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【AHA2013速報】CORAL 腎狭窄に対する腎動脈ステント 薬物療法上回る治療効果示せず

公開日時 2013/11/20 04:50

動脈硬化性の腎狭窄に対して、腎動脈ステントによる血行再建術を行っても、薬物療法を超える腎および心血管イベント予防効果は得られないことが、国際多施設共同オープンラベルランダム化比較試験「CORAL(Cardiovascular Outcomes in Renal Atherosclerotic Lesions)」の結果から示された。米国・ダラスで11月16日から開催されている米国心臓協会年次集会(AHA2013)で11月18日開かれたセッション「Late Breaking Clinical Trials(LBCT):Prevention :Therapeutic Advances in Coronary and Peripheral Vascular Disease」で、米国University of ToledoのChristopher J. Cooper氏 が報告した。


高齢の慢性腎臓病(CKD)患者にみられる動脈硬化性腎動脈狭窄症は、動脈硬化病変を伴うケースが多い。そのため、腎機能障害進展のリスクとなるだけでなく、脳梗塞、虚血性心疾患や閉塞性動脈硬化症などの心血管疾患(CVD)の発生リスクが高く、結果として生命予後が不良であることが知られている。降圧薬、脂質降下薬や糖尿病治療薬、抗血小板薬などの薬物療法に加え、腎動脈ステントによる血行再建術も治療選択肢として注目されている。腎動脈ステントによる血行再建術は、いくつかのランダム化比較試験で有効性が示されているものの、議論があるのが現状で、同試験は有効性・安全性を検討する目的で実施された。


試験の対象は、高血圧で2剤以上の降圧薬を服用しているか、ステージ3以上のCKD で、腎動脈に動脈硬化性の狭窄がある患者947例。狭窄は、▽血管造影で60%以上100%未満▽Duplex超音波法で収縮期速度が300cm/sec▽コアラボでの磁気共鳴血管画像(MRA)▽コアラボでのCT血管造影(CTA)――のいずれかの方法で認められたものとした。


全例に降圧療法、糖尿病治療、脂質管理、抗血小板療法などの薬物療法を行った上で、ステント+薬物療法群467例、薬物療法単独群480例に無作為に割付た。主要評価項目は、心血管死+腎疾患による死亡+脳卒中+心筋梗塞(MI)+心不全による入院+進行性腎不全+腎代替療法の複合エンドポイントとした。解析対象はステント+薬物療法群459例、薬物療法単独群472例だった。


患者背景は、ステント+薬物療法群、薬物療法単独群でそれぞれ年齢69.3±9.4歳、69.0±9.0歳、収縮期血圧値が149±23.2mmHg、150.4±23.0mmHg、推定GFRが58.0±23.4ml/min、57.4±21.7ml/minだった。また血管造影による狭窄度(コアラボ)67.3±11.4%、66.9±11.9%、腎動脈の全虚血は20.0%、16.2%で、腎狭窄の重症度はFDAによる腎動脈ステント認可の根拠となった3試験(ASPIRE2、RENNAISSANCE、HERCULES)に近いものだった。


主要評価項目の発生率は、ステント+薬物療法群35.1%、薬物療法単独群35.8%で、ハザード比(HR)は0.94で有意差は認められなかった(p=0.58)。副次評価項目の心血管+腎死亡、脳卒中、MI、心不全、腎置換術にも有意差は認められなかった。


狭窄はステント治療により、68±11%から16±8%にまで有意に低下していた(p<0.001)。また、ランダム化後の収縮期血圧値は、ステント+薬物療法群で約2.5mmHg低値で推移し、両群に有意差が認められたが(p=0.03)、イベント抑制にはつながらなかった。


ステント手技による周術期合併症の発生率は、解離 2.2%(11/495 例)、分枝閉塞1.2%(6/495例)、遠位塞栓1.2%(6/495例)、ワイヤー穿孔0.2%(1/495例)、血管破裂0.2%(1/495例)だった。


Cooper氏は、「動脈硬化性腎狭窄を有する高血圧あるいはCKD患者では、包括的で多角的な薬物療法を行っている場合、腎動脈ステントを行っても、さらなる腎・心血管イベント予防効果は得られない」と結論づけた。


◎Discussant・Zeller氏 狭窄だけでなく血行動態考慮した患者選択を


Discussantで登壇した独・Universitaets-Herzzentrum-Freiburg-Bad-Krozingen Thomas Zeller氏は、「この試験は失敗すべくして失敗した」と切り出した。


まず、試験の登録基準として、解剖学的な狭窄ではなく、血行動態を考慮した診断法を採用すべきだったとの考えを示した。


また、腎動脈ステントの治療対象として、血行動態学的には75%の高度な狭窄を有する症例が妥当とした。その上で、コアラボでの評価で、両群ともに狭窄が70%未満にとどまっていたことを指摘し、「中等度の狭窄の場合、薬物療法を超える効果を得ることができないことが示されたASTRAL試験の知見が確認された」と述べた。


さらに、腎動脈ステントに関して、「腎動脈ステントの効果がもっとも期待されるのは高リスク患者である。しかし、標準療法にランダム化されてしまった場合、末期臓器障害を起こす可能性を懸念するあまり、無作為化試験では高リスク患者を除外することが多い。腎動脈ステントの効果を評価するためには、適切にデザインされた無作為化試験に加え、実臨床でのレジストリー試験でも検討していく必要がある」との結論を引用し、今回の試験が、腎動脈ステントの有用性を否定するものではないことを示唆した。

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