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中医協・薬価専門部会 市場拡大再算定の抜本的見直しに着手 “市場獲得率”拡大品目は除外へ

公開日時 2017/01/12 03:52

中医協薬価専門部会は1月11日開かれ、現行の市場拡大再算定ルールの抜本的見直しに着手した。現行ルールでは、再算定の対象は当該製品の予想販売額と年間販売額で決まる。厚労省が想定する新たな見直し案では、効能追加等で年間販売額が伸長しても競合品を含め、該当領域の市場全体を拡大させない場合は再算定のルールを適応しない考え。つまり、競合品のシェアを奪い“市場獲得率”を拡大させただけで、市場全体の売上高に変化がない場合は薬価引下げの対象とならないことになる。現行制度はいわば、市場競争に打ち勝ってシェアを獲得した製品に再算定を行う“市場獲得率拡大再算定”とも言える側面がある。これを抜本的に見直すことで、現行ルールで再算定に該当する品目が引下げの対象から外れる可能性も出てきた。一方で、競合品を含めた領域別の市場売上の合計が大きく伸長した場合には、新薬収載の機会を最大限活用して年4回の迅速に再算定を行う考え。個々の疾患領域別に市場をみれば、今後その伸びは一定程度抑制されることも想定される。


薬価制度の抜本改革の議論がスタートした。抗がん剤・オプジーボに端を発した高額薬剤問題は、国民皆保険の持続性とイノベーション推進との両立のテーマに発展。昨年末、塩崎厚労相、麻生財務相、菅官房長官、石原経済・財政相の4大臣が昨年末に「薬価制度の抜本改革に向けた基本方針」を取りまとめるに至った。基本方針には、「効能追加等に伴う一定規模以上の市場拡大に速やかに対応するため、新薬収載の機会を最大限活用して年4回薬価を見直す」ことが盛り込まれた。オプジーボが効能追加を機に売上高が大きく伸長したことなどから、厚労省側は早急に議論に着手することが必要と判断。年明け早々“効能追加等に伴う市場拡大への対応”を議論の俎上にあげた。


効能追加に伴う市場拡大への対応としては、すでに現行ルールとして市場拡大再算定などがある。市場拡大再算定は、年間販売額が予想販売額の一定倍数・一定額を超えた場合、2年に1度の薬価改定で薬価を引き下げる。いわゆる競合薬がすでに市場にあり、類似薬効比較方式で算定された製品は、効能追加等で使用実態が著しく変化したことが前提条件となる。また、年間販売額が1000億円超など巨額の売上をあげた製品については、効能追加などがなくても、2016年度改定で新設された特例拡大再算定により薬価が引き下げられることとなっている。


◎加茂谷専門委員 市場獲得率を変化させただけの製品「再算定の対象から除外を」



厚労省は、この日の中医協に対象品目の範囲についての論点として、▽薬理作用類似薬がなく新たな医薬品市場が拡大するケース、▽競合品との市場獲得率を変化させているだけで医療保険財政への影響がほとんどないケース――をあげた。国民皆保険の持続性の観点から、医療保険財政への影響が議論の重要なポイントとなる中で、厚労省側は、1剤の製品の売上高だけではなく、マーケット全体に着目することが必要と判断。市場内で競争に打ち勝ち、市場獲得率を拡大させたものの、競合薬を含めて市場が拡大していない製品は再算定の対象から外す考え。市場拡大再算定という本来の名称通り、市場を大幅に拡大させた製品について迅速に再算定を行う考えだ。


支払側の吉森俊和委員(全国健康保険協会理事)は、「現行の市場拡大再算定、特例拡大再算定に該当する品目は、最低限対象とすべき」と主張。その上で、市場獲得率を変化させているだけの製品についても言及し、「留意事項通知などで使用方法が違う場合、完全に同一視できるか丁寧に検討することが必要だ」と述べた。


これに対し、専門委員の加茂谷佳明委員(塩野義製薬・常務執行役員)は、議論の発端が皆保険の維持・持続性だとした上で、「マーケット全体で見ると影響がないときには、(再算定の)対象から外していただきたい」と要望した。また、施行時期については国民皆保険の持続性の観点から一定の理解を示した上で、企業経営の観点から予見性の重要性を強調。各社とも2017年度の事業計画の策定にすでに着手していることなどから、2017年度施行についてけん制した。


◎NDBデータ活用で販売数量把握


再算定に当たり、販売数量の把握も一つの大きな論点となる。通常の薬価改定時には薬価調査を行うが、厚労省側は、レセプト情報・特定健診等情報データベース(NDB)を活用し、薬剤の総量を把握。薬価と掛け合わせることで、医療保険財政に影響を与える製品を洗い出すことが可能になるとしている。迅速かつ柔軟な対応が求められる中で、診療側の中川俊男委員(日本医師会副会長)は、NDBを活用する課題も指摘。IMSなどの民間データ活用の検討を求める一幕もあった。

そのほか、薬価の見直しが医療機関、薬局、医薬品卸における医薬品の在庫価値減少につながる可能性も指摘。施行時期や経過措置の必要性も指摘された。


◎年内に骨子取りまとめ 外国平均価格調整、新薬創出加算も議題に


薬価制度の抜本改革は今後、8項目のテーマについて集中的に議論を行い、12月に骨子をとりまとめる方針。1~4月には、①効能追加等に伴う市場拡大への対応、②薬価算定方式の正確性・透明性、③外国平均価格調整の在り方、④中間年の毎年薬価調査・薬価改定、⑤後発品の薬価の在り方について――議論を行う。議論を踏まえて5月に関係団体ヒアリングを行った後、6~9月は、薬価算定方式や毎年薬価調査・薬価改定の議論を継続するほか、新薬創出加算の在り方、長期収載品の薬価の在り方、イノベーションの評価を議論の俎上にあげる。10月にも業界団体ヒアリングを行い、骨子をとりまとめる方針だ。
 

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