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糖尿病性黄斑浮腫は市場機会の一つになり得るか?

公開日時 2013/07/23 05:00

浸潤型加齢黄斑変性症(wet-AMD)は、新規治療薬が大規模かつ迅速に成功を見たため医薬品業界では注目を浴びている。一方、糖尿病の合併症である糖尿病性黄斑浮腫(DME)も網膜疾患にフォーカスしている製薬企業にとっては大きなビジネスチャンスがある。DMEは先進国では若年者や中年層では失明原因のトップである。従って、DMEは労働人口に影響し、経済的影響は高齢者が罹患するAMDよりも大きい。


硝子体内注射剤坑VEGF(血管内皮細胞増殖因子)抗体であるジェネンテク/ノバルティスのLucentis(ラニビズマブ)やリジェネロンのEylea(アフリベルセプト)はwet-AMDの治療を変えた。またこれら薬剤はDME治療も変えると思われる。


現在、wet-AMDとDMEの治療は類似しており、光凝固法と呼ばれるレーザー光線眼手術、硝子体内コルチコステロイド注射あるいはVEGF阻害剤による治療だ。しかし、レーザー治療は効果が出るのに数か月かかること、VEGF阻害剤は定期的に専門医に注射してもらわないといけないことなどの欠点がある。


新規DME治療薬を開発しているActiveSite PharmaceuticalsのSukanto Sinha CEOは、「VEGF阻害剤の硝子体内注射は侵襲的性質と反復の必要性のために、患者や専門医にとって大きな負担となっている。患者によっては、臨床的に意味のあるアウトカムを得られていない」と指摘している。そのうえで、「そのために、この疾患については、アンメットメディカルニーズは残ったまま」と話している。


市場アナリストらもこの考えに同調している。アナリストらは、AMD治療薬Eyleaが2012年に初のフルイヤーの決算を迎え、急速な成長で8億3800万ドルを売り上げたことに注目している。しかし、AMD、DMEともに網膜の疾患だが、病因は異なる。DMEは、糖尿病により慢性的に血糖値が上がったために黄斑における血管からの血液成分などの漏れによって網膜が膨れる。wet-AMDは、網膜内あるいは周辺の出血に拍車をかける網膜内の新しい血管の形成によって引き起こされる。


wet-AMD治療薬を開発している企業は、DMEへの適応拡大を狙って開発している。それ以外の企業は、DMEにベストな治療薬として開発している。DMEは大きなビジネスチャンスを持つが、どちらのアプローチが結果的に勝利するかはまだ不明確だ。


UBSのアナリストらは、2010年代半ばごろまで、EyleaのようなVEGF阻害剤は、AMD治療薬として成長すると同時にDME適応を取得、大きく伸びるとみている。DME市場の将来の成長は、糖尿病の予防・治療のブレークスルーによって影響される。


「HbA1Cを確実に7に近づけることによる予防にまさるものはない」というのは、ThromboGenicsのPatrick De Haes CEOだ。同社はElevenTherapeuticsからDME治療薬の開発技術を導入した。

また、眼科用薬の開発は金融界の関心も呼んでいる。Valeant Pharmaceuticals Internationalは同社が株式をもっているBausch & Lombを5月27日に87億ドルで買収した。Ophthotecは、AMD治療薬の可能性のある坑血小板由来成長因子(PDGF)FovistaのフェーズIII試験に投資するために1億7500万ドルを集めた。フランスのGenSight Biologicsは、眼科領域の希少疾病のための遺伝子治療開発に4140万ドルを調達した。これらは、すべてがDME治療を目指すものではないが、眼科領域への高い関心を示すものだ。


今後、多数の患者がDME治療薬の恩恵を被ると見込まれる。ロシュグループのジェネンテクは、米国では2600万人が糖尿病で、そのうち、420万人が糖尿病性網膜症で、50万人がDMEと見積もっている。英国の眼科に特化したKalVista Pharmaceuticalsは、現在世界の糖尿病患者2億8500万人が20年後には4億3800万人になるとし、そのうち10%程度がDMEを発症させるリスクを持つとみている。


