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【ACC事後リポート】NEXT BES 1年後のTLR、late-lossでEESに対し非劣性示す

公開日時 2013/04/08 23:00

経皮的冠動脈インターベンション(PCI)施行後の標的病変再血行再建(TLR)率、セグメント内のlate-lossなど、1年間の治療成績において、第二世代の薬剤溶出性ステント(DES)であるバイオリムス溶出性ステント(BES、製品名:Nobori)のエベロリムス溶出性ステント(EES、製品名:Xience、Promus)に対する非劣性が示された。日本人を対象に実施された、多施設前向き無作為化オープンラベル非劣性比較試験「NEXT (NOBORI Biolimus-Eluting versus XIENCE/PROMUS Everolimus-eluting Stent Trial)」の結果から示された。3月10日に開かれたLate-breaking Clinical Trialsセッションで、京都大学医学部付属病院循環器内科の夏秋政浩氏が報告した。

BESの有効性をめぐっては、COMPAREⅡにおいて、主要評価項目である12カ月後の心臓死+非致死的心筋梗塞+臨床症状による標的血管再血行再建術(TVR)の複合エンドポイントについて、EESへの非劣性が示されている。一方で、SORT-OUT  Ⅴにおいては、主要評価項目である心臓死+心筋梗塞+definiteステント血栓症+TVRについて、BESがシロリムス溶出性ステント(SES)への非劣性を示せなかったことも報告されており、BESの有効性については一貫した治療成績が示されていないのが現状だ。
試験では、生体吸収性ポリマーをコーティングしたBESが生体適合性ポリマーをコーティングしたEESに比べ、有効性、安全性両面において、非劣性を示すか検討する目的で実施された。
対象は、DES留置のPCI施行が予定された患者で、除外基準は特に設けなかった。主要有効性評価項目は1年後のTLR、主要安全性評価項目は3年後の死亡+心筋梗塞、主要血管造影(アンギオグラフィー)評価項目は、8~12カ月後のセグメント内の内膜増殖によるlate-lossとした。
解析対象は3235例(BES群:1617例、EES群:1618例)で、このうち、1年後まで追跡可能だった症例は3209例だった。また、サブグループ解析である、アンギオグラフィーについての解析は528例(BES群:263例、EES群:265例)が登録され、466例において追跡造影が施行された。
ベースラインの患者背景は、平均年齢がBES群69.1±9.8歳、EES群69.3±9.8歳、男性は両群ともに77%、糖尿病の合併率は46%だった。PCIの既往は、BES群50%、EES群51%、CABGの既往は、BES群5.3%、EES群4.8%だった。手技前の病変長は、BES群19.5±12.8mm、EES群19.3±13.1mm、最小内腔径(MLD)はBES群0.77±0.44mm、EES群0.75±0.42mm、狭窄率はBES群71.0±14.6%、EES群71.4±14.6%だった。手技後は、ステント内のMLDはBES群2.51±0.48mm、EES群2.47±0.46mmで、差は小さいものの有意にBES群で大きかった(p=0.006)。セグメント内のMLDはBES群2.08±0.56mm、EES群2.07±0.53だった(p=0.7)。狭窄度は、ステント内がBES群9.7±7.9%、EES群10.0±7.9 % だった(p=0.26) のに対し、セグメント内はBES群22.2±12.3%、EES群21.1±11.2 % で、差は小さいもののBES群で有意に高かった(p=0.005)。
手技の成功率は、割付ステントの留置成功(Acute devise success)がBES群99.6%(1962/1970例)、EES群99.6%(1928/1936例)だった(p=0.97)。一方、入院中の主要な合併症がない手技の成功(Patient success)は、BES群96.8%(1565例)、EES群96.7%(1565例)であり、両群ともに高率で差を認めなかった。

◎stent fractureの発生率はBES群で高率に

主要評価項目のTLRはBES群4.2%、EES群4.2%だった(p=0.93、図)。2群間の差は0.07%、片側上限95% CI:1.5%で、非劣性マージン3.4%を満たし、非劣性を示した(非劣性のp<0.0001)。
TVRイベントの83%(170例/204例)、TLRイベントの91%(121例/133例)がコアラボにて評価された。clinically-driven TLR、TVR、全死亡、心筋梗塞、definiteステント血栓症いずれも、両群間に差は認められなかった(p=0.998、0.67、0.9、0.77、0.18)。
セグメント内のlate-lossは、BES群0.03±0.39mm、EES 群0.06±0.45mmだった(p=0.52)。2群間の差は-0.03mm、片側上限95%CI:0.05mmで、非劣性マージン0.195mmを満たし、非劣性を示した(非劣性のp<0.0001)。ステント内のlate-lossは、BES群0.17±0.35mm、EES群0.14±0.36mmだった(p=0.35)。両群間に差が認められたのが、stent fractureの発生率でBES群では3.1%(9例)に発生したが、EES群ではみられなかった(p=0.004)。ステント周囲の造影剤染み出し像、peri-stent contrast staining(PSS)は、BES群2.7%(8例)、EES群1.4%(4例)だった(p=0.24)。
夏秋氏は、all-comer  trialであるにも関わらず、安定狭心症が多く含まれていたこと、冠動脈病変の複雑性が比較的低く、1年後のTLR率が低かったことなどを本試験のlimitationとして挙げた。その上で、「大規模ランダム化比較試験により、BESが1年後のTLR率、8~12カ月後のアンギオグラフィーによるセグメント内のlate-lossについて、EESへの非劣性を示した」と述べた。

 

待たれる3年以上の長期データ
ステント血栓症の発生率など安全性に期待

現在の日本の実臨床では、EES(Xience)が約半数、BES(Nobori)は約15%使用されています。EESは、エビデンスも十分あり、世界的にも用いられています。
今回発表したデータは、まだ1年間という短期間の治療成績ではありますが、BES、EESともにTLR率、ステント血栓症の発生率が低く、ほぼ同等の結果でした。今後、この結果を受け、BESを使う動きが出てくる可能性も考えられます。
今回の試験では、あくまで傾向にすぎませんが、1年のTLRにおいて糖尿病でインスリンを用いている患者(ハザード比(HR):0.61、95%CI:0.27-1.33、p=0.22)、血液透析を行っている患者(HR:0.6、95%CI:0.28-1.28、p=0.19)で、BES群において良好な傾向がみられました。今後、イベント数が増加する中で、BES群で良好な結果を示す患者像が明らかになることも期待されます。
一方で、BES群で唯一、有意に発生率が高かった、stent fructureについては、今後の注意深い経過観察が必要と考えられます。
生体吸収性ステント(BVS)も注目されていますが、分岐部や石灰化の強い病変などでは、しっかりしたエビデンスが得られていないところではないかと思います。日本も国際共同臨床試験に参加していますが、登録症例は、単純な病変に限られています。そのため、今後も金属性のステントが必要であると考えています。
第二世代のDESの中で、どのようなポリマーを使うべきか。生体適合性が高ければ、生体吸収性ポリマーでなくてもよいのか。この点が非常に重要です。この試験は、現在も追跡を継続しており、死亡、心筋梗塞の複合エンドポイントを主要安全性評価項目とする3年追跡の結果も報告する予定です。BESとSESの効果を比較検討した臨床試験LEADERSでは、留置1年以降のステント血栓症の発生率は、BESで有意に低いことも示されており、BESの長期成績が期待されます。
NEXTの長期データは、今後の薬剤溶出性ステントの開発戦略に重要な影響を与えると考えられます。その結果を受けて実臨床が変わる可能性もあると考えられます。
 

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