日本製薬団体連合会（日薬連）、日本製薬工業協会（製薬協）、米国研究製薬工業協会（PhRMA）、欧州製薬団体連合会（EFPIA）の製薬４団体は、８月24日の官民対話で、厚労省の提示した医薬品産業の競争力強化に向けた総合戦略を評価する姿勢を示した。日薬連の野木森雅郁会長は、「総合戦略策定の取組を高く評価するとともに、実効性のあるものとなるよう最大限の協力を行う」と述べた。厚労省が策定を進める「医薬品産業強化総合戦略～グローバル展開を見据えた創薬～」では、イノベーションの推進を柱のひとつに位置づけ、臨床研究・治験の活性化などに加え、新薬創出加算や、先駆け審査制度のあり方を検討するなど、保険償還価格におけるイノベーションの適正な評価の重要性も盛り込んでいる。厚労省は来週にも、総合戦略の全文を公開する方針だ。

製薬４団体は、「革新的医薬品を今後とも医療現場に提供できるよう、新薬創出に向けた環境整備や開発力強化を後押しする政策の推進に期待」（製薬協・多田正世会長）、「医薬品の研究開発に国境はなく、国内外の企業による国内開発投資の推進につながる戦略を期待」（PhRMA・トニー・アルバレズ在日執行委員会委員長）、「欧州での研究開発における官民パートナーシップ“Innovative　Medicine Initiative（IMI）”の経験の共有を通じて、日本の官民パートナーシップ推進を支援する」（EFPIA・カーステン・ブルン会長）などそれぞれの立場から総合戦略を歓迎した。また、今回官民対話に初めて参加した日本医療研究開発機構（AMED）を通じた、アカデミア側との連携に注力する姿勢も示した。


そのほか、製薬協は2015年度の税制改正でオープンイノベーション型の研究開発税制の拡充が行われたことに触れ、制度の活用に加え、「研究開発税制の一層の拡充が不可欠」とのスタンスも示した。


◎塩崎厚労相「新薬メーカーは治験大国目指す意気込みを」　バイオベンチャー活用を


塩崎恭久厚生労働大臣は、この日の会議の冒頭で、高齢化が進展する中で、成長産業として位置づけられる医薬品産業の発展が重要と強調した。その上で、「キーワードは、イノベーション」と指摘し、「治験大国を目指すくらいの意気込みで治験をやる、グローバル治験を行うことも重要」と述べた。


新薬メーカーにとっては、長期収載品比率の引下げも求められることになる。こうした中で、「政府としても、治験の問題や研究開発の問題のさらなる改善に向け、研究開発の環境を整え、良い医療が実現できるか考えないといけない」と述べ、新薬創出に向けた環境整備の重要性を強調した。また、国内の課題としてバイオベンチャーの活用が少ないことを指摘し、「既存の医薬品産業とバイオベンチャーの良い組み合わせが日本でも必要ではないか」との考えも示した。


総合戦略は、①イノベーションの推進、②質の高い効率的な医療の実現、③グローバルな視点での政策の再構築—が三本柱となっている。臨床研究・治験の活性化や産官学の連携に加え、保険償還価格でのイノベーションの適正な評価を盛り込み、イノベーションを施策として推進する考え。国際競争力を得るために、インフラ整備や産官学のネットワーク構築、ビッグデータを活用したレギュラトリーサイエンス研究の推進など、環境整備にも取り組む。一方で、 臨床上の必要性が高く将来にわたり継続的に製造販売されることが求められる“基礎的医薬品”の安定供給に向けた薬価上必要な措置、流通の安定化に向けた単品単価取引のさらなる推進や、新規収載時のGEの新バーコード表示を必須とすることなども盛り込んだ。医薬品産業の将来像としては、「今後新薬創出ができなかった新薬メーカーについては、事業の転換等が迫られるのではないか」と指摘。M&Aによる事業規模の拡大や、官民一体となったバイオベンチャーの振興が重要とした。GEメーカーについては、GE80％目標達成後は、国内における市場拡大の余地が小さくなることから、「今の段階から将来を見越して、集約化・大型化も含めそのあり方について検討することが必要ではないか」としている。