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最高殊勲MRは吉田真幸さん(武田薬品)

公開日時 2017/09/30 00:00

テーマ「人工知能(AI)に立ち向かえ! MR減少時代に生き残れるか」

決選に8人 MRだからこそできる医療貢献を模索

 

「MR-1コンテスト 2017」(主催:一般社団法人メディカルインフォ&コミュニケーション協会、MR-1コンテスト実行委員会)が8月26日、東京・品川の星薬科大学で開催された。テーマは「人工知能(AI)に立ち向かえ! MR減少時代に生き残れるか」。 近い将来、AIの活用が進み、医療従事者、患者が一次的な解をAIに求めることも予測される。この間に地域医療の姿も医薬品の使われ方も大きく変わる。その時のMRの立ち位置、役割を問う内容だ。小論文、プレゼンテーション動画による予選を通過した8人のMRがこの日の決選に臨み、プレゼン、医師、薬剤師とのロールプレイの審査を経て、最高殊勲MR(MVMR)には武田薬品の吉田真幸さんが選ばれた。8人に印象的だったのはMRだからこそできる医療貢献を模索する姿である。しかし明確な答えが示されたわけではない。むしろ、今回のテーマはそのまま読者に対する問いかけにもなっている。(酒田 浩)

 

MVMR:吉田真幸さん(武田薬品:那覇営業所)=写真左から4人目
準優勝:上杉航大さん(サノフィ:糖尿病・循環器ビジネスユニット千葉営業所)=同右から4人目
優秀賞:写真左から順に岩堀光利さん(サノフィ:糖尿病・循環器ビジネスユニット埼玉第3営業所)、大谷麻衣さん(フェリング・ファーマ:西日本第1営業部)、濱島知博さん(グラクソ・スミスクライン:東京第3リージョン営業統括専門領域営業(山梨エリア))、写真右から順に石丸健太郎さん(協和発酵キリン:千葉第1営業所)、鈴木草介さん(大日本住友製薬:秋田営業所)、歌川毅さん(中外製薬:東京第二がん専門二室)

 

 

 

コンテストは医療環境が大きく変化する中で、医療への貢献を目指し、日々工夫しながら活動しているMRにスポットライトを当て、MR活動に対する正しい理解を促すことなどが目的。今回は14年、15年の開催に続き3回目。

 

決選では、▽今回のテーマに対し、3年後の地域医療の姿を予測したうえで、MRがいかなる役割が果たし、地域医療に貢献するのかについてのプレゼン(3分)▽与えられた課題に対する医師、薬剤師とのロールプレイ(3分)――を実施。それぞれについて知識、スキル、倫理、印象の観点から、医師、薬剤師、看護師、患者ら10人の審査委員(委員長:亀井淳三・星薬科大学薬物治療学教室教授、イノベーションセンター長)と会場の投票で評価し、MVMRなどの受賞者を決定した(決選は審査委員、来場者にもMRの所属会社名を伏せたまま行われた)。

 

 

共通する地域医療連携支援
医療者個々の課題を共に解決

 

プレゼンでは、今後求められる「地域完結型医療」に向けて、地域の医療従事者ら関係者の関係づくりを支援し、新たな治療体制の構築の一端を担うことを役割とする意見で、ほぼ共通していた。

 

地域医療連携で、治療の流れが変わり、それに伴い患者の動き、薬剤の使われ方も異なってくる。医療者、患者に不安のない体制をつくること、そしてその中で医薬品の適正使用を確保することを課題と捉えていることがうかがえる。それは医療ICTネットが発達しても解決はしない。医療連携は、地域関係者の役割、関係性など、人に拠るところも大きいからだ。一歩を踏み出せない医療従事者も少なくない。そこに8人は、AI、ICTでは解決しえない、MRならではの役割を見出したようだ。医療従事者が抱える個々の課題を共に解決する姿勢が見て取れた。

 

その中でMVMRに輝いた吉田さんが、他の7人と異なった点がある。吉田さんがMRに求められることに挙げたのは「地域へのLOVE」。「(担当地域を)どれくらい良くしたいか、その気持ちの強さ」だと主張した。他の7人も同様の気持ちかもしれないが、吉田さんは、医療の世界のみを眺めず、地域住民の生活を眺め、地域の様々な人たちとの交流から、地域に必要なことを見出す必要性を強調した。「地域包括ケアシステム」につながる発想といえる。

 

 

情報を提供する姿勢が強すぎた面も

 

左:医師役の横浜内科学会・小野会長
右:武田薬品の吉田さん

続いて行われたロールプレイは、当日に共通課題を示し、対応ぶりが審査された。課題は、薬剤師からの妊婦への薬剤投与についての相談。エビデンスは他社品にあるが、医師は効果の面から自社品の処方意向。しかし安全性が確立されていない。MRは添付文書、IF通りに回答せざるを得ない状況。それだけならネットで調べられる。あえてMRに相談したところがポイントである。

 

それに対し、患者が置かれた状況、処方意向の背景を含め医師と当該症例について相談して検討したいとの対応をしたのが8人のうち半数。安全性を懸念し他剤を勧めたケースも。吉田さんは、薬物の胎盤通過性にも触れて説明した。センシティブな課題だけに、置かれた状況について情報収集して対応しようという、慎重な姿勢が目立った。

 

その中から吉田さんと上杉航大さん(サノフィ)が決勝に進み、医師相手のロールプレイに臨んだ。課題は、医局説明会で競合品との比較が尋ねられるも答えにくい内容ゆえ具体的に示せず、不満を抱えた医師に面会を求められたというもの。医師役は横浜内科学会の小野容明会長が務めた。より安全に投与したいという観点から、副作用はどうか、高齢者ではどうか、高血圧患者ではどうかなど、矢継ぎ早に質問。上杉さんは何度か詰まってしまい、吉田さんのそつのなさが際立った。

 

吉田さんに軍配は上がった。とはいえ両者とも、情報を提供しようと焦った姿がうかがえた。会場でもあった指摘だが、質問に答えるだけでなく、なぜその質問をされているのかを尋ね、医師が抱える課題を吸い上げる姿勢がもっとあれば面談は深まったかもしれない。

 

この姿勢は、同日にコンテストに先立って行われた講演で、東京医療センターの総合内科医、尾藤誠司氏が指摘したこととも共通している。同氏は、医師と患者の関係について「課題→目標設定→励まし」がありがちだがAIでもできるとし、むしろ医師らは「患者に対し無知な存在」として、患者から得られた情報を含めて対話し、共同作業する姿勢が大切と指摘した。提供した情報、意思決定が、患者などそれを受けた側に不満、不安を生じさせたり、その人の最善ではないケースもあったりするからだという。

 

MRと医療者の関係にも当てはめることができる。情報を提供する側、受ける側だけの関係に陥らず、互いの情報を共有する中で、新しい解を生み出す。この視点にAI時代のMR像のヒントがあると思われる。

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