英アストラゼネカ（AZ）は5月19日、米ファイザーによる買収の最終提案を拒否したと発表した。ファイザーは、AZ株式1株当たりを55ポンドに引き上げ、総額約690億ポンド（11兆7300億円、1ポンド＝170円換算）を提示した。

AZは、拒否の理由として、ファイザーの提案はAZの株主に不安定さとリスクをもたらすこと、また、ファイザーの提案はAZの変革や独立した科学主導の企業としての魅力的な長期的展望を持っていることを認識していないこと、AZが長期的な収益の目標に自信を持つ裏づけとなる明確な戦略を立てていること‐など買収額はAZの企業価値を低く見積もっていること、さらに、同提案で示されたビジネスモデルは不確定性やリスクをもたらすこと‐などを挙げた。

AZのLeif Johansson会長は、ファイザーが基本的に経費節減や課税の最小化など同社株主に対して企業の財務的メリットのみを考慮してアプローチしてきたと指摘したうえで、「会合や何度にもわたる電話でも、ファイザーは我々を動かすような戦略、ビジネスモデルおよび価値を示せなかった」と話している。

さらに同会長は、「独立した企業として、AZのパイプラインの価値全体は我々の株主のものになる。最終提案では、この価値は著しく損なわれてしまう」と改めてR&D重視の独自路線の意向を強調した。

そのうえで、Johansson会長は、「我々はファイザーの最終提案を拒否した。なぜならば、その提案は株主にとって不十分であり、重大なリスクをもたらす可能性があるからである。さらに、我々の企業や従業員、敷いては、英国、スェーデンならびに米国のライフサイエンス部門に重大な影響をもたらすからである」と従来からの主張を繰り返しした。

英国の買収ルールにより、今回の買収案の有効期限は5月26日で、その後は6か月経過しないと、ファイザーは新たな買収案を提案できないので、これでデッドロックにぶつかった格好となった。