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政府 抗がん剤・オプジーボの薬価50%引き下げで最終調整

公開日時 2016/11/10 03:53

政府は11月9日、高額薬剤問題で焦点となっていた抗がん剤・オプジーボの薬価の臨時特例的な対応として、2017年4月に50%引き下げる方針で最終調整に入った。当初25%を引き下げ幅のラインとして調整を進めたが、政府与党を中心にさらなる引き下げを求める声が強まっていた。薬価の引き下げは現行ルールの特例拡大再算定を適応する。算定にあたっては、同剤の年間予想販売額1260億円は仕切り価ベースであることから、消費税、流通経費、市場実勢価格と薬価の乖離率を考慮した金額が薬価ベースでの年間販売額に当たると判断。特例拡大再算定ルールに照らし、年間1500億円超で予想の1.3倍以上の条件に該当することから50%の引き下げを決めた。厚労省は16日開催予定の中医協に同案を提示する。

オプジーボをめぐる高額薬剤問題の発端は、今年4月の財務省・財政制度等審議会での議論にまで遡る。財務省主計局は、オプジーボを投与される患者1人当たりの薬剤費が年間3500万円、患者数が5万人であれば年間1兆7500億円の薬剤費にのぼるとの推計値を提示した。医療保険財政とイノベーションの両立というテーマは中医協や経済財政諮問会議、さらには与党厚生関係議員にまで波及し、社会保障費の伸びの適正化とも相まって議論が進められた。

オプジーボの薬価が高額になった背景には、最初に取得した適応症の「根治切除不能な悪性黒色腫」の推定患者数470人をもとに値付けされた経緯がある。同剤は昨年12月に「切除不能な進行・再発の非小細胞肺がん」を追加効能として取得。薬価は変わらないものの、予想対象患者数が32倍、売上予測が41倍に膨らんだ。オプジーボに代表されるスペシャリティー新薬の多くは、効能拡大を主眼とするライフサイクルマネジメント(LCM)戦略が一般化されている。同剤は、今後もさらなる適応追加が見込まれ、その都度、対象患者数の増加に伴う薬剤費の増加が予測されている。


社会保障費の抑制が2017年度予算編成の争点となる中で、経済諮問会議の民間議員が「オプジーボに係る薬価の大胆な引下げ、効能追加などに伴う期中の再算定ルールの明確化を実行すべき」と求め、追随する格好で政府与党や経団連などから大幅な薬価引き下げを求める声があがる。社会保障費の自然増の伸びを5000億円に抑えるために、17年度予算編成に際し、1400億円の圧縮が求められている。高額療養費制度の見直しなど医療保険関連の改革項目がリストアップされるなかで、高齢者や低所得者への負担増を回避すべきとの慎重論が与党内からあがる一方で、財政影響面から、欧米よりも高額であるオプジーボの薬価に切り込むべきとの声は強まるばかり。製薬業界側の「現行のルールにない、ルール度外視の引下げは行うべきではない」との主張をかき消すように、一気に臨時特例的な薬価引き下げの外堀が埋められた。


◎16年度改定で新設の特例拡大再算定のルールを適応 C肝薬などに次ぐ5剤目に

11月7日の週からは、具体的な薬価引き下げルールと下げ幅の議論が本格化。特例拡大再算定に加え、外国平均価格調整を用いることで、50%の引下げを求める声もあった。これに対し、厚労省は現行の薬価制度を維持する姿勢を崩さず、2016年度薬価改定で新たに導入された特例拡大再算定のルールを適応する方針で政府・与党間の調整に臨む。特例拡大再算定のルールは、▽年間販売額1000~1500億円で予想の1.5倍以上で最大25%、▽年間販売額1500億円以上で予想の1.3倍以上で最大50%―の2段階で引下げを行うこととしている。


今年度は改定年ではないことから薬価調査を実施しておらず、小野薬品の推計による1260億円を当てはめれば、最大で25%の薬価引下げが行われることとなる。一方で、同社の推計による売上高は仕切価ベースであり、薬価ベースでないことから、価格は下振れして提示されることになる。そのため、厚労省側は、消費税、流通経費、市場実勢価格と薬価の乖離率を補正した金額を求め、引下げ幅を決めるに至った。


◎MSD・キイトルーダ 高額薬剤問題回避で11月収載見送り NSCLC適応取得後の収載目指す


この日開かれた中医協総会では、薬価収載の可否が議論されたが、オプジーボの類薬であるMSDのキイトルーダ(一般名:ペムブロリズマブ)は企業側が11月の薬価収載を見送ったことから、議論の俎上にのぼらなかった。同剤は、オプジーボと同等の薬価付けが見込まれており、収載の可否が注目されていた。悪性黒色腫を効能・効果として9月28日に承認を取得したが、「切除不能な進行または再発の非小細胞肺がん(NSCLC)」の適応で申請中。こうした状況を鑑み、「NSCLCでの適応を取得後の最も早いタイミングでの薬価収載を目指す」(同社広報部)としている。なお、同社は2016年2月29日に同適応で申請を行っており、早ければ来春にもNSCLCのセカンドラインとしての適応取得が見込まれている。

 

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