オープンシステム導入で連携体制強化

公開日時 2016/06/30 00:00
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マルチチャネル3.0研究所
主宰 佐藤 正晃

共同診療体制構築へ 大船中央病院の挑戦

 

神奈川県鎌倉市大船に位置する社会医療法人財団互恵会大船中央病院(許可病床数285床)。鎌倉市は高齢化のスピードも全国平均より高く、まさに地域医療連携の要となる基幹病院だ。同院の北濱昭夫院長は、米国で長年にわたり外科専門医として活動した経験があり、それを活かした病院経営術を実践している。近年は近隣の診療所に病院の一部を開放するなど、オープンシステムの導入を検討しており、米国型コミュニティーホスピタルのような共同診療体制の構築にも尽力している。北濱院長にこれからの地域医療と病院経営の方向性を聞いた。

 

北濱 昭夫 氏
社会医療法人財団
互恵会大船中央病院
理事長兼院長
佐藤 正晃 氏
MC3.0研究所
主宰

 

 

佐藤 地域における大船中央病院の役割について教えてください。

 

北濱 当院は、神奈川県鎌倉市の北部に位置するベッド数285床の総合病院です。地域密着型の病院を基本理念に掲げ、外来、入院、そして患者さんの退院後のフォローアップまで包括的な医療サービスに取り組んでいます。

 

というのも、私は東大医学部を卒業して38年間、米国外科専門医、米国外科学会上級会員、米国消化器外科学会会員としてチューレン大学臨床外科教授として活動しました。この経験を活かし、地域医療に取り組んでいます。いまは地域医療連携、訪問看護、介護センターとの共同医療を充実させることで、地域の住民が安心して来院できる病院にしたいと考えています。

 

佐藤 米国ではコミュニティーホスピタルのような地域型施設があるとうかがいましたが?

 

北濱 米国では250床クラスの病院が専門性の高い医師と医療従事者がチーム医療の考え方を実践しています。これにより施設に属さない医療者同士が日常診療を通じ、コミュニケーションできるという強さがあります。すなわち医師同士がスタンダード化された医療を250床クラスの病院で実現できるのです。これが地域におけるコミュニティーホスピタルの役割です。大学病院はそうはいかないのです。患者を中心とした連携といってもオフィシャルな手続きだけでタイムラグができます。私は、その意味で地域医療におけるコミュニティーホスピタルが大切だと考えています。

 

佐藤 日本の地域包括ケアシステムにおいても、病院の機能・役割が重要視される時代になりましたね。

 

北濱 特殊な患者は大学病院に送るが、なんでも大学に送ればいいというものではないと思います。我々のような地域の基幹病院がある程度患者を診て、きちんとした診断を下した上で、大学病院に送るようにしないといけません。こんな機能分担が求められている。医薬品の使い方も同様だと思います。その積み重ねによって、結果的に大学病院に症例数が集まるようになり、例えば医薬品の治験も進むようになると思います。

 

 

日米における地域医療の違い

 

佐藤 いまの日本の地域医療をどう見ていますか。

 

北濱 高齢化を迎えた日本の統計をみると、2008年と2013年のたった5年間を比較するだけで大きな変化が見られます。具体的には、日本の高齢化が先進諸国に比べて急速に進んでいることです。例えば第2位のイタリアでは、全人口に対する65歳以上高齢者の割合が20%を占めるのに対し、日本は25%を超えています。この鎌倉に限ってみても32%に達しています。この状況を直視することが重要です。

 

すなわち、これからの医療施策を考えるならば、どう地域医療を創るかが課題になります。医療システムの違いは日米にあります。米国の場合、医師は病院など施設に所属せず、「技術料」だけで生計をたてています。医師はオープンシステムで病院を選ぶことができるのです。逆に、日本は勤務医として病院に雇用され、そこから給料をもらいます。一方、日本の患者も病院を選ぶことができるが、受診した病院の勤務医でなければ診療ができません。例えば、患者さんが三井記念病院で治療を受けたいと言っても、そこの勤務医でなければ診療できないのです。果たしてこのパターンでよいのでしょうか。私は都内で外人の外科の患者を診ています。そこで三井記念病院の顧問となり、私が患者を連れて行って治療しています。ただ、これは例外中の例外なのです。

 

私は、この鎌倉において、近隣のクリニックと連携し、医師が患者を連れてきて、当院で治療を行うような米国的オープンシステムを導入したコミュニティーホスピタルを提案したいと考えています。

 

佐藤 まさに地域医療における共同診療体制ですね。すでにオープンシステムは導入しているのですか?

 

北濱 いや、まだ構想段階です。近く実行するための準備を行っています。地域の高齢化を見据えれば、当然介護施設や在宅医療との連携を考えなければならないのです。鎌倉全体の医療のオープン化を進めないといけないのでしょう。その際は、薬剤だけでなく、リハビリや栄養管理なども大切です。当院もオープンシステムという考え方を地域と共有していきたいです。

 

 

大船中央病院の共同診療体制

 

佐藤 現在構想中の共同診療体制についてご紹介ください。

 

北濱 当院は、2016年から17年の計画として、現在の急性期病床のうち50床を地域包括ケア病棟に転換します。急性期病床は200床程度とする方針です。これにより在宅医療を手掛ける近隣の診療所と連携します。地域から支持される医療サービスを提供できるという訳です。具体的には、診療所から紹介のあった患者を共同で診療するというものです。(

 

