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ネスプのバイオセイム登場で透析市場はさらなる競争へ バイオセイムは0.7掛けに

公開日時 2019/03/28 03:52

 いわゆる“バイオセイム”の登場で、透析市場の競争は新たな展開を迎える-。中医協薬価専門部会・総会は3月27日、有効成分や製法が先発品と同一であるバイオセイムの薬価算定を暫定的にバイオシミラー(バイオ後続品)と同様、0.7掛けとすることを了承した。協和発酵キリンの100%子会社である協和キリンフロンティアが2018年8月、協和発酵キリンのネスプのオーソライズドジェネリック(AG)として、「ダルベポエチン アルファ注シリンジ「KKF」」の販売承認を取得しており、6月にも薬価追補収載が見込まれる。透析医療の診療報酬点数は包括化されているだけに、シェア獲得に薬価が大きく影響する。それだけに、同剤の価格設定が注目される。

今回の中医協で議論の俎上にあがったのは、バイオ医薬品として初のAGの価格算定だ。後発品として“0.5掛け”とするのか、バイオシミラー(バイオ後続品)と同様に“0.7掛け”とするか―。承認申請を行った協和キリンフロンティアは臨床試験を行っておらず、後発品として申請し、承認された。

多くの製薬企業は薬価をいかに高く設定するかに身を削る。しかし、今回の議論は、その対象が透析市場ということで、少々様相が異なった。

厚生労働省はこの日の中医協で、「適正な競争環境を維持する」ことの必要性を繰り返し強調した。今回は透析市場に初のバイオセイムが登場するという特殊性を考えると、その価格設定がその後の薬剤の市場占有率を決める可能性が高い。競合薬も多いこの市場だけに、後発品と同じ0.5掛けとなれば、一気にバイオセイムへの切り替えが進み、さらに競合薬の市場をも凌駕する可能性も否定できない。さらに言えば、バイオセイムを製造できる企業が現時点で限定されるため、後続となるバイオシミラーの参入そのものを阻む可能性もある。

「後発バイオ医薬品の価格設定でバイオシミラーの開発が阻害される」―。厚労省保険局医療課の田宮憲一薬剤管理官は懸念そのままを表明した。その結果、中医協での結論は、暫定的という表現を用いながらも、先発品の“0.7掛け”とすることが了承された。

【FOCUS バイオセイムの薬価論議から見えた新たな市場原理】

「ダルベポエチン アルファ注シリンジ「KKF」」は、製造販売承認を協和キリンフロンティアが取得。そのうえで、製造を親会社である協和発酵キリンが受託する。製造工場は、原薬が協和発酵キリン工場、製剤は委託先工場であることも同様だ。生物学的にほぼ同等な“バイオセイム”を製造することになる。2005年の薬事法改正で、従来の製造業から製造販売行為を分離することを認めており、現行の医薬品医療機器等法(薬機法)の範囲内ではあるものの、子会社が親会社に製造を委託するという滅多にない体制を敷く。販売は協和発酵キリンと協和キリンフロンティアでコプロを行う。具体的には安全性管理を協和キリンフロンティアが担う一方で、情報提供・収集は両社で行う。

ネスプの年商は537億円(18年12月期)。協和発酵キリンのトップ製品だ。協和発酵キリンはネスプをヒット商品に成長させた長年の経験を有し、腎領域専門のMR部隊を持つ。

通常では、薬価の引下げは先発メーカーに大打撃を与える可能性が高い。しかし、透析市場は“低価格”こそが市場占有の武器となる特殊事情もある。長い歴史の中で、頻回の透析治療が医療費を増大させていることが問題視され、透析医療をめぐる診療報酬点数は度重なる引下げが行われてきた。直近の2018年度改定でも、大規模施設を中心に血液透析の診療報酬点数を引き下げた。包括点数であるだけに、低薬価のインセンティブが他市場以上に働きやすいのだ。

◎産業振興に少なからず影響するとの声も


特に、ネスプについては、18年度薬価改定で新薬創出等加算を取得している。要件から平均乖離率が外れ、希少疾病の「骨髄異形成症候群に伴う貧血」の適応を取得していたためだ。バイオセイムの薬価が引き下がるほど医療機関経営の観点からはメリットは大きくなる。医療従事者のなかにはバイオシミラーに懐疑的な声も依然として少なくないが、バイオセイムであれば敷居は低くなる。医療機関側にとってバイオセイムを採用するメリットが揃っている。そのため、先発品からの切り替えにとどまらず、競合品のシェアをも奪い、一気に市場占有率を拡大する可能性が高い。加えて、競合メーカーの参入意欲を削ぎ、今後のバイオシミラーの産業振興にも少なからず影響を及ぼすとの声も聞かれる。誤解を恐れずに言えば、バイオセイムを後発品として承認を取得すること、そのものが製品戦略にも映る。

18年9月にはJCRファーマと三和化学研究所がネスプのバイオシミラーを承認申請した。さらに、経口薬である低酸素誘導因子(HIF)活性化薬も臨床開発段階後期に複数製品がある。透析市場は薬価を含めた新たな競争時代へと突入する。(望月英梨) 

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