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日医・横倉会長 超高額医療「主治医以外が必要性判断する仕組みの検討を」

公開日時 2018/05/07 03:51

日本医師会の横倉義武会長は5月1日の定例会見で、欧米で承認されたCAR-T療法に要する費用が1回で4000万円超となることを引き合いに、「審議会で、担当の医師以外の第三者の目を通すことで、本当に必要かどうか判断をしていく仕組みがあってもいいのではないか」との考えを示した。財務省主計局が提案する「高度・高額な医療技術や医薬品」と保険財政のバランスに一石を投じたもの。さらに財務省が4月25日の財政審財政制度分科会に提案した医療費の給付率の自動調整案について、「財務省や財政審の提案はあまりにも無責任」と反発。欧米諸国に比べて国民の負担率が低いことなどから、「患者だけでなく、社会全体の負担率を調整することでカバーすべき」と主張した。

抗がん剤・オプジーボを契機に明るみとなった高額薬剤問題だが、遺伝子治療など、革新的技術の登場で新たな局面を迎えることになる。ノバルティスファーマのCAR-T療法は、日本もすでに申請段階にある。政府部内では、CAR-T療法に代表される医療技術のイノベーションと保険財政のバランスについて喫緊の課題と位置づけており、厚労省の社保審医療保険部会や経済財政諮問会議でも議論となっている。なかでも財務省は2025年度以降の社会環境の変化と社会保障制度の持続性に強い問題意識を示しており、特に「高度・高額な医療技術や医薬品」について、一歩踏み込んだ改革案を提示したところ。これに対し日本医師会の横倉会長は5月1日の会見でクギを刺す場面が見られた。

◎横倉日医会長「新しい医療技術は有効性・安全性が確認され次第、迅速に保険収載を」


横倉会長は会見で、「費用対効果評価は保険償還の可否に用いるべきではない」と反発。「新しい医療技術は、有効性・安全性が確認され次第、迅速に保険収載されることが重要だ。有効性・安全性が確認できているにもかかわらず、価格が高いという理由で保険償還の対象外に置かれ続けるということであれば、国民が医療技術の革新を受け入れられないという不幸な事態になる」と危機感を示した。希少疾患などで、対象患者が少なく、高額になる場合でも、「有効性・安全性が確立されたものは、保険診療の対象とすべき」との考えを示した。

また、厚労省が生活習慣病治療薬や抗がん剤などについて最適使用推進ガイドラインを策定していることに触れ、「医療側も患者の症状や特性に応じてコスト意識を持った上で、まずはプロフェッショナル・オートノミーに委ねるべき」との考えを表明した。その上で、さらに極めて高額な医療を行う場合に、「更生医療給付のように、医学的・社会的観点も踏まえた意見を聞くことも必要ではないか」との考えを示した。更生医療の給付に際しては、主治医の意見書を添付して患者が市町村に申請。市町村役場で身体障害者更生相談所の判定に基づく審査を行い、必要性が認められた場合に患者が給付を受けられる流れとなっている。

◎財務省の給付率自動調整案に反発

横倉会長はこのほか、財務省が財政制度等審議会に示した医療保険の給付率を自動的に調整する仕組みの導入について、「経済成長ができなかった場合、給付率のみで、患者に負担を押し付けようとしている」と反発。一方で、金融資産を考慮した負担については、「日本医師会は所得や金融資産の多寡に応じた応能負担を行うべきと主張してきた。低所得者に十分配慮した上で、金融状況を考慮した負担の在り方についてきめ細やかな対応が必要だ」と述べた。

一方で、社会全体で支えるための働き方改革や一億総活躍の実現により、健康な高齢者が活躍社会を作り、支え手を増やすことの重要性を強調した。健康寿命の延伸に向け、日本医師会として、日本商工会議所や保険者、自治体らと「日本健康会議」の取り組みを進めていることを紹介。2018年度に都道府県が国保の保険者となったことなどから、連絡協議会の開催などを通じ、都道府県へと取り組みを波及させることに意欲をみせた。横倉会長は、「日本健康会議の取り組みを国民運動にしていくことが重要。大手企業では徹底され始めている中で、中小企業にいかに広げていくか。協会けんぽの取り組みを後押ししたい」と述べた。すでに、宮城県や静岡県では、都道府県版の健康会議が設置されている。横倉会長は、「先に医療費削減ありき、ではなく健康増進を目指した施策の結果として、医療費が削減されることを地域で進めていくことが重要」と強調した。


◎地域別診療報酬「地域偏在加速で医療の質低下を招く」


このほか、地域別診療報酬の活用について、「県境での患者の行動に変化をもたらし、それに伴う医療従事者の移動により、地域による偏在が加速することで医療の質低下を招く恐れがある」と指摘した。

また、かかりつけ医やかかりつけ薬剤師・薬局以外受診時の定額負担の導入について、「かかりつけ医の普及に水を差すことになる」と反発した。一方で、かかりつけ薬剤師・薬局については、「まず薬局の在り方自体を議論することが必要」と指摘。「国民の保険料、税金が原資となっている社会保障費が社会保障の再生産に回るのではなく、株主に還元されるのは大きな問題」と述べ、医薬品医療機器等法(薬機法)改正議論の中で、社会保障財源で事業を行う非営利の“薬局法人”の在り方や、保険薬局の収支決算の公開などを検討すべきと主張した。

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