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中医協総会 高額薬剤使用で「薬価だけで議論できない」 使用最適化が今後の焦点に

公開日時 2016/04/14 03:53

中医協総会は4月13日、高コレステロール血症治療薬・レパーサ皮下注(アステラス・アムジェン・バイオファーマ)などの薬価収載の可否を議論し、高額薬剤の保険上の取り扱いについて、薬事承認にまで踏み込んだ見直しが必要との意見が診療側・支払側各側から示された。高額薬剤をめぐっては、効果の高さなどが指摘される一方で、医療財政への影響が懸念されている。この日の中医協では、各側から効能追加時に次回改定を待たない再算定の実施や、適応条件の制限など薬価制度の見直し、薬事承認審査の見直しを求める声があがった。これに対し、厚生労働省保険局医療課の中井清人薬剤管理官は、「薬価だけで判断する問題ではない。全体の議論として対応していく必要がある」と述べた。まずは、4月20日の承認とともに発出される留意事項通知を通じた適正使用の周知・徹底が図られる。これに加え、費用対効果評価とは別に、医療経済を加味した適正化、最適使用のガイドライン策定の必要性を指摘する声もあり、こうした方策も視野に入れ、今後議論が深まることとなりそうだ。


この日の中医協では、算定薬価が2万2948円と高額なレパーサ皮下注(エボロクマブ(遺伝子組換え))の薬価収載の可否をめぐり、医療財政の観点から薬価制度や薬事承認まで踏み込んだ要望、提案があった。高額薬剤をめぐっては、4月4日の財務省の財政審で抗がん剤・オプジーボの薬剤費が年間1兆7500億円にあがるとの推計も出されており、医療保険財政の観点から適正化を求める声があがっていた。


レパーサの効能・効果は、「家族性コレステロール血症、高コレステロール血症。ただし、心血管イベントの発現リスクが高く、HMG-CoA還元酵素阻害薬で効果不十分な場合に限る」。但し書きで投与患者像を明確にしているものの、診療側の松本純一委員(日本医師会常任理事)は、「臨床でこの薬を使ったときに非常に効果があれば、どうしても患者さんのことを考えれば使ってしまうということになってしまう」と指摘した。承認時に留意事項通知は発出されるものの、生活習慣病治療薬であることもあり、市場予測(ピーク時10年後)は投与患者数6万9000人、販売金額492億円よりも膨らむとの懸念がある。


◎診療側・中川委員 期中の効追で期中の改定も 高額薬剤も目的別に議論を



診療側の中川俊男委員(日本医師会副会長)は、「1000億円以上の売上が予測される生物由来製品を含む高額医薬品の上市が予測される。一括して同じ土俵で議論することはできないと提案したい」と述べ、高額薬剤については別途議論する必要性を強調した。その上で、高額薬剤でも分類があると指摘し、「目的をわけて議論すべき時代に入った」との見解を示した。具体的には、C型肝炎治療薬・ソバルディ錠、ハーボニー配合錠(いずれもギリアド・サイエンシズ)を例にあげ、重篤な疾患の治癒を目指す薬剤は、「生涯医療費をもって必ずしも医療費が高騰するわけではない。慎重に議論する必要がある」との見解を示した。一方で、今回承認されたレパーサなどの生活習慣病治療薬については、「従来薬との比較を慎重にすべき。良い薬だといっても安易に対象を拡大するべきではない」と述べた。また、オプジーボなど延命効果を視野に入れる薬剤については、「国民的な丁寧な議論が必要だ」と述べた。


その上で、現状は薬食審医薬品第一部会、第二部会での審議を経て中医協の承認をもって薬価収載されるが、▽薬食審の承認審査の抜本的な見直し、▽承認された医薬品が遅くとも90日以内に自動的に薬価収載されるという通知の訂正—を要望した。また、オプジーボがされ、投与患者数が増加したことを引き合いに、「効能効果が変更され、拡大された場合、期中の薬価の見直しを求める」と述べた。


支払側の幸野庄司委員(健康保険組合連合会理事)は、「但し書きを厳格に運用するということだが、守らなかったときに支払基金は査定をしにくい。高額薬剤については、保険収載時に一定の適応条件を付けることを検討せざるを得ない時期に来ているのではないか」との見方を示した。


そのほか、薬価算定組織の清野精彦委員長は、「薬価制度改革の中で、コストエフェクティブはあってもコストベネフィットは示されていない」と指摘し、急性疾患は治療すれば治るものの、長期の投薬が必要な薬剤についての評価の難しさも指摘する一幕もあった。


◎医薬品の使用最適化がカギに


一方で、すでに薬事承認や薬価制度改革だけで高額薬剤の課題を克服することについては、製薬企業の予見可能性、イノベーションの推進とのバランスの観点から難しさを指摘する声もあがっている。こうした中で、医薬品の使用をいかに最適化するかがひとつのカギとなりそうだ。16年度診療報酬改定では、湿布薬や残薬、多剤併用など、医薬品の量に対する適正使用に向けた流れが打ち出された。こうした中で、領域ごとに医薬品の経済性を加味した最適化使用ガイドラインを策定することで、無駄な投薬を防ぐことの必要性を指摘する声もあがっている。
 

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