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ファイザー・梅田社長 地域包括ケアで「今までにないこと起こる」 経営陣含むプロジェクト始動

公開日時 2016/03/03 03:52

ファイザー日本法人の梅田一郎社長は3月2日、東京都内で開いた15年度業績会見で、国が推進している「地域包括ケアシステム」を成長機会と捉え、必要な組織を構築するため、経営陣を含むプロジェクトを始動させたことを明らかにした。社内では「Customer Facing 2020 Project」と呼称している。新たな顧客やその顧客へのアプローチ方法、組織作りに向けて新設した専任部署が全国の情報を収集・分析中で、経営陣をはじめ、各ビジネスユニットでも検討を進めている。

梅田社長は「一生懸命、勉強している段階」とした上で、関心事の一例として、地域ごとに異なる医療連携の内容、在宅患者のみを診る医師・クリニックの出現、在宅医療を活用する患者の使用薬剤(新薬・ジェネリック)、在宅医療を活用する慢性疾患患者の急性期症状時の医療提供体制――を列挙。「これまでの我々の通常の活動では見えないところに医師がいて、その医師が在宅患者さんを訪問される」と述べ、医師をはじめとする医療従事者と患者との新たな接点を研究していることをうかがわせた。また、「がん患者さんも自宅に帰ってこられる。今までにないことが起こってくると思う」との認識も示し、「様々なことを勉強していきたい」と話した。

地域包括ケア時代の必要MR数については、「現段階では大きく営業体制や社員数に影響を及ぼさないと思うが、5年、10年、20年後の地域医療の中で、我々にどのような影響がでるかはしっかりみていきたい」と語った。

地域包括ケアシステムは、これまでの施設完結ではなく、地域完結で医療・介護・生活支援などを提供する仕組み。団塊世代が75歳以上となる25年を目途に、地域の特性や実情に基づきシステムを作り上げていく。新しい医療提供の流れになるといわれている。

■15年度国内業績は2%増収 リリカやトビエースなど主力品伸長 GEは約500品目に

ファイザー日本法人の15年度(14年12月~15年11月)の国内売上は5114億円で、前年度比2%増だった。疼痛治療薬リリカ、過活動膀胱治療薬トビエース、肺炎球菌ワクチンのプレベナー13、抗がん剤スーテントなど主力品の伸長が主な理由。慢性骨髄性白血病治療薬ボシュリフを14年12月に発売し、新効能・新剤形・新用量の追加が8品目あったことも業績に寄与した。ジェネリック(GE)事業でも、15年度は男性型脱毛症用薬プロペシアGEなど28品目を発売し、計約500品目のラインナップとなった。

■16年度に4品目以上の承認目指す

16年度は、適応追加などを含めて、4品目以上の承認を目指す。ただ、具体的な製品名・開発品名は開示していない。同社公表のパイプラインリスト(16年2月1日現在)では、経口抗リウマチ薬トファシチニブクエン酸塩(製品名:ゼルヤンツ)について、「既存治療で効果不十分な尋常性乾癬、関節症乾癬」の適応及び用法用量追加が申請中となっている。また会見に登壇した原田明久医薬開発本部長によると、降圧剤エプレレノン(セララ)が慢性心不全の適応追加で申請準備段階にあり、乳がん適応でフェーズ2/3段階にあるパルボシクリブは申請が近いことを示唆した。

原田本部長は、メルクセローノと共同開発しているがん免疫療法薬の抗PD-L1モノクローナル抗体のavelumabでファイザーが担当する開発プログラムは、▽卵巣がん(国際共同P3の開始)▽尿路上皮がん、膀胱がん▽腎細胞がん(国際共同P3の開始)▽非小細胞肺がん▽がん免疫療法剤の併用療法――と説明した。そして、「(avelumabは)単剤療法、併用療法で開発していくことは決まっている。自社で持つがん免疫療法の標的分子を併用して更なる治療効果を高めた薬剤を世に出し、がんの単に治療ではなく、がんの治癒を目指し、患者に貢献していきたい」と語った。

なお、バイオシミラーの開発では16年度に、ハーセプチン(適応症:乳がん、胃がん)、リツキサン(非ホジキンリンパ腫など)、アバスチン(結腸・直腸がんなど)、ヒュミラ(関節リウマチなど)、レミケード(関節リウマチなど)――について、それぞれ国際共同P3に参加するとしている。

■市場拡大再算定・特例再算定に梅田社長「イノベーションを著しく阻害。投資リスク上昇を懸念」

梅田社長は16年度の取り組みを説明する中で、薬価基準制度にある市場拡大再算定や特例再算定について所見を述べた。梅田社長はこれら再算定の仕組みについて、「画期的な新薬を開発した企業にペナルティを科すという、イノベーションを著しく阻害するものだと考えている」と批判。その上で、「毎年薬価改定の動きも含めて考えると、日本の医薬品市場が縮小し、外資系企業としては日本市場の魅力が低下し、投資リスクが上昇することを懸念している」と対日投資に影響する可能性を示し、再算定制度の撤廃を強く求めた。

梅田社長はまた、医療費をコストの観点でフォーカスされ過ぎているとも指摘し、「成長分野としてとらえるビジョンが不足している」と語った。梅田社長は、国をあげて食事療法、運動療法、禁煙、ワクチンなどで医療費の上昇を抑え、医療が必要になった場合に適切に薬剤が使用されるべきと主張した。そして薬価にも触れ、「市場実勢価に基づかない薬価削減では画期的新薬を継続して創出できない」と強調し、イノベーションを適切に評価する市場→予見性の向上/投資の増加→日本で画期的な新薬を継続して創出→国民の健康に寄与/国民が納得して新薬に支出――との流れを実現する必要性を訴えた。

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