ディオバン問題 千葉大学VART最終報告でデータ不一致など指摘 論文取り下げ勧告へ

公開日時 2014/04/28 03:51
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降圧薬・ディオバン(一般名:バルサルタン)の臨床研究不正をめぐる問題で、千葉大学は4月25日、VART研究について不正行為対策委員会(松元亮治委員長)の最終報告をまとめ、データの不一致、統計解析方法の妥当性など複数の問題点があることから、論文の取り下げを勧告することを明らかにした。データ改ざんについても「その可能性を否定することも不可能である」とした。論文データに意図的なデータ操作が行われた内容を見いだせなかったとした13年12月の中間報告から大きく結論を変えた内容となった。


不正対策委員会の松元委員長は会見の冒頭で、同大で実施された臨床研究で「信頼を裏切るようなことになったことは誠に遺憾で深くお詫び申し上げる」と述べた。


最終報告書では、第三者機関(先端医療振興財団臨床研究情報センター)の調査報告書や同大がノバルティスの統計解析者に行った意見聴取などを踏まえて作成された。報告書では、①データセットと論文の比較で明らかとなったデータの不一致、②千葉大学附属病院における原資料とデータセットの照合から明らかとなったデータの不一致、③統計解析方法の妥当性の問題、④明らかな誤り―が存在すると指摘。「信頼性が低く、科学的価値も乏しいことが指摘された」とした。また、試験実施期間中に症例報告書(CRF)のデータセットや倫理委員会、エンドポイント委員会の資料が破棄されていたほか、安全性勧告委員会が開催されていないなど、大学側の試験実施体制についても指摘したものとなった。


◎ノバルティス元社員 解析に関与した可能性を指摘 利益相反を問題視


ノバルティスとの利益相反についても問題視。ノバルティス元社員の統計解析者との関係については、これまで「(研究者は)大阪市立大学の方だと思っていた」「統計解析を任せただけでアドバイスをもらい、研究者達自身で実際に解析を行っていた」としていた。


しかし、最終報告をまとめる調査過程で論文の筆頭著者がこれまでの証言を覆し、「試験の後半部分のデータをノバルティス元社員に送り、データ解析及び図の作成をしてもらった」と不正行為対策委員会への証言を行ったことも明らかにした。

試験にかかわった同大学の現教授は、ノバルティス元社員との関係についてこれまでの証言を繰り返したものの、後日「前教授に送られてきたデータの媒体を筆頭著者に渡したことを思い出した」と証言したという。


報告書では「関係者の間でいまだ証言に食い違いがあるものの、試験のデータがノバルティス元社員に渡り、統計解析にかかわった可能性は高いと考えられ、このような状況は利益相反マネジメントがされていたとは認められない研究である」と結論付けた。


不正対策委員会は会見で、この記載の根拠は筆頭著者の証言のみによることを明らかにした。その上で、「論文取り下げに至るということは、本人にも想像がつく。研究者からすれば身を切られる覚悟のはず。その覚悟で言ってきた」(松元委員長)と述べ、証言することで最終的に論文取り下げに至ることから、不正対策委員会でも筆頭著者の証言を信用するに至ったとした。


データ改ざんについては、原資料やデータセットへのアクセスはパスワードが必要であることなどから、事実上ノバルティス元社員がアクセスできないことを認めた上で、「データの最終解析で図を作るときに触れた可能性は否定できない」と述べた。
 

なお、不正行為対策委員会の中間報告では、研究者自身での解析結果ではデータ解析の中立性が疑われる可能性があったことから、ノバルティス元社員に解析を依頼したとしている。


◎バルサルタンの心・腎保護効果は示せず
 

▽データセットと論文、▽原資料とデータセット―に不一致がみられた点については以下の通り。


データセットと論文の照合は、データセット内の1021例を対象に再解析を実施。不一致は、血圧推移図に加え、副次評価項目である▽血漿ノルエピネフリンの変化、▽尿中アルブミン/クレアチニン比(UACR)推移図、▽糖尿病の新規発症―に認められた。同試験の主要評価項目である複合心血管イベント(全死亡+突然死+脳血管イベント+心イベント+血管イベント+腎イベント)についても、“有意差なし”とした結論は同様であるものの、メイン結果を示したKaplan-Meier曲線は完全に一致していないことも分かった。そのほか、左室心筋重量係数(LVMI)の推移図も完全に一致しなかった。一方で、イベント件数、心縦隔比の変化は一致していた。


血圧の推移については、血圧降下度に2群間で有意差が認められない点は変わらないものの、推移が逆転していることが分かった。委員会では、論文の筆頭執筆者である医師のミスとの見方を示し、報告書でも「論文作成時、グループ間でのデータの取り違え(バルサルタン群とアムロジピン群の貼り付けミス)があったものと考える」とした。


原資料とデータセット間の照合は、同院で登録された109例(全1021例の10.7%)を対象に実施。副次評価項目であるLVMI、UACRの推移図は一致しなかった。


再解析の結果、主要評価項目では論文と同様に、バルサルタン群と対照薬であるCa拮抗薬・アムロジピンとの間に有意差は認められなかった。一方で、バルサルタン群で有意に良好とされていた副次評価項目の▽心左室重量係数(LVMI)とその変化量(心左室肥大)、▽血清ノルエピネフリン濃度の変化率▽心縦隔比の変化率(心交感神経活動)▽尿中アルブミン/クレアチニン比(UACR)の変化率(腎機能)―の4項目のうち、再解析後も有意差が認められたのはLVMIの変化量のみにとどまった。そのため、論文の結論とされていた“アムロジピンに比べ、バルサルタンは心臓と腎臓に対する保護効果が大きい”については、「結論を導くことは不可能」とした第三者機関の調査結果を支持することも明記されている。


そのほか、登録時のデータでは、駆出率(EF)やBMIなどは約半数が欠測するなど欠測値が多いことも指摘されている。


試験は、日本人高血圧患者1021例を対象に降圧療法を行うことで、心筋梗塞や心不全の心血管イベントの抑制効果があるか検討。本試験の結果は、Hypertension Research誌に2010年掲載されている。
 

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