厚生労働省医政局経済課の城克文課長は本誌取材に応じ、厚労省が経済財政諮問会議に提案しているＧＥ数量シェア80％目標達成に向け、革新的新薬の創出やエッセンシャルドラッグの安定供給、流通振興などに関する「総合戦略」の立案に着手したことを明らかにした。このうちエッセンシャルドラッグの供給環境の整備については、「個別企業の救済策を行うものではない」とした上で、製薬業界側からの制度提案を求めた。一方、価格におけるイノベーションの評価については、世界に先駆けて日本で承認を取得した“先駆導入加算”を例にあげ、開発段階の早期から投資の予見可能性を高めることで、企業としてリスクを下げることが重要との認識を示した。8月末の2016年度予算概算要求までに骨格をまとめる。


総合戦略は、ＧＥの数量シェア80％目標達成と、医薬品・医療機器・再生医療等製品におけるイノベーションの推進策が柱となっている。ＧＥの使用促進をめぐっては、厚労省が数量シェア80％の達成時期を2020年度末とする一方で、経済財政諮問会議の民間議員や財政制度等審議会（財政審）は2017年度内とすることを求めている。


総合戦略のひとつの柱である、エッセンシャルドラッグの安定的、継続的な供給について城課長は、「長く臨床現場で使われているけれど、不採算になりそうな品目に分岐点を置く新たな仕組みが必要」と説明。新薬、ＧＥのほかに、「エッセンシャルドラッグ」という第3のマーケットへの対応が求められているとした。


この問題をめぐっては、2011年の中医協に製薬業界側から、「保険医療上必要性の高い医薬品」について薬価上の下支えを求める改革案が中医協に提案された経緯がある。城課長は、「個別の製薬企業についての救済策を取るつもりはない」とした上で、臨床現場に本当に必要な医薬品を“エッセンシャルドラッグ”に位置付ける仕組みについて製薬業界からの提案を求めた。

具体的には、該当する医薬品の薬価を下支えすることを前提とするが、対象医薬品は、その都度選定するのではなく、「自動的に決まるようなルールの策定も視野に入れてこれから考える」と語る。例えば、収載後一定期間を経た品目とすることも一考とした。加えて、アベノミクスの三本の矢のひとつに医薬品産業が位置付けられる中で、「物価も人件費も上昇する中で、せめて原材料費の上昇分程度の薬価対応があってもよいのではないか」との見解を示した。


また、輸液や貼付剤などのように先発メーカーが市場シェアの大半を占める領域については、ＧＥメーカーが80％を供給する体制を整備することは難しい。こうした医薬品については、長期収載品の特例引き下げ分、いわゆる“Z2”の補正も視野に入れ、安定定期な供給をサポートする考えを示した。　　

◎投資回収の“予見性”高めた薬価制度で企業側のリスク低下も視野に

価格におけるイノベーションの評価として、製薬業界は「新薬創出加算」の制度化を求めている点にも城課長は言及した。現在のビジネスモデルでは、開発リスクが高いことから、開発早期から投資回収の予見可能性を高めることで、企業としての経営リスクを下げることも重要との見解を示した。
2014年度の薬価改定で厚労省は、世界に先駆けて日本で承認を取得した有用性の高い新薬に10％の加算する「先駆導入加算」を導入した。城課長はこれを例にあげ、先駆導入加算の対象品目が増加するような仕組みづくりが必要との考えを示した。

また、イノベーションの評価のためには、「市場で価格を決めてもらう“単品単価取引”が進むことが重要。それができるような環境整備をしなければならない」との見解を示した。
経済財政諮問会議で議論の俎上にあがっている「毎年薬価改定」については、医療機関と卸との妥結期間を短縮することで、単品総価取引が増加することに懸念を示し、「決算を一度越えた後の価格調査は合理的」との考えを表明した。財務省の財政審の建議（6月1日）で「薬価調査に基づく既存薬価のマイナス分は診療報酬本体の財源とはならない」と明記されたことにも触れ、「（薬価差が）医療機関の原資になっているのは事実」と指摘。その上で、「薬価差を診療報酬から引き剥がせば、医療経営に打撃を与えるのは間違えない。少なくともそのタイミングで、（診療報酬の）技術料が妥当かどうか確認することが必要」との見解を示し、薬価と診療報酬の同時改定が必要と強調した。

インタビュー全文は、Monthlyミクス７月号（７月１日発行）に掲載します。