当院は在宅患者の入院・検査・手術などの依頼を診療所から受けます。逆に退院する患者で訪問診療が必要な患者を診療所に紹介します。これらを共同して行うというものです。これにより診療所の医師が当院で外来診療を行うこともできます。この夏からは循環器内科医による週1回の外来とカテーテル検査の実施も受け入れます。さらに、かかりつけ薬局との連携も必要になるでしょう。

 

過去は言い方が悪いが、患者を囲い込むようなことが多く見られました。地域包括ケアシステムが動き出すと、開業医は総合診療医の役割になります。その役割を十分に発揮するためには、こうしたオープンシステムという考え方が地域医療に必要不可欠となるのです。

 

佐藤 いまお話のあった薬剤師の役割について、もう少し詳しくお聞かせください。

 

北濱 当院の薬剤師は主に入院患者の薬剤管理を行っています。その際に主治医と相談して、患者に合う薬剤に見直します。高齢化に伴い複数の診療科を跨がる患者も増えており、重複する薬剤を減らすだけでなく、薬剤を見直すことも行っています。

 

一方で院外薬局に処方箋を出す際にも、事前に院内の薬局で処方内容をチェックしています。必要に応じ、患者さんが調剤薬局に行く前に主治医に問い合わせし、処方修正した処方箋を患者さんに持っていってもらうようにしています。

 

 

薬剤師の役割にも変化が

 

佐藤 薬剤師教育にも力を入れているのですね。

 

北濱 当院には21人の薬剤師がいます。新人の薬剤師は、最初3年間で基礎教育を行います。その後、4~6年目の中堅クラスになると、個人個人にアカデミックなテーマを持ってもらい、医師や看護師と一緒になって臨床的な研究を行います。その時に、医薬品の安全性や有効性について、製薬企業から“知”についてサポートを受けることがあります。薬剤師は単に一人で考えるのでなく、医師や看護師と一緒になって薬学的な連携を行うことが大切です。

 

佐藤 チーム医療の中で求められる薬剤師のケイパビリティーとは。

 

北濱 医療で一番大切なのは効果と安全性です。患者一人ひとりで病気の状況は異なります。患者に合った薬剤を投与することにあります。そのためにも我々は一人ひとりの患者に対する治療方針を横串で考えなければならないのです。

 

 

Tumor Boardを活かせ!

 

佐藤 Tumor Boardも積極的に取り入れているとうかがいましたが?

 

北濱 当院も3年前に、異なる分野の専門医が集まり、腫瘍症例を検討する“Tumor Board”を導入しました。当初は、北海道の旭川医大から、九州の鹿児島大学まで、全国にある全ての大学のTumor Boardについて調べました。多くは1か月に1回、専門家が会議で話をするという形態で、実際の患者のレベルでないとの印象を受けました。

 

そこで当院では、毎週、問題のある症例についてプレゼンテーションを医師に行ってもらい、症例ベースで患者の特別なパターンを分析しながら、例えば、腫瘍マーカーをみてこうだったと判断しながら、参加者全員で治療方針を議論するという形式を採用しました。当院は元癌研の病理部長を採用しています。一人の患者の治療に対して、こうすべきというディスカッションを行っています。

 

佐藤 患者個人に応じたオーダーメード医療を実践しているのですね。

 

北濱 いまのTumor Boardのメンバーは医師が中心。必要に応じて薬剤師が参画しています。将来的には、この患者について、看護師、薬剤師が参画するように組織編成したいと考えています。

 

佐藤 チーム医療を軸にしているのですね。

 

北濱 縦割りではありません。例えば外科の中に消化器外科があるというのでなく、消化器内科、消化器外科が一緒になっています。同じように、呼吸器であれば呼吸器内科と呼吸器外科が一緒になってやっています。当院では放射線治療を行うリニアックを2台持っています。転移の肝臓の腫瘍をどう治療するということを皆でディスカッションしています。

 

その意味で、このクラスの病院はすごく良いです。大学病院のような大規模な組織ではできないようなことができます。Tumor Boardが毎週困難な症例や、面白い症例があると言って皆でディスカッションすることが当院の特徴と言え、これこそ日本型のTumor Boardと言えます。

 

もう一つの特徴を言えば、医師が自分の領域だけでなく、他の領域も同じように見ることができます。当院は、消化器外科のトップに三井記念病院から医師を招聘しました。この医師は東大の外科の准教授でした。放射線治療の医師は、英語論文の数が日本でナンバー1であり、海外からの治験も頼まれています。乳腺の医師も米国で8年間トレーニングを積んでいます。

 

佐藤 海外では医療ITがかなり普及しています。IT化への期待を教えてください。

 

北濱 アナログ人間なのですが・・・。珍しい症例や、新しい治療方法などに関する情報共有することは求められます。エビデンスのレベルからいうと低いものが多いと思います。

 

診療情報が近隣の開業医とつながることは望ましいです。ただ電子カルテの互換性がないのです。A病院の情報をB病院で共有できません。当院は、あと2年くらい先に電子カルテを入れ替えるが、新しいシステム既存のデータが使えないようでは問題になります。情報の共有、機械の互換性なども重要ですね。

 

佐藤 きょうは長時間にわたり、貴重なお話をありがとうございました。

 


マルチチャネル3.0研究所とは:(MC3.0研究所)
「地域医療における製薬会社の役割の定義と活動スタイルを定義することを目的にして、製薬企業の新たなる事業モデルを構築し地域社会並びに患者や医師をはじめとする医療関係者へのタッチポイント増大に向けたMRを中心とするマルチチャネル活用の検討と実践を行う研究機関」である。設立2015年4月主宰 佐藤正晃(一般社団法人医療産業イノベーション機構 主任研究員)

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