現在、開発中のDME治療薬は別表の通りだが、特徴のある薬剤を見てみよう。現段階で、米国でDMEに適応を取得したのは2012年8月に承認されたLucentisのみだ。月1回注射剤である。しかし、ロシュのAvastin(ベバシズマブ)とEyleaは適応外使用として、DMEに使用されている。Eyleaは、2011年末にwet-AMDの適応で承認され、DMEでは現在フェーズIII試験中(欧州)で、その結果は2013年第4四半期に発表予定である。米国のVista-DME試験の結果は2014年第1四半期に発表予定となっている。


欧州では、Lucentisが2010年10月にDME治療薬として承認されたほか、Alimera SciencesのIliuvien(flucinolone acetonide)が英国、ドイツなどで2013年上半期に承認されている。Iliuvienは他剤で無効な場合の適応となっている。米国では、今年10月17日がPDUFAデートである。


アラガンは、スイスのバイオテク企業Molecular Partnersと共同で天然にみられる反復ペプチド配列に基づいた「DARPins」と呼ばれる新規化合物を開発している。これは投与回数を減少させることができる。 同社が開発している最初のDARPinsは、VEGF阻害剤のMP-0112で、今年初め、フェーズIII試験に近づいたが、5月に他社製品と差別化するために、さらにフェーズII試験を続行する必要があると発表した。アラガンの硝子体内ステロイド埋め込み剤Ozurdex(デキサメタゾン)はDMEの適応でフェーズIIIを終了した。同剤はすでに網膜静脈分枝閉塞症もしくは網膜中心静脈閉塞症による黄斑浮腫の適応では販売されている。同社は間もなく、欧米での同剤のDMEでの申請を計画している。


DME患者の硝子体で、網膜血管の透過性を増し、炎症、出血が起こるように異常に作用するタンパクのカリクレインを阻害する薬剤の開発を数社が鎬を削っている。英国のKalVista Pharmaceuticalsは、DMEを適応としたカリクレイン阻害剤を評価中だ。同社初の硝子体内化合物の臨床試験に間もなく入れると期待している。


米国のActiveSite Pharmaceuticalsは、経口のカリクレイン阻害剤であるASP-634は、前臨床段階である。糖尿病性網膜症動物モデルで、同剤の前駆物質はほぼ完ぺきに網膜血管の過剰な漏出を抑制した。米Allegro Ophthalmicsは、ファーストインクラスの化合物になると信じられているオリゴヌクレオチドのALG-1001を同定した。ALG‐1001は、市販されているVEGF阻害剤よりも、より血管新生カスケードの早い段階でVEGFの産生をカットするなどの作用を持つ。DMEの適応では、フェーズIで良好な忍容性を示した。現在、wet-AMDの適応でフェーズIb/IIa試験中である。



別表 DMEを適応とした開発中の主要品目(製品名、企業、開発段階、特徴の順)



*アフリベルセプト、リジェネロン、フェーズIII、VEGF拮抗剤
*AKB‐9778、Aerpio Therapeutics、フェーズIb/IIa、Tie2活性化剤
*ALG-1001、Allegro Ophthalmics、フェーズII、インテグリン・ペプチド
*坑PIGF、ThromboGenics、前臨床、坑胎盤成長因子(PIGF)
*ASP-634、 ActiveSite Pharmaceuticals、前臨床、経口カリクレイン阻害剤
*darapladib、GSK、フェーズII、Lp-PLA2阻害剤
*DE-102、参天製薬、フェーズII/III、ベタメタゾンミクロスフェア
*EBI-018、Eleven Biotherapeutics、前臨床、IL-6拮抗剤
*iCo-007、Ico Therapeutics、フェーズII、C-rafキナーゼのアンチセンス阻害剤
*カリクレイン阻害剤、KalVista Pharmaceuticals、前臨床、経口阻害剤
*MP-0112、Molecular Partners/アラガン、フェーズI/IIa、長時間作用型坑VEGF DARPin
*PF-655、Quark Pharmaceuticals/ファイザー、フェーズIIb、siRNA遺伝子阻害剤
*Ozurdex、アラガン、フェーズIII、デキサメタゾン硝子体内埋め込み
 


The Pink Sheet 6月17日号


 

 

 

 

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