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支払基金・城審議役 薬価抜本改革の調整過程で製薬業界に苦言 毎年改定に備えよ!

公開日時 2018/08/03 03:52

社会保険診療報酬支払基金の城克文審議役は8月2日、医薬経済社主催のセミナーで講演し、18年4月実施の薬価制度抜本改革の調整過程を振り返り、製薬業界の準備不足・覚悟不足を垣間見る部分があったと苦言を呈した。そのうえで、製薬産業として直近の自社の利益と、製薬産業としての産業像を峻別することの必要性を説き、「業界の半分は捨てていく覚悟を持ち、かつ全社が自社だけは生き残れるビジョン」を描くことの必要性を指摘した。

16年末に4大臣合意した「薬価制度抜本改革に向けた基本方針」を端緒に18年4月に薬価制度抜本改革が断行された。改革の内容は、新薬創出等加算の抜本的見直しや長期収載品の引下げなど、製薬業界の根幹を揺るがすものとなった。この過程で、製薬業界は一貫して断固反対の立場を貫いた。城審議役は、この間の調整過程を振り返り、政府が基本方針を定め、「抜本改革をやる大前提の中で、見直し自体を止めるということは交渉にならない」と指摘した。

城審議役は、新薬創出等加算、長期収載品の見直しが迫られるなかで、多次元的交渉カードが不足していたのではないかと疑義を示し、本来であれば議論の潮目を見極めるなど、業界としての「タマ(戦術)」の準備不足があったのではないかと振り返った。

◎短期的に負けでも将来に大化けする提案はできる


結果的に製薬業界は、新薬創出等加算も長期収載品も見直しが避けられない、いわば最終局面を迎えた時点でも、現状維持の姿勢を崩さなかったが、城審議役は実はそのタイミングに交渉の「最後の機会」があったのではないかと指摘。革新的新薬への予算措置など、他の交渉カードを切ることもできたのでは、との見解を示した。政府は単年度予算を重視するが、企業は将来的な発展分野へ投資するなど、「関心軸が違う」と指摘。政府に対して単線的な主張を繰り返すのではなく、「予算を組めるが、将来的に産業育成になる」ような提案を業界から政府へと提案すべきとの考えを示した。短期的には“負け”に映ったとしても、将来的に“大化け”し得る提案は製薬産業だからこそできるとの見方を示した。

今後は、19年10月に消費増税、20年度の通常改定、21年度から薬価毎年改定を控え、薬価の改定が連続する。こうしたなかで城審議役は、一本槍の主張ではなく、「何が実現しないのか、全滅しても何を取り返すのか考えないといけないくらい危ない時期に来ている」と指摘し、いまから業界が一枚岩となって対策を取ることが必要との考えを示した。

◎将来像と短期的な自社経営との違い峻別を

そのためには、「製薬産業全体の将来像の意義と目先の自社経営との違いを再認識すべき」と指摘した。18年度の薬価制度改革の議論のなかでも、革新的新薬ビジネスモデルを目指す企業と長期収載品に重きを置く企業のはざまで、現状維持を選択。新薬に重きを置くなど、思い切ったビジョンを業界として打ち出すことはできなかった。城審議役は、「自社にとって不利でも、業界内にできるということを徹底できないと腰抜けのビジョンになる」と指摘し、革新的な将来像の策定を求めた。個社の経営でも、「政府の言った通りで伸びる産業はない」と強調した。

また交渉に際しては、ひとつの単線的な交渉戦略ではなく、複数の選択肢とプランを用意し、交渉に当たることの必要性も強調。そのためには、「業界全体で英知を結集して考えることが必要だ」と強調。役員や事務局、交渉担当者だけでなく、業界が一枚岩となって取り組むことが必要との考えを示した。

業界活動とはいわば「市場将来性獲得同盟」ともいえるような、患者利益などの企業理念実現を目指すものだとのメッセージを、業界関係者に送った。
 

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