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【ASCO特別版】Luminal型早期乳がん Ki-67発現レベルと組織学的グレード分類組みあわせで再発予測可能に

公開日時 2012/06/06 06:53

Luminal型早期乳がんでは、Ki-67発現レベルと組織学的グレード分類には弱いながらも相関関係があり、この2つを組み合わせることで、再発予測に利用できることが明らかになった。6月1日から米国・シカゴで開催されている米国臨床腫瘍学会(ASCO2012)で、国立がん研究センター東病院乳腺科・血液化学療法科の内藤陽一氏が6月2日、ASCO2012のGeneral Poster Session「Breast Cancer - HER2/ER」で報告した。


細胞核に多く存在する蛋白であるKi-67は、細胞増殖の指標であり、早期乳がんの予後予測因子として確立されている。近年のメタ解析ではKi-67の高発現は予後不良であることが確認されている。一方、組織学的グレード分類も乳がんの予後因子として確立されており、Scarff‐Bloom‐Richardson組織学的グレーディング方式のノッティンガム変法による組織学的グレード分類は、エストロゲン受容体陽性、HER2陰性乳がんの無再発生存期間に対する独立した予測因子であることが示されている。


2011年のSt. Gallen国際コンセンサス会議では、Ki-67を細胞増殖のマーカーとして採用し、これがない場合には代替として組織学的グレード分類を利用できるとしたが、Ki-67と組織学的グレード分類に同等性に関する大規模な検証は多くはない。そこで内藤氏らは、組織学的グレード分類がKi-67の代替になりうるか、また両者の組み合わせがより効果的な予後予測因子となりうるかの検討を行った。


対象は、2000年1月~08年12月までに手術を受けた早期乳がん症例のうち、エストロゲン受容体陽性(ICH法で陽性細胞≧1%)、HER2陰性(ICH法で0、1+、2+ /FISH法<2)でKi-67レベルと組織学的グレード分のデータが取得できた606例。Ki-67はMIB-1抗体を用いて測定し、発現レベルに応じて低レベル群0~9%、中レベル群10~19%、高レベル群 20%以上に分類。組織学的グレード分類は、ノッティンガム組織学的グレード分類を用い、グレード1~3に分類した。全例とも手術標本も利用し、Ki-67、組織学的グレード分類ともに2人以上の病理医が評価。病理医同士の評価の不一致の際は協議の上で最終決定をした。


無病生存期間(DFS)は手術日から再発あるいは死亡のうち早い時点までと定義し、Ki-67値や組織学的グレード分類との関係をレトロスペクティブに検討した。


対象606例の年齢(中央値)は58歳(22~89)。腫瘍径はT1(最大径2cm以下)369例(60.9%)、T2(最大径2~5cm)237例(39.1%)。リンパ節転移なしが564例(93.1%)、ありが42例(6.9%)。閉経前は225例(37.1%)、閉経後は381例(62.9%)。手術は乳房切除術が87例(14.4%)、腫瘤摘出術が519例(85.6%)で、術前・術後の補助化学療法施行例は179例(29.5%)だった。腋窩リンパ節郭清症例は196例(32.3%)、センチネルリンパ節郭清症例は410例(67.7%)。プロゲステロン受容体陽性は509例(84.0%)。


Ki-67の低レベル群でのグレード1は96例(15.8%)、グレード2が259例(42.7%)、グレード3が30例(5.0%)。中レベル群ではグレード1が12例(2.0%)、グレード2が80例(13.2%)、グレード3が19例(3.1%)、高レベル群ではグレード1が4例(0.7%)、グレード2が51例(8.4%)、グレード3が55例(9.1%)。Spearman検定の相関係数0.385、p<0.001で両者の間に弱い相関が有意に認められた。この点について内藤氏は「両指標は同じようなものを評価しており、相関はあるだろうと想定はしていたが、思ったよりも相関は弱かった」とコメントした。


◎内藤氏「今後は治療評価に生かせる可能性も」


DFSについては、Ki-67の高レベル群と低レベル群の間(ハザード比:2.518、p=0.002 )と組織学的グレード分類のグレード3とグレード1の間(ハザード比2.541、 p=0.048)で、有意差がみられ、両者のハザードはほぼ同等であると考えられた。この結果から内藤氏は「組織学的グレード分類はKi-67レベルの代用としても十分利用可能と考えて良いだろう」との見解を示した。


さらにKi-67高レベルで組織学的グレード分類のグレード3の群と、Ki-67低レベルで組織学的グレード分類のグレード1の群を比較すると、予後の違いがより明白になり、予後予測因子としてより効果的な可能性が示唆された(ハザード比3.137、p=0.021)。


内藤氏は「今回は再発を軸に予後の評価だけを行ったが、Ki-67と組織学的グレード分類の組み合わせで、今後は治療法選択にも生かせる可能性がある」との展望を表明した。
 


 

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