ギリシャ財政危機 医薬品供給は通常通り
公開日時 2015/07/10 03:50
財政危機の渦中にあるギリシャでは、国立病院などによる製薬企業への支払いが遅延している状況のため、病院への医薬品納入が懸念されるところだが、現段階では、医薬品供給に問題は生じていないようだ。米ロイター通信7月6日付および米医薬専門誌「Fierce Pharma」7月6日付がギリシャの最近の医薬品供給事情を報じた。
ギリシャで流通する医療用医薬品のほぼ100%は輸入品で、欧州でビジネスを展開する多国籍企業の製品が主である。しかし、2014年末以降、ギリシャの国立病院や国民保健サービス(健康保険)からの支払いはストップ、すでに11億ユーロ(12億ドル)が未払いになっているという。
しかし、銀行店舗の閉鎖やユーロ圏離脱の懸念から医薬品輸入への影響も心配されたが、現状では、医療現場での医薬品不足などの問題は報告されていないようだ。
英アストラゼネカ(AZ)は、危機管理対策を準備中だが、現在は通常通りの業務を行っていると話し、「銀行は閉鎖されてはいるがギリシャ内の銀行送金は可能で、現在、我々のサプライチェーンには影響はない」としている。
米ファイザーは、現在のギリシャ国内の在庫量は十分で、短期的には患者に影響を与えないことを保証しているとコメントしている。
スイス・ロシュは、製品供給に障害はないとしたうえで、「7月5日の国民投票の影響を見極めているところで、必要があれば、業務計画の見直しや変更を行う」と今後の状況次第で供給への対応を進める意向を明らかにしている。
「Fierce Pharma」によると、ギリシャでは幾度も財政危機に見舞われているが、かつて独メルクが支払いの滞納により、抗がん剤アービタックスの国立病院への供給を停止、代わりに患者が同剤にアクセスできるように薬局に直接販売したケースがあったという。このとき他社は、高薬価の新薬の代わりに古い代替薬を供給したようだ。
ギリシャの財政危機は現在、流動的だが、長期化すると医薬品供給に影響が出る事態も予想されるので目が離せない。