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【ASCO特別版】LUME-Lung 1試験 進行/再発非小細胞肺がん患者の二次治療におけるドセタキセルとの併用 Nintedanibが標的治療薬としてはじめて全生存期間を改善

公開日時 2013/06/12 07:30

進行/再発非小細胞肺がん(NSCLC)に対する二次治療として、標準治療薬であるドセタキセルに、Nintedanibを併用することで、無増悪生存期間(PFS)が有意に延長し、腺癌に限ると全生存期間(OS)も有意に延長することが、多施設無作為化二重盲検臨床第3相試験LUME-Lung 1で示された。標的治療薬を二次治療と併用することでOS延長が示されたのは初めて。5月31日から6月4日まで米国シカゴで開催された米国臨床腫瘍学会(ASCO)年次集会のClinical Science Symposiumで、3日、ドイツ・Hospital Grosshansdorfの Martin Reck氏が発表した。


NSCLCは、いまだにアンメットニーズを有する疾患である。進行NSCLCと診断された患者は、全身療法の候補である。二次治療の標準療法はドセタキセルだが、その効果は限られている。抗腫瘍療法において、血管新生は非常に魅力的なターゲットだが、これまで、進行NSCLCの二次化学療法に標的治療薬を併用することによるOS延長が示されたことはない。


Nintedanibは、腫瘍血管新生の重要なメディエーターであるVEGF受容体1-3、FGF受容体1-3、PDGF受容体α/βを標的とする経口のチロシンキナーゼ阻害剤である。代謝酵素CYP450を介した薬剤相互作用は報告されておらず、ドセタキセル、ペメトレキセド、パクリタキセル/カルボプラチン、ゲムシタビン/シスプラチンなどの殺細胞性薬剤あるいはAfatinibとの併用での安全性プロファイルは、いずれも対処可能なものであることが知られている。単剤では、再発NSCLCに対する第2相試験で有効性が示されている.


LUME-Lung 1では、2008年12月23日から2011年2月9日まで、欧州、アジア、南アフリカから、一次化学療法既治療のStage IIIB/IVまたは再発NSCLC患者を登録。登録基準適格の1314例を、Nintedanib群(Nintedanib 200 mgを第2-21日に1日2回経口投与+ドセタキセル75mg/m2を第1日に静注、21日毎、655例)またはプラセボ群(プラセボ第2-21日に1日2回経口投与+ドセタキセル75mg/m2を第1日に静注、21日毎、659例)に1対1で無作為割付し、増悪(PD)または容認しがたい毒性まで治療を継続した。


試験開始時の患者背景は両群でバランスがとれており(以下Nintedanib群対プラセボ群)、男性72.7%対72.7%、年齢65歳未満69.5%対67.5%、喫煙者/禁煙者74.8%対75.6%、ECOG PS1 71.3%対71.3%、非アジア人82.0%%対81.2%だった。腫瘍組織型は、腺癌/扁平上皮癌/その他49.2/42.1/8.7%対51.0/42.2/6.7%で、転移性疾患が89.8%対91.8%、プラチナ既治療95.9%対96.5%、ベバシズマブ既治療4.1%対3.6%。


◎腺がんではOSも改善


主要エンドポイントの中央解析PFSは、Nintedanib群で、プラセボ群と比較して有意に延長していた(3.4カ月対2.7カ月、ハザード比[HR]0.79、95%CI 0.68-0.92、p=0.0019)。組織型別では、腺がんで4.0カ月対2.8カ月(HR 0.77、95%CI 0.62-0.96、p=0.0193)、扁平上皮がんで2.9カ月対2.6カ月(HR0.77、95%CI 0.62-0.96、p=0.0200)。また年齢、性別、人種、PSなど、事前に規定されたサブグループにかかわらず、同様の生存PFSベネフィットが認められた。


Nintedanib群の全生存期間(OS、中央値)は10.1カ月。プラセボ群の9.1カ月と比較してやや長かったが、有意差はなかった(HR0.94、95%CI 0.83-1.05、p=0.2720)。しかし、組織型を腺がんに限ると、12.6カ月対10.3カ月(HR 0.83、0.70-0.99)で、Nintedanib群で有意なOS延長が認められた。1年生存率52.7%対44.7%、2年生存率25.7%対19.1%と、この効果は試験期間を通して一貫したものだった。腺がん患者におけるOSベネフィットは、事前に規定されたサブグループにかかわらず認められた。少数例の集団だが、ベバシズマブ既治療患者では有効性が高い傾向が認められた(ベバシズマブ既治療なし対ありで、HRは 0.86[95%CI 0.71-1.01]/0.61[95%CI 0.71-1.01])。また一次化学療法に対してPDだった患者(PD対CR/PR/SDでHRは0.62[95%CI 0.41-0.94]対0.90[95%CI 0.71-1.01])や一次治療からの時間が短い患者(9カ月未満対9カ月以上でHR0.75[95%CI 0.60-0.92]対0.89[95%CI 0.66-1.19])でも、有効性が高い傾向があった。


