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厚労省・17年度広告活動監視モニター 不適切疑い5か月間で67件 企業・業界の自主規制「必ずしも十分ではない」

公開日時 2018/05/14 03:52

厚生労働省医薬・生活衛生局の監視指導・麻薬対策課は5月11日、「2017年度医療用医薬品の広告活動監視モニター事業」の最終報告を公表し、薬剤師・DI担当者などモニターを通じて、疑義報告があったMRやMSLの広告・宣伝活動が5か月間で延べ52製品、違反疑い項目が延べ67件あったと公表した。医局説明会やインターネット上の会員サイトなど“クローズドな場”で、海外データや社外秘データなどを活用する例が複数報告され、資料を回収する事例も散見された。同省は、このような事例が17年度に続き報告されたことを問題視した。一方で、製品情報概要など資材でも不適切事例が報告されたことから、「企業あるいは業界による自主規制は必ずしも十分ではない」と指摘した。同省は、「医療用医薬品の販売情報提供活動に関するガイドライン」の策定を進め、今夏にも取りまとめる方針。ガイドラインでは、資材の使用実態などの点検、監督(モニタリング)を社内での義務化などを盛り込む方向で検討が進められている(関連記事はこちら)。

広告活動監視モニター事業は、MR、MSLなどによる広告・宣伝活動を対象としたモニター調査、医療関係者向けの専門誌・学会誌、製薬企業ホームページ、医療関係者向け情報サイトを対象に調査を実施。調査実施期間は、2017年度中の5か月間。企業の情報提供が薬価収載の時期に活発化し、内容が変化すると指摘。16年度の3か月間から期間を延長したことで、多様な広告活動を監視することが可能になったとしている。

◎不適切事例 製品説明会が最多 営業所・支店関与の疑いも


5か月間の調査で、不適切事例が延べ52製品、違反疑い項目が延べ67件あった(中間報告:関連記事はこちら)。健康被害への重大性・悪質性などの観点から、直ちに取り締まりを実施する明白な事例はなかったが、同省は当該企業に対して口頭での指導などを行っている。違反が疑われる事例で最も多かったのは、「事実誤認の恐れのある表現を用いた」(41.8%、28件)。「事実誤認のあるデータ加工を行った」(14.9%、10件)、「未承認の効能効果や用法用量を示した」(11.9%。8件)が次いだ。

疑義報告が行われた医薬品の情報入手方法は、「企業の製品説明会」が34.6%(18例)で最多。「MRなど製薬企業担当者の口頭説明」が30.8%(16例)、「製薬企業担当者の印刷物提供」が28.8%(15例)あった。これらの不適切事例の中には、類似の報告が複数寄せられたケースもあり、「営業所あるいは支店単位での関与が疑われる事案が存在していた」とした。このほか、「企業のホームページ」も15.4%(8例)あり、登録した医療関係者のみが閲覧できるページに、適切性に疑いのある資料が掲載されたケースも散見された。

◎MRの口頭説明 海外での効能効果、安全性軽視の事例も


MRによる口頭説明では、承認範囲外の効能効果、用法用量をほのめかす説明や、効能効果や安全性を誇大に見せる説明などが指摘された。承認範囲外の情報としては、海外での効能効果の紹介、将来的な適応拡大の示唆や、レセプト審査で査定されにくい用法用量の紹介などがあがった。

具体的な事例としては、便秘関連治療薬でMRが「将来的に既存薬剤に置き換わる製品であり、メーカーとしては便秘症治療薬の第一選択薬になると考えている」、「海外での適応は日本よりも広い」といった趣旨の発言をするなど、承認外の効能効果をほのめかす発言をしたことなどをあげた。なお、この事例については、他のモニター医療機関でも同様の説明がなされており、「広範囲での活動が疑われる」としている。

エビデンスがないにもかかわらず、局所麻酔薬の特性について「他剤と比べて痛みが少ないと評判だ」、「肌に優しい製剤で、かぶれも他の製剤よりも少ないと言われている」など、伝聞調で他社製品を誹謗し、優位性を主張した事例もあった。安全性を軽視した事例もあがった。潰瘍性大腸炎治療薬では、製品説明会で副作用の発現頻度について、盲検性の点で医師に開示しなかったことから有害事象の対象外として、副作用の発生頻度が低いとの印象を受ける説明を行っていた。

◎製品説明会では「参加者からの要望あれば資料配布を」


報告書では特に、医局説明会などで資料を配布せず、“証拠を残さない”形での情報提供を「課題」と指摘。「参加者からの要求があれば資料配付に応じることなど、一定のルールを設けることを検討することが必要ではないか」と指摘した。なお、4月11日に開かれた厚生科学審議会医薬品医療機器制度部会で、厚労省側は日本製薬工業協会(製薬協)に対応を要請していることを明らかにしている。

◎“ヒヤリハット事例”として情報共有 公的な報告制度の必要性も


事業を通じて集積された事例については「企業からの情報提供に関する“ヒヤリハット事例”」として、「製薬企業が販売促進活動に際し、どのように情報を加工するか学ぶための良い材料」と評した。不適切事例を医師、薬剤師など医療従事者で広く共有することで、「注意深く客観的に評価する視点」を身に付けてもらうことを狙う。モニター医療機関の拡充に加え、中長期的には「広く一般の医療関係者が常時、不適切事例を報告できる公的な報告制度が必要」と言及した。

厚労省医薬・生活衛生局監視指導・麻薬対策課の磯部総一郎課長は本誌に対し、「パンフレットなど文書だけでなく、製品説明会など個別事例にも課題がある」と述べ、個別事例への対応の必要性を指摘した。ガイドライン策定に向けた検討を「着々と進めている」として、医薬品の適正使用をさらに推進することに意欲をみせた。

なお、厚労省が4月11日、厚生科学審議会医薬品医療機器制度部会に示したガイドラインの項目(案)は、①基本的考え方(適用範囲等、情報提供活動の原則)、②医薬品製造販売業者の責務(経営者の責任、社内体制の整備、資材・情報提供活動の適切性の確保、評価・教育等の取り組み、監督の実施、記録の作成・管理、問題が生じたときの対応、業務委託)、③販売情報提供活動に携わる者の責務(ガイドラインなどの遵守、自己研鑽の努力、情報提供活動の際の留意点、不適切な資料の使用禁止)、④その他(GLに記載のないことへの対応、業界における対応、情報提供の求めなどへの対応、他の法令等への対応)-。

今回のモニター事業でも、営業所や支店の関与が疑われる事例があるなど、MR個人にとどまらず、企業としての自浄作用を高め、ガバナンスを強固にする必要性も浮き彫りになっている。こうした背景から、企業内で資材だけでなく、MRの使用実態まで含めた点検・監督(モニタリング)の必要性が指摘されている。

一方、日本製薬工業協会(製薬協)は2017年に、16年度モニター事業の結果を踏まえ、会員各社に対して、「製薬協コードの遵守の徹底を要請」する通知を発出し、社内での精査、対策を求めている。17年度にも同様の結果がみられたことから、さらに強く要請するなどの対応を取ると見られている。

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