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薬事版官民対話 条件付き早期承認導入で革新的新薬の創出を後押し 医療保険全体のコスト低減も

公開日時 2017/11/08 03:52

厚生労働省医薬・生活衛生局は、11月7日に東京都内で開催した薬事に関するハイレベル(局長級)官民政策対話で、「条件付き早期承認」の導入を通じ、製薬企業の革新的新薬の創出、育成を全面的にサポートする考えを表明した。2018年度診療報酬・薬価改定を控え、薬価への厳しい切込みも想定される。同省は、革新的新薬の創出と育成に向けた“薬事規制改革”を推し進め、環境を整備。企業の研究開発にかかる負担を軽減するとともに、革新的新薬の早期実用化に向けた道筋を明確に示すことで、企業のイノベーションを後押しする。リアルワールドデータ(RWD)の活用による研究開発の生産性向上は、これまで製薬業界が要望事項にあげており、歓迎の意向が示されるとともに、対象の明確化や柔軟な運用を求める声があがった。


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◎厚労省・宮本医薬局長 コストの低減化と革新的新薬へのアクセス確保両立を

「今後も我が国における薬事規制や、ひいては保険医療全体を含めてコストの低減化、さらには効率化の向上を図っていく必要がある。少子高齢化が進む我が国では、その必要性が高まっていく。革新的技術に基づく革新的製品が早く現場に届くことを望んでいる医療関係者や患者に、どういう形で成果を安心して使っていただけるかについて、(製薬業界との)共同歩調が必要だ」-。厚生労働省医薬・生活衛生局の宮本真司局長は、会議の冒頭でこう語った。

厚労省は10月20日付で「条件付き早期承認」の導入を都道府県に通知した。重篤で有効な治療が乏しい疾患の医薬品で、患者数が少ないなどの理由でフェーズ3など検証的臨床試験の実施が困難な医薬品を対象に、検証的臨床試験をせずに承認を早める。一方で必要に応じて施設要件を定め、投与対象患者を絞り込むことで、適正使用推進にも配慮する。その上で製造販売後に、有効性・安全性の再確認を行う。この際にはリアルワールドデータ(RWD)の利活用を認める方針を盛り込んだ。製薬企業にとっては、開発期間の短縮や研究開発、製造販売後調査にかかわるコスト削減が期待できる。革新的新薬を早期に臨床現場に届ける道筋を示すことで、患者の革新的新薬への早期アクセスを確保する。

◎開発期間の短縮化や低コスト化は保険財政との均衡に寄与

11月に入り2018年度薬価・診療報酬改定は、年末の予算編成に向けて議論が熱を帯びてきた。高騰する医療費の適正化の急先鋒として薬剤費の抑制が焦点となる中で、厚労省は産業構造改革の観点から新薬開発の生産性向上を実現させる方針だ。革新的新薬の開発期間の短縮化や低コスト化などを通じ、保険財政全体との均衡のとれる産業構造への転換を実現する想いも込められている。

◎RWDの利活用で環境整備進む

この制度の施行にあわせてRWDを得るためのデータベースの整備も進めてきた。2018年4月には、10拠点、23病院、400万人を対象とした医療情報データベース(MID-NET)を本格運用する。製造販売後調査でのデータベース利活用を明示化するために、GPSP省令の改正も行うなど、環境整備を進める。データベースの活用を通じ、これまで治験への組み入れが難しかった小児や高齢者、肝・腎機能低下例、心疾患の既往歴がある患者など、実臨床に即したデータを収集することが可能になる。このほか、製薬企業にとっては製造販売後臨床試験の人的・財政的コスト削減が見込める。

同時にPMDAも組織改革に臨む。条件付き早期承認の導入に伴い、新たに相談事業を立ち上げるほか、2018年度にはMID-NETの本格運用に合わせ、レギュラトリーサイエンスセンターを立ち上げ、サイエンスレベルの向上を図る。審査のポリシーの明確化に取り組み、承認審査の透明化も推進する方針だ。

これに対し、製薬業界側からは、条件付き早期早期承認について、RWDの活用で効率的、科学的にデータが収集できることへの期待の声があがった。一方で、対象品目が重篤であるなどとされていることから、患者数の少ないオーファンに限られているとの見方もあり、柔軟な運用を求める声もあがった。これに対して、厚労省側は、国立がん研究センタ―を中心に構築が進められるSCRUM-Japanなどのレジストリを通じて得た、ゲノム解析データをRWDとして活用できることも説明した。これまで臨床試験の実施が難しかった希少がんなどに対して、共通の遺伝子変異があれば、臓器横断的な承認などの選択肢もあることを例示した。また、RWDは医薬品の安全性だけでなく、有効性の評価へも活用できることなども報告された。


◎後発医薬品 添文上の臨床成績も先発品と同等に


そのほか、後発医薬品の添付文書については、先発品と同一の記載内容を要望する日本ジェネリック製薬協会の要望を受け、使用上の注意に続き、臨床成績についてもすでに公表されている論文や先発品の審査報告書を基に先発品と同等の情報提供を行うことを可能にすることなどを盛り込んだ通知の改定を予定。年内にパブコメを実施予定であることも報告された。
 

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