疾患コントロール率は、腺がん(60.2%対44%、オッズ比[OR]1.93、p<0.0001)でも扁平上皮がん(49.3%対35.5%、オッズ比[OR]1.78、p<0.0009)でもNintedanib群で有意に高かった。


試験後に何らかの全身療法を受けた患者(Nintedanib群対プラセボ群)は、腺がんで55.6%対56.0%、扁平上皮がんで48.6%対47.0%。腺がんでの内訳は、化学療法38.2%対40.5%、EGFR TKI 30.4%対31.3%だった。


扁平上皮がんについてみると、OS(中央値)は、Nintedanib群で8.6カ月に対してプラセボ群8.7カ月(HR1.01、95%CI 0.85-1.21、p=0.8907)で有意差はなかった。


◎頻度やや上がるも対処可能な安全性プロフィール


Nintedanib群では、プラセボ群と比較して、全グレード(76.4%対68.1%)でも、グレード3以上(50.8%対42.0%)でも、薬剤関連有害事象の頻度が高かったが、治療中止を余儀なくされる有害事象(22.7%対21.7%)や、重大な有害事象(34.4%対31.5%)は増えなかった。


頻度に差があった有害事象は下痢などの消化器症状と、一時的な肝酵素(ALT)の上昇が中心で、いずれも可逆性だった。


VEGF/VEGFR阻害剤に特徴的な有害事象である出血(14.1%対11.6%)、の頻度が高かったが、主に鼻血の頻度の違いによるもので、重大な出血(2.3%対1.8%)に差はなかった。また肺塞栓症の頻度(5.1%対4.6%)、特に重大な肺塞栓症の頻度(2.1%対3.1%)に差はなかった。高血圧についてもやや頻度が高かったが(3.5%対0.9%)、重大な高血圧(0.6%対0.2%)に差はなかった。


◎効果を得られる患者集団の分子的、臨床的特徴の同定が必要


Nintedanibは、対処可能な安全性プロファイルのもと、主要エンドポイントであるPFSを有意に改善し、腺癌患者ではOSの有意な改善はも認められた。Reck氏は、「NSCLCにおけるNintedanibのベネフィットを受けうる患者の分子的、臨床的因子の特定にが必要だ」とした。そして、予備的な解析では、腫瘍サイズの大きな患者でベネフィットが認められる可能性が示されていることを明かし「腫瘍の遺伝的な背景あるいは血管新生のプロファイルの違いによる可能性があり、さらに検討していかねばならない」と展望した。


◎分子標的薬だが、対象の分子的特徴が明らかにされていない試験


ディスカッサントのBenjain Besse氏(仏Institut Gustave Roussy)は、この試験を解釈する上で議論となるいくつかの問題を指摘した。


同試験は2008年12月に開始し、2011年2月に登録終了したが、713イベント発生後に解析が計画されていたPFSのデータカットオフは2010年11月(PFSイベント714発生)で、今回報告されたPFSの成績はITT解析によるものではなく、86%の患者解析に基づくおのだ。PFSはOSのデータカットオフ2013年2月までの間に、一度も更新されておらず、全集団での解析は必須だとした。


OSについては、腺がん患者のみで有意な改善が認められたが、ベバシズマブ既治療患者が10%未満しか含まれておらず、ベバシズマブ既治療患者で同様の効果が得られるかどうかは明らかではない。また組織型が腺がんでプラチナ不応(4サイクルのプラチナ製剤を基本とする化学療法中にPDとなった)の患者で、OSのより大きな改善が認められており、これについても前向きに検証すべきとした。


有害事象については、VEGFR TKIで懸念される毒性の増加がなかったことに驚きを隠さず、PS2の患者が5%未満という選択された集団だったためではないかと考察した。


最後にBasse氏は、「(Nintedanibは)分子標的治療薬にもかかわらず、今回治療された腫瘍についての分子的な特徴が明らかにされておらず、バイオマーカーの試験も計画されていない」ことに、同試験の問題点が集約されることを示唆して降壇した。


 

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