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【World Topics】病院も大手独占の時代

公開日時 2013/07/16 05:00

米国では病院のチェーン化が加速、市場の寡占化が急速に進んでいる。形態は病院相互の共同経営アグリーメントから大手全国チェーン病院による地域医療機関の吸収合併までさまざまであるが、医療供給機関は少数のプレーヤーによって統合・集約されつつある。医療費抑制のために求められる病院コスト削減への圧力が原因だ。(医療ジャーナリスト 西村由美子)


町の薬局が大手薬局チェーンにのみこまれ、家族経営の八百屋や魚屋や肉屋が大手スーパーマーケットの出現で消えてゆくのと同じ現象が病院にも起こっている。


だが、病院の場合は、大手チェーンの出現によって価格の引き下げが起こらないどころか、むしろ価格引き上げがおこることが問題なのである。というのも、大手病院チェーンは、その規模故に保険会社に対してより強い交渉力を発揮でき、より高い価格設定ができるからだ。保険会社の支払いが増えれば、患者の自己負担も増加する。


ジョンソン財団(Robert Wood Johnson Foundation)の報告によれば、1990年代に市場のマネージドケア化にともなっておこった米国の医療機関合併ブームの結果、大手病院チェーンの独占市場となった地域では、病院医療費の患者負担分がおよそ5%以上値上がりした。値上がり幅の大きかった地域では40%の負担増となったところもある。この経験から今回の寡占化で患者負担が急増するのではないかと懸念する声が高まっている。


実際、2011年にカリフォルニア大学バークレー校の研究者チームが実施した調査では、医療機関の寡占化が進み医療機関相互の競争が激しくない地域では、医療機関への保険会社の支払いが他の地域に比して13~25%高くなっていると報告されている。これらの地域では、ともなって、当然、患者の自己負担額も高くなる。


患者の権利擁護は、米国では、もっぱら司法による救済にかかっていると言われる。医療機関の合併は連邦取引委員会(The Federal Trade Commission (FTC))および米国司法省(U.S. Justice Department)、さらに各州の司法局の管轄だからである。


行政努力について、FTC委員長は2013年4月の上院での質問に応えて「入院患者へのサービスを非効率にし、患者の経済的負担増を招くおそれのある医療機関の合併を防ぐための努力を倍加した」と答弁し、あわせて、過去2年間にオハイオ州、イリノイ州での医療機関合併を抑止したと語っている。さらに本年2月に連邦最高裁がジョージア州の大手医療機関の合併を「独占禁止法に抵触する」と判断した例を引き、「消費者としての患者にとって大きな勝利」と報告している。


だが、実際には、病院の統合・合併のトレンドはなお加速している。

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