厚生労働省の「医療用医薬品の流通改善に関する懇談会」（座長＝嶋口充輝慶應義塾大学名誉教授）が12月9日開かれ、９月末時点の医療機関・卸間の医薬品購入をめぐる価格交渉の妥結率が92.6％となる一方で、2年前に比べて大病院（200床以上）を中心に単品単価取引が減少し、単品総価取引が増加傾向にあることが報告された。妥結率の大幅な上昇は、4月の診療報酬改定で導入された “未妥結減算”が功を奏した格好。ただ、高妥結率と裏腹に卸側の販管費が上昇するなど経営面への影響が懸念された。また政府の経済財政諮問会議が提案している「薬価毎年改定」については、製薬企業、医薬品卸、医療機関それぞれが導入の反対を表明した。



全取引に占める単品単価取引（2014年4～9月）の割合は、200床以上の病院で57.3％となり、前回薬価改定のあった2012年度の61.4％より4.1ポイント減少した。一方で調剤薬局チェーンは66.0％で、12年の62.2％から3.8ポイント増となった。一方、単品総価取引は、200床以上の病院で31.6％（2012年度：28.5％）、調剤薬局チェーン（20店舗以上）では31.4％（同・25.1％）で、2012年度と比べ、ともに増加傾向を示した。


このトレンドについて日本医薬品卸売業連合会の村井泰介氏は、改定後８月までは単品単価取引を中心とした交渉が進み、「（８月時点で）妥結率は47～48％程度だった」としながらも、妥結率が92％まで一気に跳ね上がった9月末までの1か月間については「時間や件数の関係で、勢い単品総価的な交渉にならざるを得なかった」と述べた。その上で、単品総価取引については、「値引き率ありきの交渉ということ」と説明し、苦しい交渉を迫られたことを明かした。

一方で、大手調剤チェーンについて村井氏は、単品単価まで落とし込めたケースがあることから「大きな前進」と歓迎した。


日本医薬品卸売業連合会の中原岳志氏は、特定卸、特定品目、特定期間のみを妥結する“部分妥結”が出てきたことを指摘し、「未妥結減算の趣旨が十分理解されていないと考えられる」と述べ、問題視した。



◎未妥結減算に伴い医薬品卸はコスト増

未妥結減算が卸経営に与える影響については、売上営業利益率が昨年度の0.99％から今年第二四半期では0.46％まで落ち込んでいるとのデータが提示された。後発品のシェアが増加し、長期収載品のシェアが下落していることもあり、市場全体が縮小傾向との見方を示した。一方で、売上高販管率は、未妥結減算導入に伴う書類作成などの影響もあり、昨年度の5.55％から第二四半期は5.86％まで増加したとの見方を示した。

薬価については、仕切り価が12年度と比べ、0.1％増加した一方で、納入価は0.2％減少し、一次売差マイナスは0.3％拡大した。一方で、薬価差は0.2％増加し、卸の粗利益率は0.1％減少したことも示された。

◎毎年薬価改定　“診療報酬改定”と一体でなければ意味がない

経済財政諮問会議から求められた毎年薬価改定についてもこの日議論され、卸連、製薬企業、医療側すべてが反対の姿勢を示した。

卸側からは毎年改定を行うことで、卸側からは市場実勢価格の把握が困難であることや単品単価取引の後退を懸念する声があがった。また、医薬品の安定供給への影響を示唆する声や、情報収集、情報提供、災害時などの社会インフラ構築など、価格交渉以外のMSの通常業務に支障をきたす可能性も示唆された。一方で、卸の経営についても、診療報酬と切り離して議論することで薬価差益が増大し、甚大な影響が出るとの見方をも示された。
製薬企業側からは、毎年改定の結果、イノベーションを生み出す産業としての競争力を弱体化する可能性も指摘された。

一方で、医療側からは、“薬価改定と診療報酬改定は車の両輪”との声も聞かれ、薬価改定だけ頻度を変えることで、医療提供体制に影響を及ぼすことの懸念が聞かれた。