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中医協薬価専門部会 オプジーボの期中薬価引下げに診療側から慎重論 外国平均価格調整見直しへ

公開日時 2016/08/25 03:51

中医協薬価専門部会は8月24日開かれ、抗がん剤・オプジーボの期中の薬価引下げについて議論があった。支払側の幸野庄司委員(健康保険組合連合会理事)は、「市場拡大再算定を待たずに期中改定もありうるということを検討すべき」と賛成。これに対し、診療側の中川俊男委員(日本医師会副会長)は、「次の改定時に何らかの措置をするということも選択肢だ。期中改定だけを前提で議論することは、我々としては賛成できない」と慎重な姿勢を示した。厚労省は、高額薬剤への対応として、期中の薬価引下げに加え、医師要件、施設要件、患者基準を明確にする「最適使用推進ガイドライン」との両輪での施策を提案している。中川委員は、「薬事承認、薬価の在り方、最適使用推進ガイドライン、経済性の観点も含めた保険適用の在り方を一体的に議論することで、薬剤費を大幅に抑制し、公的医療保険の持続性を高めるのではないか。製薬企業を含めてオープンな形で議論していただきたい」と述べた。また、同日開かれた中医協総会では、次期薬価制度改革に向けて、外国平均価格調整の見直しが議題として浮上した。


◎薬価引下げ 市場規模の拡大率、特例拡大再算定の手法が浮上


この日、厚労省が高額薬剤をめぐり、“薬価に係る緊急的な対応”として、対象範囲を①2016年薬価改定における再算定が間に合わなかった薬剤で、2015年度末までに効能追加等がなされた、②効能・効果等の拡大による市場拡大の程度が極めて突出した薬剤で、2016年度市場規模が当初予測の10倍かつ1000億円超—の薬剤の薬価引下げを検討することを提案した。実質的に、条件に合致するのは抗がん剤・オプジーボのみで、同剤の薬価引下げを検討することとなる。


支払側の吉森俊和委員( 全国健康保険協会理事)は、基準の妥当性を確認することの重要性を指摘。その上で、「当初の企業が予定していた市場規模予測、当然のことながら市場が拡大すれば、回収コストはアップする。市場規模の拡大率に応じて、改定率(薬価の引下げ率)を決定する方法もある」との考えを示した。

支払側の幸野委員は、オプジーボの年間売上高と今後の適応拡大の状況を把握することが必要とした上で、「今改定の特例拡大再算定をオプジーボに適応する、これの変形型を作るのも一つの案ではないか」と述べた。オプジーボの類似薬である抗がん剤・ペムブロリズマブ(MSD)が早ければ年内にも承認される見通しであることから、その前に薬価引下げなどの対応を求める声もあがった。


一方、最適使用推進ガイドラインについては、薬価収載時点でガイドラインの内容を留意事項通知で周知することが提案された。支払側の吉森委員が、医師の処方権への配慮することの必要性を指摘した上で、「留意事項通知の実効性を担保するために、例えば診療報酬適応ランにガイドラインの執行状況を書き込むなど、客観的な定量的なあり方を検討していただきたい」と述べた。診療側の中川委員は、高コレステロール血症治療薬・レパーサの使用方法が留意事項通知で周知されたことを引き合いに、「適正な使用、本当に必要な患者に使うということが続くためには留意事項通知が大事だ」と指摘。「緊急的対応の中身は、最適使用推進ガイドライン、留意事項通知の追加などがある。色々な対応を考えてほしい。薬価だけではなく幅のある議論をしてほしい」と改めて求めた。


◎原価計算方式 営業利益率などが焦点に



高額薬剤をめぐり、“当面の対応”だけでなく、次期薬価制度改革に向けた議論もスタートした。類似薬効比較方式、原価計算方式ともに抜本的な見直しが行われることとなる。特に原価計算方式については、診療側の中川委員は、原価計算方式を“メーカーの言い値”と語り、支払側の幸野委員も原価計算方式の営業利益率に言及する一幕もあった。


中山薬剤管理官は、「さまざまな議論があり一定の妥当性があると確立されてきた」とした上で、「原価計算方式については、この薬剤を研究開発するのにかかった経費は売り上げに割り戻して薬価に積み上げる。そういうことについて仮に大きな市場規模拡大があった場合に妥当性があったのかという点や、議論すべき点はある」と述べた。


◎加茂谷専門員 革新的薬剤が“あたかも悪者”「企業として残念」



専門委員の加茂谷佳明氏(塩野義製薬常務執行役員)は、こうした議論について「高額な薬剤は、まさに革新的な医薬品だ。待ち望んでいる患者が現にいる。一日も早く必要とする患者に届けることが製薬企業の使命だ。オプジーボは、日本の研究者が20年をかけて開発され、世界に先駆けて上市した免疫チェックポイント阻害薬、まさに革新的な医薬品だ。日本発のイノベーションや多くの患者の治療に役立ていただきたいと効能追加したことが、高額薬剤としてあたかも悪者のような印象、風潮になっているのは企業として残念である。革新的医薬品だということを前提に議論していただきたい。日本における革新的な医薬品について効能追加をためらわせるようなことはないようにしてほしい」と述べた。

これに対し、診療側、支払側ともにイノベーションの重要性を認めた上で、診療側の中川委員は「革新的医薬品が患者の経済によらず、平等にいきわたるように最後まで頑張っていきたい」、支払側の幸野委員は「高く売れすぎた薬が悪いと言っているわけではない。適応拡大されて、利益が積み上げられていることを見直すべきだということを議論している。利益を相当に回収しているのであれば、国民に少し還元していただきたいということ」と述べた。


今後は、9月にも業界団体からのヒアリングを実施。9月中に最適使用ガイドラインの医療保険上の取り扱いを、10月中に薬価上の緊急的な対応を決める。さらに、来年3月には薬価制度を含めた次期改定に向けた取組について中間とりまとめを行う方針だ。


◎次期薬価制度改革 外国平均価格調整見直しへ



同日開かれた中医協総会では、乾癬治療薬・トルツが高薬価であることをきっかけに、次期薬価制度改革で外国平均価格調整の見直しの必要性が浮上。各側ともに次期薬価制度改革の中で検討していくことに合意した。

同日薬価収載された乾癬治療薬・トルツは、外国平均価格調整の結果、類似薬効比較方式で算定されているにもかかわらず、同種同効薬のコセンティクス、ルミセフの倍以上の1日薬価がついている。

薬価算定委員会の清野 精彦委員長は、「現行のルールに従って薬価を判断している。基本的なルールの変更は、ぜひお願いしたい」と述べ、見直しの必要性を強調した。

支払側の吉森委員は、「外国平均価格調整は、薬価制度改革の総論の見直しが始まったところなので、入れるべきだ」と主張。米国と英国で薬価が3倍近く開いていることを指摘し、「英国では費用対効果という新薬の収載基準の中で対応しているのではないかと考えると、単純に価格だけ見て平均価格をとるというのはいかがなものか」との見解を示した。

診療側の安部好弘委員(日本薬剤師会常務理事)は、「米国では、他の国と比べれば突出して高い価格がついている」と説明。最高価格が最低価格の3倍を上回る場合は薬価算定の段階で除外することになるが、「3倍を越えず、比較する国が少なければ影響が大きいということもある」と指摘した。

 

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