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あなたの人生を変えたいのなら 

公開日時 2014/12/15 05:00

情熱的読書人間・榎戸 誠

 

【人生が変わる】

 

心が変われば、態度が変わる。
態度が変われば、習慣が変わる。
習慣が変われば、人格が変わる。
人格が変われば、人生が変わる。
――出典不詳

 

1980年に発刊された伊藤肇の『帝王学ノート――混沌の時代を生き抜く』(伊藤肇著、PHP文庫。出版元品切れだが、amazonなどで入手可能)で、この言葉に出会って以来、私の座右の銘となっている。

 

この言葉には6行のものなどさまざまなヴァリエーションがあるが、上に掲げた4行のものが一番すっきりしていて、味わい深い。また、出典についても、ヒンドゥー教や蓮沼門三など諸説があるが、確証は得られていない。

 

この言葉に触れた瞬間から、一介の経済記者を自称する伊藤肇にのめり込み、彼の本はほとんど渉猟したが、いずれからも多くのことを学ぶことができた。

 

 

【人間学の参考書】

 

若い人から、「人間としてのスケールを大きくしたいのですが、どんな本を読んだらいいでしょうか」と問われたときは、『人間学――人生の原則 行動の原理』(伊藤肇著、PHP文庫。出版元品切れだが、amazonなどで入手可能)を薦めることにしている。

 

伊藤は、一貫して「現代の帝王学」を追究した人物なので、この書もそのテーマに沿っている。従って、若者にとっての人生論というよりも、トップに対する帝王学、幹部に対する人間学といった趣がある。しかし、トップや幹部を目指そうとする若い人には参考になるだろう。類書とは比較にならぬほど内容の奥行きが深いからである。

 

 

【帝王学の三本柱】

 

「中国五千年の歴史は、さまざまな体験のなかから『帝王学』という叡智を結晶させた。『帝王学』などというと、『保守反動の塊』みたいに思う向きもあるかもしれない。しかし、それはとんでもない思い違いで、要するに『上に立つ者が身につけておかなければならない学問』のことである。『人間学』といいかえてもいいのである。この『帝王学』には3つの柱がある。第1に、原理原則を教えてもらう師をもつこと。第2に、直言してくれる側近をもつこと。第3に、幕賓(パーソナル・アドバイザー)をもつこと」。

 
【松下幸之助の人事】

「松下電器産業(現・パナソニック)相談役の松下幸之助は『人事の名手』といわれている。ある時、『松下人事の原理原則は何ですか』と問うたら、『西郷南州(洲)翁遺訓』の一節をもって答えた。『国に功労ある人には賞を与えよ。功労あったからといって地位を与えてはならない。地位を与えるには、おのずとその地位に相応しい見識がなければならない。そこのところを間違えて、功労に酬いるために見識なき者に地位を与えると、それは国家崩壊の原因となる』。これを企業にあてはめるとどういうことになるか。『あの人は会社を儲けさせた。だから重役にしよう』という発想は間違っているのだ。そういう場合は、南州翁が指摘したように『功労ある人には賞をもって酬いる』ことである。『賞』とは金品のことだから、ボーナスとか、金一封とか、あるいは昇給でもって酬いる。そして、重役に抜擢するのに、『これがうちの重役です』と部下が誇れるような見識ある人物をもってくる」。この原理原則が守られていない企業のいかに多いことか。

 

 

【3つの体験】

 

電力の鬼といわれた松永安左エ門が野村證券の中興の祖・奥村綱雄に言った言葉は、自らの経験を踏まえているだけに説得力がある。「いいか、後学のためにいってきかせるが、実業人が実業人として完成するためには、3つを体験しないとダメだ。その1つは長い浪人生活だ。その2つは長い投獄生活だ。その3つは長い闘病生活だ。奥村クン、君はまだ、このうちの一つもやっていないだろう」。この「浪人生活」は大学浪人ではなく、自分の納得がいかない場合は潔く仕事を辞めることを意味している。

 

 

【木鶏たれ】

 

往年の名横綱・双葉山が、伊藤の師・安岡正篤に書いてもらった「木鶏(もくけい)」の額を部屋に掛けて、朝な夕な静坐して木鶏の工夫をしたというエピソードが伝えられている。また、双葉山を尊敬する白鵬が、このエピソードに言及したことがある。 

 

「『荘子(そうじ)』に出てくる『木鶏』の寓話がいい。昔、紀省子という闘鶏を飼育する名人が王のために一羽のすぐれた鶏を育てていた。10日ばかりして王が『もう、ぼつぼつどうかね』と催促した。すると紀は『まだ、いけません。ちょうど、空元気の最中です』と断った。また、10日ばかりして王がせつくと、『まだ、相手をみると興奮するからいけません』。さらに10日、待ちあぐねた王が、『いくら何でも、もういいだろう』というと『まだ、ダメです、相手に対して、何がこやつ! というように嵩にかかるところがあります』。それから10日、すっかり、しびれをきらした王に名人がやっとOKを与えた。『ぼつぼつよろしいでしょう。もう、どんな相手が挑戦してきても、いっこうに平気でございます。多分、いかなる鶏が現われても、応戦せずして皆、退散することでしょう』。蹴合わせてみたら、果して、その通りだった」。

 

この寓話から4つの教訓を汲み取ることができる。「第1に『競わず』。むやみと余計な競争心をかりたてないこと。第2に『てらわず』。自分を自分以上にみせようとしないこと。第3に『瞳を動かさず』。落ちつかぬ態度で、あたりをきょろきょろ見まわさぬこと。第4、『静かなること木鶏の如し』。木彫の鶏の如く、静かに自己を見つめること。『深沈厚重』とは『木鶏』の魅力に他ならないのである」。この年に至っても、「木鶏」からほど遠い私。

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