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NPhA・南野会長 チェーン薬局への規制強化を牽制「公正適正な議論を」 薬機法改正議論に一石

公開日時 2018/11/08 03:52

薬局経営のガバナンス強化が次期医薬品医療機器等法(薬機法)改正の焦点のひとつとなるなかで、日本保険薬局協会(NPhA)の南野利久会長はきょう11月8日に開かれる厚生科学審議会医薬品医療機器制度部会を前に、「単に複数の薬局を経営しているというだけで規制を強化することのないよう、公正適正な議論をお願いしたい」と本誌にコメントを寄せた。健康保険法に基づく監査対象は個人薬局が多い実態を指摘し、規模に応じた議論を牽制した。C型肝炎治療薬・ハーボニー配合錠の偽造品問題や、調剤報酬の付け替え請求などに端を発し、チェーン薬局でのガバナンスの在り方が問題視されていた。

制度部会ではこれまでに薬局のガバナンスの必要性を議論してきた(関連記事)。特にチェーン薬局で役員などが過度に利益を追求し、その結果として本来果たすべき薬剤師の職能を歪めていたことを問題視。薬局のチェーン化が進む中で、1人の薬局開設者のもとにエリアを束ねるエリアマネジャーなどを介し、複数の管理薬剤師が存在するケースも増えてきた現状もある。現行の薬機法では薬局開設者と薬局管理者の1対1の関係が想定されているが、厚労省は、中間にエリアマネジャーなどが存在し、「管理者と開設者の隔たりが大きい」ために十分にガバナンスが機能しなかったことを“一因”として、薬機法違反が生じたと指摘した。そのうえで、経営者や薬事に関する業務に責任を要する役員の責務を明確化することで、ガバナンスを強化することを提案している。

業界代表である日本薬剤師会は、“多店舗展開を行っている薬局”について、「昨今、開設者及び管理者に求められる責務が果たされず、薬局のガバナンスが機能していないことが原因と考えざるを得ない事案が目立っている」と指摘し、開設者・管理者の責務明確化や罰則強化などを要望している。このほか、部会では、「経営組織や企業経営の在り方そのものに大きな問題がある」などの指摘もあがっていた。


◎日薬の主張に反論「小さな組織、個人薬局で監査対象多く」 医療機関も同様

NPhAはきょう8日の制度部会の開催にあわせて、ポジションペーパーを公表し、日薬の主張に「仮説とは異なる事実が示されている」と反論した。健康保険法に基づく指導・監査に関するデータによると、2014~16年度の3年間で、監査対象となった薬局のうち、30店舗以上の大手チェーン薬局はゼロだったことを示した。

監査対象となった薬局は14年度で7件(このうち、複数の店舗を開設している保険薬局は3件)、15年度で8件(同・4件)、16年度で7件(同・5件)だった。一方で、16年度に不正請求などで保険医療機関が取り消された27件のうち、調剤は1件のみ。保険医療機関の指定を取り消された医療機関は、「大組織よりも小さな組織、個人が多く、経営者と事業者の一体化が深刻な状況を招く場合も少なくない」と指摘した。

NPhAの南野会長は、「多くの企業が組織のコンプライアンス確保のため様々な方策を講じ、ガバナンス強化を図っている」とコメント。組織内に様々な役割を果たす人がいることで、それぞれが牽制しながらコンプライアンスを確認する体制が構築されており、内部通報・告発などで行政当局に届出が行われているとした。また企業全体でナレッジとして共有されるほか、継続的なコンプライアンス教育なども行われている。南野会長は、「会社法等企業法制、公益通報者保護法等順守のための具体的な組織整備やその運営強化に取り組んでいる」と強調した。

そのうえで、「このような活動や組織の実態を踏まえ、またこれまでの厚生労働省の監査対象は個人薬局が多いという実態を踏まえ、単に複数の薬局を経営しているというだけで規制を強化することのないよう、公正適正な議論をお願いしたい」とコメントした。

◎ICT活用で薬局の機能分化を


このほか、ポジショニングペーパーでは、ICT技術の積極的活用などで、薬局の機能分化を促進する必要性も指摘。「時代が求める機能を発揮できるよう、薬機法等で規定する薬局の構造規制、事業規制その他の規制の見直しについての議論をお願いしたい」としている。

◎厚労省 薬事業務の責任持つ役員の責務明確化へ


厚労省はきょうの制度部会に、製薬企業などと同様、法令遵守のための体制整備などを法律上に規定することを提案する。具体的には、薬事に関する業務への責任をもつ役員の責務を明確化。薬機法違反があった場合などには役員の変更命令などが行えることを検討する。薬局管理者が経営陣に必要な意見を述べ、薬局開設者がその意見を尊重して必要な措置を講じる体制整備も求める。このなかでは、内部通報なども尊重する考え。開設者と薬局管理者の中間に位置するエリアマネジャーなどの位置づけや、責任範囲も明確化も検討する。

現行制度では、薬局経営のガバナンスをめぐっては現状、問題の起きた薬局が所在する自治体が監督責任を持っており、対応を進めている。厚労省は、各自治体が独自の対応を行うことは、「事業者の負担が大きく、逆に速やかな改善を妨げるリスクがある」と指摘。同一の開設者が複数の自治体で開設許可がある場合に、国や自治や胃は相互に密接な連携を行うための方策を整理することも提案する。

◎南野会長コメント


ガバナンスに関する議論については、多くの企業が組織のコンプライアンス確保のため様々な方策を講じ、ガバナンス強化を図っている。また会社法等企業法制、公益通報者保護法等順守のための具体的な組織整備やその運営強化に取り組んでいる。このような活動や組織の実態を踏まえ、またこれまでの厚生労働省の監査対象が個人薬局が多いという実態を踏まえ、単に複数の薬局を経営しているというだけで規制を強化することのないよう公正適正な議論をお願いしたい。

 

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