米アボットラボラトリーズ社から分社、誕生、2013年１月２日にニューヨーク証券取引所およびパリ証券取引所に上場、業務を開始したアッヴィ社のRichard Gonzalez　CEOは、翌３日、Goldman　Sachs &　Co主催のヘルスケア会議で同社の当面の戦略および展望などについて説明した。

アッヴィ社は、年商180億ドルを見込み、170国でビジネスを展開、全世界で21000人の従業員を擁する。現在、R&Dパイプラインには、中期および後期段階に20以上の医薬品候補物質を持つ。Gonzalez　CEOは、抗炎症剤Humira（アダリムマブ）が競争激化や価格圧力にも拘わらず今後数年、成長を持続させる同社の能力について話した。Humiraの位置づけは、同剤が同社の売上の約50%を占めているだけに投資家の最大関心事だ。しかし、同社のパイプラインでは、3剤の配合剤であるC型肝炎治療薬が2014年申請予定で軌道に乗っているものの、まだHumiraの売上を増やす必要がある状況にある。

同CEOは、新会社をビッグファーマの持つ財政的強みと安定性によって支えられるバイオテクとイノベーションに集中する企業としてアピールした。また、同CEOは、アッヴィのパイプラインは正しく評価されて来なかったとし、また、「非常に急速に進展してきた」と話した。しかし、同社のC型肝炎治療薬開発への努力を語りながらも、多数の投資家が期待していた、慢性腎臓病治療薬でファースト・イン・クラスといわれた抗酸化炎症調整剤（AIM）のbardoxoloneの臨床試験での脱落については明らかにしなかった。

投資家は、全売上の半分をHumiraに依存するという状況に疑問を持ち、ファイザーの新製品Xelijanz（トファシチニブ）やバイオシミラーとの競合を懸念しているが、Gonzalez　CEOは、近年のアボットの医療用医薬品の好業績を強調し、懸念を払しょくする。同社医療用医薬品部門は過去5－6年、2桁成長を記録していると話す。しかし、同CEOは、TriCor（フェノフィブラート）、TriLipix（フェノフィブリン酸）、Niaspan(ナイアシン)など高脂血症薬領域では新たなジェネリック医薬品との競争が厳しくなるとの認識を示し、それによる売上減を補填する必要性を強調した。
その対策の1つとして、C型肝炎配合剤（プロテアーゼ阻害剤ABT-450 、NS5A阻害剤ABT-267およびポリメラーゼ阻害剤ABT-333）、子宮内膜症治療薬elagolix、再発寛解型多発性硬化症治療薬daclizumabなどに期待感を示した。

アッヴィ社は、Humiraについては、2016年に米国で、2018年には欧州で特許が切れる予定だが、効能追加や新興国での成長などにより今後も売り上げを伸長させることに自信を持っている。同剤は近年も毎年10億ドルの伸びを示しており、2012年は(増加分が)10億ドルを超えた模様だ。2012年第3四半期で55億9000万ドル、対前年比14.4%増になった。

Gonzalez　CEOは、競合品のファイザーのXelijanzについては、同剤が錠剤であるのに比べ、Humiraは注射剤で、関節リウマチ患者の10%－20%は注射針恐怖症患者なので、それら患者には、Xelijanzが優位性を持つが、アッヴィ社としてはXilijanzでは病勢進行についてのデータが欠如しているとの問題があるので、患者・医師らのHumiraへの馴染みや信頼がヒュミラの顧客として彼らを持続させると見ている。

また、同CEOは、Humiraのバイオシミラーの参入については、「大きなハードルがあるが、仮にバイオシミラーが参入しても、競争では他の製品と同様に競争のダイナミクスが起き、Humiraにも価格の圧力がかかるが、一方で、競合社には多額の投資を迫ることになる」と指摘、Humiraのバイオシミラーの参入は容易ではないとした。

The Pink　Sheet　Daily　1月3日号