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東大病院 SIGN研究でノバルティス側に患者情報流出「医師主導研究として適正性を欠く」

公開日時 2014/03/17 03:51

慢性骨髄性白血病(CML)治療薬・タシグナ(一般名:ニロチニブ)の医師主導臨床研究「SIGN」にノバルティスファーマのMRなど社員が関与した問題で、東京大学医学部付属病院は3月14日に記者会見を開き、同大担当のMRを通じ、患者ID203名分を含む患者情報がノバルティスに渡っていたことを認めた。同研究では、同社からアンケート調査の作成、研究データの運搬、進捗状況の管理、データ解析などの労務提供があったとした。一方で、データ改ざんや利益相反(COI)については否定した。東大病院の門脇孝病院長は、会見の中で、患者IDの流出を問題視し、「守秘義務違反や個人情報保護法違反、学内内規の違反に該当する重大な過失」とした。その上で、「本来研究対象の製品を販売する企業とは独立して実施されるべき医師主導の臨床研究としては、適正性を欠いていると言わざるを得ない。臨床研究の信頼性を損ねるような事態を起こしたことは遺憾」と述べた。


会見の冒頭で門脇氏は、「ご協力いただいた患者さんにご心配とご迷惑をおかけして心よりお詫び申し上げる」と謝罪した。同大は、この問題について1月21日から調査を開始し、外部委員2名を含むSIGN研究特別調査 予備調査委員会を2月19日設置。関係者のヒアリング、メールなどを精査し、調査を進めており、この日の会見では中間報告がなされた。
 


調査結果によると、①臨床研究立案時点での研究実施計画書、登録票、アンケートなどの作成②研究データの送信、管理③研究進捗状況の管理、メールの発信など事務局機能の一部代行④集計データの解析―について同社の労務提供が認められた。



臨床研究の立案については、研究のプロトコル作成委員会委員長である同大血液・腫瘍内科の南谷泰仁講師がドラフトを作成。しかし、研究計画書やアンケート用紙などはノバルティスが作成していたことが分かった。また、同試験の立案にあたり、参考にされた海外の臨床試験ENRICHの資料についても同社から提供を受けており、研究立案の早期段階から同社の関与があったとした。ただし、研究自体は臨床的意義があり、研究そのものの必然性を認め、「科学的動機を否定するものではない」とし、同社が販促のために参画した可能性については否定した。



研究データについては、研究実施計画書にFAXにより研究事務局に送信することと規定されていたが、実際には過半数のデータを同社社員が運搬していた。他施設でのアンケートを担当MRが預かったことがきっかけとなり、アンケートの運搬がスタート。他施設担当社員も含めてアンケートの運搬に関与していたという。



臨床試験に参加する各施設から直接事務局にFAXで送信されたデータの受領も、当初は同大の技術補佐員が行っていたが、東大担当MRが技術補佐員からコピーを受領。受領書の送信やデータの保管、受信したデータの更新なども行うようになっていった。これらの行動を通じ、同社の東大担当MRは、すべての症例登録証の写しなどを入手。アンケートは2部コピーし、1部は事務局、1部は自身がノバルティス社内で保管していた。アンケートには、施設名、主治医名、被験者のイニシャル、生年月(日)、性別、患者IDなどが記載されていた。



同大の研究グループは、東大担当MRの臨床研究への関与を2012年末には認識していたが、当時は問題意識がなく、適切な対応がなされていなかった。また、技術補佐員は研究実施方法やデータの取り扱いの本来の手続きを理解していなかったとした。



◎データ解析への関与も データ改ざんやCOIは否定



同試験の解析についても同社東大担当MRの関与が認められた。同研究の中間報告として、第75回日本血液学会学術集会で発表された16枚のスライドのうち、少なくとも1枚は同社社員がデータ解析し、作成したスライドが流用されたことが分かった。この発表はビデオに撮影され、タシグナの販促活動に活用されていた。



ただ、同社の関与によるデータ改ざんについては否定。同院に保管されていた症例登録票などと参加施設から改めて取り寄せた症例登録票を突合させた結果、FAX番号の追記などは認められたものの、「現時点で確認できた範囲では、臨床研究データや学会発表内容自体についてデータの改ざんや利益相反関係に基づく研究の恣意的な操作は認められなかった」とした。タシグナに切り替えられた症例についても、255例中12例にとどまったことから、「被験者の選択に関しては、恣意的な選別は認められなかったと判断した」とした。



そのほかCOIについては、学内や学会発表における現行のルールに基づいており、明確なルール違反はなかったとした。ただし、透明性の観点からノバルティスから労務提供があったことや、研究代表者である黒川教授がタシグナ適正使用推進アドバイザーに就いていたことなどは、倫理審査申請時や学会発表時に開示すべきだったとした。



SIGN研究は、①ニロチニブなどチロシンキナーゼ阻害薬を内服しているCMLの慢性期患者の潜在的な副作用を明らかにする(256例)②3か月間にわたる積極的な副作用マネージメントを行った後の副作用の改善度合いを検討する(16例)③積極的な副作用マネージメントを行っても改善せず、患者の同意が得られた場合にはニロチニブに切り替え、その後の副作用の改善度合いを検討する(12例)―の3段階のアンケート調査からなる研究。東大病院を含む国内22施設で実施されていた。なお、同研究については1月10日に事務局から臨床研究の中断が、臨床研究に参加する施設に通知されている。

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