が健全な気がしたんです」
それはそうだろう。転職活動は情報戦という面もあるし、相談できる相手がいるに越したことはない。まして、Oさんのような第二新卒であればなおさらだ。

それにしても、人材を囲い込みたいからとはいえ、そこまで強引なことをする企業があるとは…。ひょっとすると、他にも同じような理由で、連絡がとれなくなった人もいるのかもしれない。

この場を借りて、ひとつ申し上げておこう。転職活動中に突然連絡を絶つのは、さけてもらいたい。我々に対してではなく、連絡を待っている企業への最低限の礼儀として、辞退する時には一言あって然るべきなはずだ。転職エージェントからの、ささやなかなお願いである。