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米の高薬価薬剤 公的保険財政負担が10年で500億ドルに

公開日時 2015/06/12 03:50

米食品医薬品局(FDA)の画期的新薬指定などを受けた薬剤は効果が高いものの同指定を受けた10剤のみで米公的保険財政の負担が今後10年で約500億ドルになるとの予測をヘルスケアコンサルタント企業Avalere Healthがまとめた。


この予測は、米医療保険企業団体America’s Health Insurance Plans(AHIP)による委託研究。最近FDAの画期的新薬指定を受けた10剤の薬剤費負担が今後10年間で米国の納税者の負担となっているメディケア(高齢者保険)では313億ドル、メディケード(低所得者保険)では158億ドル、医療保険交換所では21億ドルに達し、合計492億ドルになるとの試算を行った。なお、医療保険交換所は、いわゆるオバマケアで創設された州政府が保険会社と交渉後、保険商品を州民に提供する制度である。


これら10剤の中には、肺がん治療薬Keytruda(ペムブロリズマブ)、糖尿病性網膜症治療薬Eylea(アフリベルセプト)、嚢胞性線維症治療薬Kalyddeco(ivacaftor)、C型肝炎治療薬Sovaldi(ソホスブビル)およびHarvoni(レジパスビル+ソホスブビル)などが含まれている。


当然ながら、今回の試算では、今後、発売されるであろう多数の画期的新薬の経費は含まれてない。現在の10剤だけでの計算なので、それに大きく加わるとその金額は膨大なものになることは想像に難くない。


AHIPのDan Dauham会長代行は、「わずか10剤で大変な金額であり、氷山の一角にすぎない。我が国の患者が負担しなければならないコストの一部だ」と述べ、負担増に懸念を示した。


同会長代行は、今回の試算には、別途公的保険を運営する退役軍人局や国防省の保険支払いは含まれていないので、この試算は控えめなものと指摘する。また、民間保険や患者自己負担、適応外使用での薬剤費なども含まれていない。


さらに、「今回得られた知見は、全関係者に処方せん薬のパイプラインの財政的影響とイノベーションのコストおよび我々の公的保険プログラムの将来を真剣に考えることを求めている」と呼びかけた。


報告書は、「将来を考えると、高薬価で大規模患者集団に寄与する治療法は政府の負担や消費者の保険料に大きな影響を与えることが予想される」と消費者が高価で治癒率の高い薬剤の薬剤費負担は不可避との考えを示した。

しかし、報告書では、ソホスブビルなどC型肝炎治療薬が高い治癒率を示すなど入院を減少させたり、労働生産性を向上させるなどの社会的貢献をしていることを計算に入れていないので、論議を呼びそうなところではある。
 

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