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新薬7製品が薬価収載へ DPP-4阻害薬とSGLT2阻害薬の配合剤や脊髄性筋委縮症薬など

公開日時 2017/08/24 03:52

厚労省の中医協・総会は8月23日、新薬7製品(7成分10品目)を薬価収載することを決めた。同省は8月30日の収載を予定する。国内初のDPP-4阻害薬とSGLT2阻害薬の配合剤で、2型糖尿病治療に用いるカナリア配合錠(田辺三菱製薬)や、アンチセンス核酸医薬で、希少難病の乳児性脊髄性筋委縮症の治療薬スピンラザ髄注(バイオジェン・ジャパン)などがある。スピンラザは、有効性や致死的な脊髄性筋委縮症に治療手段を提供することが高く評価されて薬価に反映された。

収載される製品は以下のとおり(カッコ内は成分名と薬価収載希望会社)

カナリア配合錠(テネリグリプチン臭化水素酸塩水和物/カナグリフロジン水和物、田辺三菱製薬)

薬効分類:396糖尿病用剤(内用薬)
効能・効果:「2型糖尿病(ただし、テネリグリプチン臭化水素酸塩水和物及びカナグリフロジン水和物の併用による治療が適切と判断される場合に限る)」
薬価:1錠 300.30円(1日薬価:300.30円)
市場予測(ピーク時10年後):投与患者数6.2万人、販売金額68億円
加算なし

DPP-4阻害薬テネリア(20mg)とSGLT2阻害薬カナグル(100mg)の配合剤。この組み合わせの配合剤は国内初。第一三共が販売し、田辺三菱と第一三共が共同で情報提供活動する。それぞれの成分が1年以上の臨床経験があるとして、14日処方制限を設けない。薬価算定にあたっては、新医療用配合剤の特例が適用され「自社品の薬価の合計の0.8倍」で薬価が設定された。

スピンラザ髄注12mg(ヌシネルセンナトリウム、バイオジェン・ジャパン)
薬効分類:119その他の中枢神経系用薬(注射薬)
薬効分類:「乳児型脊髄性筋委縮症」
薬価:12mg5mL1瓶 932万0424円(原価計算方式で算定)
市場予測(ピーク時8年後):乳児型のみの場合:投与患者数294人、販売金額97億円(9月に追加承認予定の乳児型以外の場合:投与患者数120人、販売金額22億円)
平均的な営業利益率(14.7%)×135%=19.8%で算定:理由「SMNタンパク質の発現増加をもたらす新規作用機序医薬品であり、7か月齢以下の患者を対象とした臨床試験において運動マイルストーンの有意な改善が認められたこと、先天性の遺伝子変異による致死的な脊髄性筋萎縮症に対して治療手段を提供する初めての医薬品であること、希少疾病用医薬品に指定されていることなどを踏まえた」。

薬価算定では、9月に一部変更承認予定の乳児型以外の脊髄性筋萎縮症患者を含めた市場規模予測を適用して算出した。

脊髄性筋萎縮症は、遺伝的要因により、脊髄や下位脳幹の進行性の運動ニューロンの脱落を特徴とする疾患で、重症で進行性の筋委縮や筋無力を引き起こす。最も重篤なタイプでは麻痺状態となり、呼吸や嚥下など生命維持のための基本的な身体機能に支障をきたす恐れがある。14年度の特定疾患受給者証の交付件数は894件で、乳児型の患者数は全体の6割程度とされる。

標的RNAと結合して遺伝子発現を調節するようデザインされた短鎖の合成ヌクレオチド(=ASO(アンチセンスオリゴヌクレチオド))。SMN2遺伝子のスプライシングを変えるようデザインされ、完全に機能するSMNタンパク質の産生を増やす、アンチセンス核酸医薬品。

ビプレッソ徐放錠50mg、同150mg(クエチアピンフマル酸塩、アステラス製薬)
薬効分類:117 精神神経用剤(内用薬)
効能・効果:「双極性障害におけるうつ症状の改善」
薬価:
50mg1錠 71.00円
150mg1錠 188.60円
市場予測(ピーク時5年後):投与患者数4.1万人、販売金額22億円
加算なし

主にドパミンD2受容体、セロトニン5-HT2受容体を阻害する非定型抗精神病薬。有効成分のクエチアピンフマル酸塩は、アステラスが製造販売承認を持つ統合失調症治療薬セロクエルと同じだが、適応症、用法・用量が異なるため、別名称にした。厚労省の「医療上の必要性の高い未承認薬・適応外薬検討会議」を経て、同省から当該企業に開発要請され、開発された。

