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厚生科学審議会部会 臨床研究の範囲“観察研究”は含まず 製薬企業との利益相反に指摘相次ぐ

公開日時 2017/08/03 03:50

厚労省医政局研究開発振興課は8月2日、厚生科学審議会臨床研究部会(楠岡英雄部会長・国立病院機構理事長)の初会合に、臨床研究の範囲や実施基準の概要を提示した。ディオバン事件やCASE-J事件など、製薬企業の臨床研究をめぐる不正が相次いだことを受け、法制化される中で、製薬企業と研究者との透明性担保が求められる。この日の臨床研究部会では、出席委員から製薬企業の資金提供の不透明さなど、指摘が相次いだ。同省は臨床研究部会を今後5回程度開催し、秋ごろに取りまとめを行う。その後、年明け1~2月に省令を交付し、2018年4月13日までに完全施行する。


◎臨床研究「医行為に該当するもの」と明確化

臨床研究は、「医薬品等を人に対して用いることにより、当該医薬品等の有効性または安全性を明らかにする研究」と法案では明文化されている。この日の部会に厚労省医政局研究開発振興課は、臨床研究の範囲を「医薬品などを人に対して投与または使用すること(医行為に該当するもの)により行う研究」と明示した。医療機器で体温の測定のみ行う研究などは、医行為に該当しないと判断し、臨床研究の対象には該当しないこととした。また、観察研究は通常の診療行為の経過や結果を評価したものにすぎないことから、法律上の臨床研究には該当しないことになる。ただし、ここの患者に対する最適治療を目的とせず、複数の医薬品を比較する目的で行う研究は観察研究から除外される。そのほか、製造販売後臨床試験や治験届の届け出が義務付けらえれていない治験など、GCP省令などの遵守が義務付けられている試験については、二重規制を防ぐ観点から除外した。

観察研究を臨床研究から除外した理由について、厚労省医政局研究開発振興課の井本昌克治験推進室長は、「患者さんのためのベストな診療を医師が考え、最適治療を行う。その結果データが残る。それが観察研究の理念だ」と説明。後ろ向き研究だけでなく前向き研究であっても、研究が最適な治療の実現に影響しないことから、除外に至ったとした。臨床研究法案の理念として、「人を実験材料として試すということには法律上の規定が必要だということからスタートしている」と井本室長は説明。一方で、「医学的判断なり技術なりを要件としないものまで規制するとなるとどうなのかということ」と述べ、「一番大事なのは、国民の人権の尊重、健康の保持と過度な規制をしないということのバランスの上に成り立っていること」と述べ、理解を求めた。


なお、臨床研究法案では、▽医薬品医療機器等法(薬機法)における未承認・適応外薬の医薬品等の臨床研究、▽製薬企業などから資金提供を受けて実施される当該製薬企業等の医薬品等の臨床研究――を特定臨床研究に位置付け、モニタリング・監査の実施、利益相反の管理などの実施基準の遵守、インフォームド・コンセントの取得、個人情報の保護、記録の保存などを義務付けている。


◎日医・羽鳥委員 バイエル社の抗凝固薬・イグザレルトを名指しで指摘



部会では、「一般社団法人だが、半分は企業、1/3は企業から資金提供を受けている時等の解釈をどうするのか」(花井十伍委員・全国薬害被害者団体連絡協議会代表世話人)、「企業のお金のやり取りの不透明さがある。企業がNPOや社団法人への寄付を介して、マネーロンダリングをして臨床研究をサポートしている実態がある」(藤原康弘・国立がん研究センター中央病院副院長)、「観察研究だと逃げていて製薬企業の資金がかなり導入していた場合があるということを懸念している」(新谷歩・大阪市立大学大学院医学研究科医療統計学教授)など、依然として製薬企業から研究者への不透明な資金の流れを指摘する声があがった。


羽鳥裕委員(日本医師会常任理事)はバイエル薬品の抗凝固薬・イグザレルトの研究「EXPAND」と「AFIRE」を名指しであげ、「マネーロンダリングの仕組みを使って、一社が投入している。臨床審査委員会も作るが、お仲間の先生だ。本当の意味での第三者にはならない。イグザレルトの研究に関しては、審査になっていないという風にも思える」と指摘。「1回の講演会を行うにしても、10億円近くの金が動く、仕組みを全く変えないと無理だという議論があってもおかしくないのではないか」と述べた。厚労省医政局研究開発振興課の森光敬子課長は、審査委員会の要件や運営上の要件などを求める考えを示し、「委員自身の利益相反についてはしっかり求めていくことなどは要件の中に入っていくべきだし、そう考えている」と述べた。


また、この日の部会には、省令の検討事項である臨床研究の実施体制や構造設備などの実施基準の案が提示された。共同IRBの推進を見据え、統括責任者を選任し、他の実施医療機関の研究責任者との情報共有や、臨床研究の適正な実施を確保するための指示を行うことを盛り込んだ。しかし、名称や役割などについて委員からは疑義があがる一幕もあった。

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