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武田薬品 3次医療圏単位で地域医療を分析、全国約十か所で 専任者“RAC”を配置

公開日時 2017/05/09 03:52

武田薬品で日本事業のトップを務める岩﨑真人・取締役ジャパンファーマ ビジネスユニットプレジデントはこのほど、本誌のインタビューに応じ、各地域で再構築される医療提供体制や地域包括ケアシステムを調査・分析する専任担当者“RAC”(ラック)を配置したことを明らかにした。RACは非営業部門に所属し、現在約10人を配置。すでに北海道、広島、岐阜、大分の4道県で3次医療圏単位で活動を始めており、年内に分析対象地域を全国約十か所に広げる。特に地域における患者の診断・治療・ケアの流れや、新たな地域医療提供体制でのステークホルダーやインフルエンサーを見極め、漏れのない情報収集・提供活動を目指す。

インタビュー内容の一問一答形式の記事は文末の関連ファイルからダウンロードできます(5月9日のみ無料公開、その後はプレミア会員限定コンテンツになります)。

国はこれから本格化する超高齢化と人口減少(=医療需要の減少)を見据え、病院などの“箱モノ”を増やさず、地域における病院機能の分化・連携や在宅医療の強化を推進している。市町村、都道府県、医師会、病院経営者らが参加して地域医療を再構築し、これまでの施設完結型医療から地域完結型医療に転換する。

一方で、製薬企業からみると、地域の実情に応じた機能分化と連携が行われるため患者の治療やケアの流れを把握しづらくなり、患者をしっかり把握・フォローアップできなければ、製品の適正使用の推進や副作用情報の収集と報告義務に支障をきたすとの指摘がある。

■製品プロモーションの観点で分析しない

岩﨑氏は、全国約十か所の分析対象地域について、「先進的な地域医療を展開し、病院機能の分化・連携が進んでいる、もしくは分化・連携を進めようとしている地域であり、都市部とそれ以外についても学べる地域」と話した。北海道など4道県以外の県名は明かさなかった。

情報収集や分析はRAC(=Regional Access Coordinator)と呼ぶ専任担当者が行う。多くの製薬企業が2次医療圏単位で分析を進めているなか、武田薬品は3次医療圏単位で分析する。この点について岩﨑氏は、「2次医療圏や地域医療構想の“構想区域”の単位で分析を進めると、製品プロモーションの観点で物事を見てしまいがちになり、見落としがあると思っている」と述べ、RACには製品や売上を意識しないで情報収集や分析を進め、県全体の医療の方向や患者の治療やケアの流れを把握するよう指示していると明かした。

RACがすでに活動している4道県では、「地域のインフルエンサーであり、我々のステークホルダーでもある自治体の地域医療担当者や病院経営者の方々と深い情報交換をしている」「(RACは)病院経営の仕事ができるレベルで活動を行っている」という。

新たな地域医療提供体制構築のカギをにぎる病院機能の分化・連携の検討では、必ず病院経営の視点が反映される。RACが病院経営の視点を持ち合わせて情報交換・情報収集することで、患者の流れを経営の観点からも理解していくねらいがあるようだ。

■“シンクロナイズド・マルチチャネル・アプローチ”で情報活動 組織は独立性と中立性を担保

岩﨑氏は、今後構築される新たな地域医療提供体制のもとでのMRの役割や、タケダの情報活動のあり方についても所見を述べた。

新たな地域医療提供体制では、▽患者の治療やケアの流れが変わる▽ステークホルダーがジェネラリスト(総合医)、専門医、病院経営者、自治体関係者、薬剤師、特約店などに広がる――と指摘。その上で岩﨑氏は、「MRが自身の持つ情報だけで全てに個別にアプローチすることには限界がある。チームでアプローチすることが必要」と述べ、MR個人で完結させず、チームで情報活動していく考えを示した。チーム構成については、「MRはこれまで社内・社外と連携して情報活動を行ってきたが、それに加えてRAC、メディカルがそれぞれの独立性と中立性を保ちつつ、ひとつのチームとなることを検討している」という。チーム活動に関するKPIのウェートも厚くする方針。

そして、「チームの中心に必ずMRがいて、ステークホルダーやインフルエンサーとの間で起きていることは全てMRが瞬時に把握できるようにする」とし、デジタル技術を活用して瞬時に情報共有できる仕組みを導入すると語った。社内ではこの新たな情報活動体制を“シンクロナイズド・マルチチャネル・アプローチ”と呼称している。MRは今後、デジタル技術を使いこなすだけでなく、集まってくる情報や情報チャネルを使いこなすスキルを身につける必要があるとも指摘した。

なお、“シンクロナイズド―”の考え方は岩﨑氏が4月上旬に、オンコロジー部門やワクチン部門を含む日本で医療用医薬品事業を担う約3500人が一堂に会した全体会議「ONE Takeda Meeting」(右写真)で説明しており、会社として準備を始めたといえそうだ。

■300人超が医療経営士資格取得 「社員全員に取ってもらいたい」

岩﨑氏は、新しい地域医療提供体制におけるステークホルダーやインフルエンサーが用いる専門用語や意思決定のマインドをMRが十分理解していることが、競争優位に向けてより重要になると指摘した。

岩﨑氏は、「新しい医療環境の下で、各社の競争状態に入った時、最後はクオリティが勝負を分けるとみている。(ステークホルダーやインフルエンサーの)“言語”を社員が理解し、市場の中身をどれだけ知っているのかが問われる」と述べ、会社として知識レベルを底上げしていく重要性を強調した。

このためにチームリーダー以上の社員に医療経営士の資格取得の勉強をさせていた(ミクス16年11月号既報)とし、4月までにチームリーダー以上の社員のほぼ全員を含めた300人超がこの資格を取得したことを明らかにした。チームリーダーではない社員も自発的にチャレンジを始めているという。岩﨑氏は、「本当の気持ちを言えば、国内事業を担当する社員全員にこの資格を取得してほしい」と述べた。
 

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