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逆境を乗り越えるためのレジリエンス・マッスルの鍛え方

公開日時 2014/08/15 00:00

イーピーエス株式会社
榎戸 誠

 

【「逆境」を検索したら】

この瞬間にも逆境で呻吟している人が多いことに驚かされる。というのは、私のメール(rsd02078@nifty.com)に俵萠子の文章のコピーを送ってほしいという依頼がしょっちゅう舞い込むからである。こういう人たちからのメールには、「Googleで『逆境』を検索したら、榎戸の『もし、あなたが逆境に立たされたら』という文章が目についたので」と書き添えられている。その文章の中に、「この何十年間に亘り、俵萠子の『職場のやりきれない人間関係――どうしてもがまんのならない人がいるとき、私はいつもこう考えることにしていた』という文章に慰められ、励まされて、私は何度も逆境を乗り越えてきた。希望者には彼女の文章全文のコピーを送る」と記しているからだ。

こういう依頼を受け取るたびに、何十年も前の原文はボロボロになってしまっているので、私がWordで打ち直したものをメールに添付して返信してきたが、今後は、俵萠子の文章を送るだけでなく、『「レジリエンス」の鍛え方――世界のエリートがIQ・学歴よりも重視!』(久世浩司著、実業之日本社)の一読も勧めたいと考えている。

 

【レジリエンスとは】

著者が重視する逞しさは、肉体的な逞しさではない。「精神的な打たれ強さであり感情をコントロールできる強い自己規律を指します。心理的なたくましさがあるビジネスエリートは、継続的に成果をあげ、社内や社外での競争に生き残り、長いキャリアで成功を収めることができます」。

「『レジリエンス』とは、もともと環境学で生態系の環境変化に対する『復元力』を表す言葉として使われていました。それが現代心理学で人の『精神的な回復力』を示す言葉として使われ始めました」。すなわち、レジリエンスは、心が折れそうになる逆境から立ち直るための技術だというのである。

レジリエンスを身に付けている人は、「合理的に物事を捉える。しなやかに困難に対応する。たくましさを持って逆境を乗り越える。そしてつらく痛い体験から価値ある何かを学び、そのたびに成長する。・・・高いレベルでの自己認識があり、自己の強みを活かせる土俵で仕事を注意深く選択し、感謝の念や仲間とのつながりを意識的に大切にし、自分らしくオーセンティックな(本物の)働き方を体現してきた人たちです。本を読まない人が増えていますが、その弊害に、自分のお手本となるロールモデルを持ちづらいことがあると私は考えます。ネットでの断片的な情報からは、自分が参考にできる働き方は学べません。仕事で成果をあげることを目指している人は、継続的に仕事で成果をあげた先達をお手本として学ぶべきです。身近にいなければ、本を読むのが一番です」。全く同感である。

 

【3つのステージ】

レジリエンスには3つのステージがある。先ずは、精神的な落ち込みから抜け出し、下降を底打ちさせる段階である。次は、「レジリエンス・マッスル」(再起するのに必要な心理的筋肉)を使って、上方向に向けて這い上がる再起の段階だ。最後は、精神的に痛みを感じる辛い体験から意味を学び、成長するテクニックを習得する段階である。過去の逆境体験を一歩離れた高い視点から俯瞰し、逆境体験を教訓化するのだ。なお、著者は、「レジリエンスはポジティブ・シンキングとは違う」ということを何度も強調している。

 

【7つの技術】

レジリエンスを鍛える7つの技術は、こう説明されている。「●ネガティブ感情に対処する――①ネガティブ感情の悪循環から脱出する! ②役に立たない『思いこみ』をてなずける。●レジリエンス・マッスルを鍛える――③『やればできる!』という自信を科学的に身につける、④自分の『強み』を活かす、⑤こころの支えとなる『サポーター』をつくる、⑥『感謝』のポジティブ感情を高める。●逆境体験を教訓化する――⑦痛い体験から意味を学ぶ」。

 

【具体的なヒント】

ネガティブ感情の悪循環から脱出する具体的な方法が複数紹介されているが、その中の「マインドフルネス呼吸法」は初心者でもマスターできそうだ。「●ゆったりと椅子に座り、首と肩の緊張をほぐす、●背筋をまっすぐにする、●目を瞑って、息に注意を集める、●吐く息と一緒にストレスが外に出る感覚を持つ、●吸う息と一緒にエネルギーが入ってくるようにイメージする、●活力が戻ったのを感じたら、仕事に戻る」。

やればできるという自信を身に付けるには、「自己効力感」(自分ならやればできると感じる度合い)を高めることが有効である。自己効力感を養う4つの方法はこのように解説されている。「●実際に行い成功体験を持つこと(直接的達成体験)→『実体験』、●うまくいっている他人の行動を観察すること(代理体験)→『お手本』、●他者からの説得的な暗示を受けること(言語的説得)→『励まし』、●高揚感を体験すること(生理的・情動的喚起)→『ムード』」。

自分の強みを活かすには、先ず、レジリエンスのある人の特徴を知る必要がある。彼らは「●自分の強みは何かを把握している、●自分の強みを平時から磨いている、●自分の強みを有事に活かすことができる」。

 

【5つの報酬】

痛い体験から意味を学ぶことは、その人を大きく成長させる。「予期せぬ問題に直面し、こころや感情が揺さぶられるようなつらい体験をし、それを乗り越えたときに達成できる心理的な成長です。そのためには、困難の苦しみから逃げ出してはいけない。たとえ自分が不快に感じることでも、精神的な痛みを感じようとも、勇気を持ってその挑戦を受け入れることができた人だけに与えられる報酬なのです」。

修羅場を乗り越えた人、もがき奮闘した人にもたらされる報酬として、5つの成長が挙げられている。第1は、「生きている」ことに対して感謝の気持ちが増す。第2は、人生の修羅場で助けの手を差し伸べてくれる真の友人は誰かが分かるようになる。第3は、自分の強さに対する理解が深まる。第4は、人生観・価値観・仕事観が根底から変化する。第5は、自分という存在を根源的・本質的に捉えることができるようになる――これらの報酬を手にした人は、自分には厳しくとも、他人には謙虚に優しく接することができるようになるんだろうな、と羨ましくなる。

この本に若い時に出会っていたら、私もレジリエンス・マッスルを鍛え上げ、どんな逆境であろうと果敢に立ち向かえたものを!

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