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【esc特別版】IST-3 rt-PA療法6時間以内に施行で高齢者でも障害軽度で転帰良好に

公開日時 2012/05/25 06:55

急性期脳梗塞患者への、6時間以内のrt-PA(アルテプラーゼ)を用いた抗血栓薬の静注療法の施行は、80歳以上の高齢者などのハイリスク患者も含めて、無治療群に比べ、転帰が良好であることが分かった。主要評価項目である自立した生存者の割合は、2群間で有意差がみられなかったものの、6カ月以内の機能転帰が良好な割合が、rt-PA療法施行群で有意に高い結果となった。抗血栓療法の有用性を検討した最大規模の試験である「IST-3(the third international stroke trial)」の結果から分かった。5月22日からポルトガル・リスボンで開催されている第21回欧州脳卒中学会で23日に開かれた「Large Clinical Trials (RCTs)」セッションで、IST-3 Collaborative Groupを代表して、P.Sandercock氏が同試験の結果を発表した。(5月23日リスボン発・望月英梨)


虚血性脳卒中患者へのrt-PAを用いた抗血栓療法は、ECASSⅢの結果を踏まえ、time window(治療可能時間) が4.5時間まで拡大した。一方で、さらにtime windowを6時間に拡大した際の有効性は明確になっていなかった。また、4.5時間以内の抗血栓療法は、若年者で治療効果が高いことが報告されているものの、リスクの高さから、80歳以上の高齢者は臨床試験に組みこまれておらず、有用性は明らかになっていなかった。

IST-3は、英国、ポーランドなど欧州を中心に12カ国、156施設で実施された国際大規模ランダム化オープン比較試験。対象は、虚血性脳卒中発症から6時間以内の患者で、2000年5月から2011年7月までに登録された3035例。明らかにrt-PA投与の適応となる患者と、適応とならない患者は除外し、治療効果が期待できるものの、適応基準を明確には満たさない患者を対象とした。

①経静脈的血栓溶解療法(i.v.-tPA)施行群(以下、rt-PA療法群)1515例②コントロール群1520例――の2群にランダムに割り付け、治療効果を比較した。なお、ランダム化は、電話またはインターネットを用いて行った。主要評価項目は、自立した(Oxford Handicap Score(OHS)で0~2点)生存者の割合。

患者背景は、2群間に有意差はみられず、発症から3時間以内の患者も28%(849例)割り付けられた。80歳以上の高齢者は53%(1617例)、前方循環梗塞(TACI)は43%(1305例)、心房細動は30%(914例)含まれた。脳卒中神経学的重症度の評価スコアであるNIHSS(0~42点、高得点ほど重症)で16点以上の患者は32%(970例)だった。


◎rt-PA療法群 早期は死亡率高くも6カ月後には同等に


その結果、主要評価項目の自立した生存者の割合は、rt-PA療法群で37%(554例)、コントロール群では35%(534例)で(オッズ比:1.13、95%CI[0.95-1.35]、p=0.181)、治療により1000人につき14(絶対値)増加させたものの、2群間に有意差はみられなかった(95%CI:20~48)。

副次評価項目の6カ月後のOHSスコアの推移をみると、転帰が良好に推移した症例は、rt-PA療法群で27%有意に多く(オッズ比:1.27、95%CI:1.10~1.47、p=0.001)、rt-PA療法群でより軽度障害の生存者が多い結果となった。rt-PA療法の施行により、転帰良好な結果が得られる人を1000人につき29増加させた。


投与開始から7日間以内の致死的+非致死的頭蓋内出血の頻度は、rt-PA療法群で7%(104例)、コントロール群では1%(16例)で、rt-PA療法群で有意に高い結果となった(p<0.0001)。


死亡率は、rt-PA療法群では、27%(408例)、コントロール群で27%(407例)で両群間に差はみられなかった。ただし、治療開始から7日以内では、rt-PA療法群で11%(163例)、コントロール群で7%(107例)で、rt-PA療法群で有意に高かったものの(p=0.001)、7日~6カ月間では、rt-PA療法群で16%(244例)、コントロール群では20%(300例)で、rt-PA療法群で有意に低い結果となった(p=0.009)。


サブグループ解析の結果から、80歳未満の患者は、80歳以上の高齢者に比べ、有意に良好な結果となったが(p=0.029)、80歳以上の高齢者でもrt-PA療法の施行により、自立した生存者が、1000人につき30増加しており、有効性が示された。また、発症3時間以内の患者では、rt-PA療法施行群では、両群ともに良好な結果となったが、rt-PA療法を行うことで、自立した生存者が1000人につき80増加するとことも分かった。そのほか、重症度が高いほど、rt-PA療法群で有意に良好なことも示された(p=0.003)。

Sandercock氏は、投与開始早期の段階で死亡率が上昇したことを指摘した上で、「6時間以内の抗血栓療法は、機能転帰が良好だった」と総括した。また、「高齢者でもベネフィットの減少はみられなかった」と指摘し、高齢者での治療効果が得られた意義を強調した。

なお、同試験の結果は同日付の「The LANCET」に掲載された。
 

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