オルミエント錠2mg、同4mg(バリシチニブ、日本イーライリリー)
薬効分類:399他に分類されない代謝性医薬品(内用薬)
効能・効果:「既存治療で効果不十分な関節リウマチ(関節の構造的損傷の防止を含む)」
薬価:
2mg1錠 2694.60円
4mg1錠 5223.00円(1日薬価:5223.00円)
市場予測(ピーク時9年後):投与患者数3.6万人、販売金額362億円
加算なし

選択的JAK1及びJAK2阻害薬。JAK依存性サイトカインは多くの炎症性及び自己免疫疾患の病因と関連していることが示唆されており、JAK阻害の作用により効果を発揮すると考えられている。4mgを1日1回投与。患者の状態に応じて2mgに減量することができる。関節リウマチに用いるJAK阻害薬としては、ゼルヤンツ錠(トファシチニブクエン酸塩、ファイザー)がある。

アメナリーフ錠200mg(アメナメビル、マルホ)
薬効分類:625抗ウイルス剤(内用薬)
効能・効果:「帯状疱疹」
薬価:200mg1錠 1469.70円(1日薬価:2939.40円)
市場予測(ピーク時10年後):投与患者数31万人、販売金額64億円
加算なし

1回400mgを1日1回食後に投与する。薬価算定の比較薬となったファムビル錠250mgは1回500mgを1日3回投与。

ジフォルタ注射液20mg(プララトレキサート、ムンディファーマ)
薬効分類:422代謝拮抗薬(注射薬)
効能・効果:「再発又は難治性の末梢性T細胞リンパ腫」
薬価:20mg1mL1瓶 8万9632円 (1日薬価:2万4695円)
市場予測(ピーク時5年後):投与患者数407人、販売金額8.6億円
加算なし

リンパ腫や固形がんの治療薬として広く使用されている葉酸拮抗薬メトトレキサートの類似化合物。希少疾病用医薬品。

ケイセントラ静注用500、同1000(乾燥濃縮人プロトロンビン複合体、CSLベーリング)
薬効分類:634血液製剤類(注射薬)
効能・効果:「ビタミンK拮抗薬投与中の患者における、急性重篤出血時又は重大な出血が予想される緊急を要する手術・処置の施行時の出血傾向の抑制」
薬価:
500国際単位1瓶(溶解液付) 3万5004円
1000国際単位1瓶(溶解液付) 6万5225円
市場予測(ピーク時5年後):投与患者数1.2万人、販売金額15億円
加算あり(市場性加算1(A=10%)):理由「希少疾病用医薬品として指定を受けており、比較薬が市場性加算の適用を受けていないことから、加算の要件に該当する。ただし、類似の組成及び薬理作用を有する医薬品が既に薬価収載されていることから、限定的な評価とした」。

血栓塞栓症の治療や予防に用いるワーファリン(一般名:ワルファリンカリウム)に代表されるビタミンK拮抗薬の服用患者では、出血時や出血が予測される際の止血管理が重要となる。一般的には休薬やビタミンKの投与で対処するが、出血傾向の是正までに数時間以上かかる。このため、重篤出血時や緊急手術時など抗凝固状態を早急に是正する必要がある場合の十分な対処法がなかった。日本脳卒中学会が早期開発の要望を厚労省の「医療上の必要性の高い未承認薬・適応外薬検討会」に提出し、開発の必要性が認められ、同省の開発要請を受けてCSLベーリングが開発した。希少疾病用医薬品。
 
7月承認の2新薬が収載見送り 高脂血症治療薬パルモディア、末梢性T細胞リンパ腫治療薬イストダックス
 
7月に承認された2新薬の収載が見送りとなった。新規フィブラート系薬剤で高脂血症治療薬パルモディア錠0.1mg(ペマフィブラート、興和)と、「再発又は難治性の末梢性T細胞リンパ腫」の治療薬イストダックス点滴静注用10mg(ロミデプシン、セルジーン)で、この2社は次回の11月収載を目指す。

パルモディア錠は自社創薬した薬剤で、同社の期待が高かったが、興和は「8月の薬価収載に向けて協議を続けてきたが、薬価の面で合意に至らなかった。11月以降の発売に向け努力する」(広報部)とコメントした。

イストダックスは、ヒストン脱アセチル化酵素(HDAC)の活性を阻害することでがんの細胞周期の停止や細胞死が誘導され、腫瘍増殖を抑制するとされるHDAC阻害薬で、末梢性T細胞リンパ腫の適応では初めてだった。セルジーンは「希少疾病用医薬品としての価値に対する考え方を理解していただくには引き続きの対話が必要と判断した。11月の収載を目指し努力する」(コーポレートコミュニケーション部)としている。
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