キョーリン製薬ホールディングスの穂川稔社長は11月６日、東京都内で開いた2019年３月期（18年度）第２四半期（４～９月）の決算説明会で、16年度に特許切れした気管支喘息薬キプレスによる“パテントクリフ”からの脱却に自信をみせた。キプレス成人製剤の後発品比率が18年３月以降75％と横ばいになる一方で、新薬群の伸長やアレルギー性鼻炎薬ナゾネックスの国内販売権の取得に加え、過活動膀胱薬ベオーバの下期の発売、自社創製の経口キノロン系合成抗菌薬KRP-AM1977Xの「19年度の早い時期での上市」（穂川社長）にメドがたったことが、自信の背景にある。

穂川社長は、「19年３月期はキプレスのパテントクリフからの脱却の年と位置づけている」とし、「第２四半期は、その転換を示した決算になった」と述べた。

上期の医療用医薬品事業の売上は476億円（前年同期比0.8％減）、連結の営業利益は29億円（97.6％増）だった。喘息薬フルティフォームや抗アレルギー薬デザレックスといった新薬群は伸長し、ナゾネックスも増収に寄与したが、キプレスをはじめとする長期収載品の減収や薬価改定影響を吸収できなかった。大幅増益は研究開発費の下期への期づれが主因となる。

■新薬加算外れたフルティフォーム　数量ベースで18％伸長、12％増収

通期の医療用医薬品事業は売上1084億円（3.5％増）を目指す。連結の営業利益は86億円（2.5％減）と予測した。新薬群の通期売上目標は、フルティフォームが123億円（4.1％増）、デザレックスが81億円（65.3％増）、５月に販売権を取得したナゾネックスが101億円――で、いずれも期初計画から変更はない。

フルティフォームは18年度薬価改定で新薬創出等加算のルール見直しにより同加算から外れ、5.8％の薬価引下げを受けたが、上期に数量ベースで18％伸び、上期売上は61億円（12.4％増）だった。中枢から末梢気道まで肺全体への良好な薬剤分布が期待できるとの特長のいっそうの市場浸透に取り組む。

16年11月に発売したデザレックスは耳鼻科における処方獲得率で１位を目指す。現在は２位。抗ヒスタミン薬市場は特許切れ製品のウェートが大きく、18年度上期で市場は前年同期に比べ11％縮小したが、数量ベースでは９％伸びた。

穂川社長は、「成長している市場に、特色ある新薬の魅力を訴求していく。デザレックスは当初、100億円ほどの製品と思っていたが、200億円も十分に手が届く。私個人としては200億円以上製品になるよう取り組みたい」と語った。高い効果、眠気の少なさ、いつ服用しても良い使いやすさを訴求していく。

ナゾネックスは、デザレックス、キプレス及びそのオーソライズドジェネリックとともに総合的な情報提供活動を行って相乗効果を発揮し、耳鼻科領域でのシェア拡大を目指す。

アステラス製薬がファーストインクラス薬として発売したβ3受容体作動薬（過活動膀胱薬）ベタニスに続く２番手として、杏林製薬は同作動薬ベオーバを下期に発売する予定。ベオーバは９月に承認を取得し、11月に薬価収載される見通しになっている。杏林が販売中の過活動膀胱に用いる抗コリン薬ウリトスとは作用機序が異なるため、穂川社長は両剤の間でカニバリゼーションは起こさないとの認識を示した。ベオーバは過活動膀胱症状全般への有効性に加え、抗コリン薬特有の口渇といった副作用が軽減され、心血管系への影響や薬物相互作用が少ないとの特長がある。

【連結実績 （前年同期比）　18年度通期予想（前年同期比）】　
売上高　503億6000万円（0.8％減）　1144億円（3.4％増）
営業利益　28億5200万円（97.6％増）　86億円（2.5％減）
親会社帰属純利益　22億1700万円（78.8％増）　66億円（0.4％増）

【主要製品売上高（前年同期実績）　18年度通期予想、億円】
フルティフォーム 61（54） 123
ウリトス 35（36） 68
デザレックス 28（9） 81
キプレス 62（90） 132
ペンタサ 71（80） 145
ムコダイン 31（39） 72
ナゾネックス　13（-） 101
キプレスＡＧ　53（50） 98
ジェネリック計 136（130） 274