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LANCET誌 JIKEI HEART論文を撤回 研究の誠実さに疑念

公開日時 2013/09/06 18:30

医学誌「LANCET」は9月6日のOnline版で、バルサルタンの有効性をめぐり、東京慈恵会医科大学を中心に日本人高血圧患者を対象に実施された大規模臨床試験「Jikei Heart Study(Valsartan in a Japanese population with hypertension and other cardiovascular disease)」を撤回したと発表した。同試験は、2007年4月にLANCETに掲載され、通常治療にバルサルタンを追加投与することで得られる心血管イベント抑制効果は、降圧効果だけでは説明できない、と同剤の有用性が報告されていた。


LANCET誌は、論文撤回に至ったこれまでの経緯を説明した。KYOTO HEARTの論文撤回を受け、東京慈恵会医科大学の学内に調査委員会が立ち上がったことに2013年4月29日に気づき、5月2日に同大に調査結果について継続的な情報提供を求めたとしている。さらに6月4日、19日の2回にわたり調査がいつ終わるかで連絡を求めた。その後、7月31日に同大が調査内容の中間報告について記者会見を行ったことに気づき、さらにもう一度同大に連絡をとり、その概要を知ったとしている。


統計解析を行ったノバルティスファーマの元社員の所属について、論文中では”大阪市立大学・臨床疫学”とされている。これに対し、LANCET編集部が4月に同大に問い合わせたところ、同大に臨床疫学講座がないとの連絡を受けたと説明。さらに、「大学内に、Jikei Heart Studyの統計解析グループはあったことがない」、元社員については「大学のスタッフであったことがない」とした。


LANCET誌はまた、元社員がすでにノバルティスを退職し、回答が得られなかったことから、メディカルアフェアーズのグローバルヘッドであるUsman Azam氏に同氏の所属を確認したことを論文中で明らかにした。その結果、当該試験期間中から論文が発行までの間、ノバルティスファーマに在籍していたことを認めた。ただ、2001~11年までの間、非常勤講師として大阪市立大学医学部に在籍していたとしている。Azam氏は、LANCET誌に対し、「元社員は、ノバルティスファーマの社員であることを明らかにすることを、論文の著者らに要求すべきだった」とした。


これらの調査結果を受け、LANCET誌は、「Jikei Heart Studyの誠実さと試験の統計解析者の所属が不明瞭であることに大きな疑念がある。これらを考慮し、LANCETは公式に同論文を撤回する」としている。


◎慈恵大「透明性・公正性・中立性の高い臨床研究の実現、信頼の回復に努める」


撤回を受け、東京慈恵会医科大学は同日、Jikei Heart Study調査委員会委員長橋本和弘氏の名で、「この事実を真摯に受け止め、透明性・公正性・中立性の高い臨床研究の実現、ならびに信頼の回復に努める」とのコメントを発表した。


◎ノバルティス「臨床研究の信頼回復のために貢献したい」


ノバルティスも同日に発表したプレスリリースで、「今回のことをとても残念に思うと同時に、非常に重く受け止めている。利益相反の開示が不適切であったことを認識できずに、本論文を引用してプロモーションを行ってきたことについて、心よりお詫び申し上げます」とした。


さらに、日本の医師主導臨床研究の信頼性を揺るがしかねない事態を生じさせたとし、「患者の皆様とそのご家族の方々、また医療従事者の皆様をはじめ、多くの方々にご心配とご迷惑をおかけしておりますことを、改めまして心よりお詫びいたします。今後は、再発防止策を徹底するとともに、臨床研究の信頼性を回復するために貢献していきたいと考えている」としている。

 



 

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