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国がん AI活用でプレシジョン・メディシン実現目指す 創薬、診断への応用も

公開日時 2016/11/30 03:51

国立がん研究センターとPreferred Networks(東京都千代田区)、産業技術総合研究所は11月29日、人工知能(AI)を活用した統合的がん医療システム開発プロジェクトをスタートすると発表した。国立がん研究センターの有する臨床情報、ゲノム情報、画像や血液などの生体分子情報、疫学データ、文献情報などのビッグデータをAIの活用により、統合的に解析。がんの本態解明を進め、個々の患者に最適な治療を届けるプレシジョン・メディシン(最適医療)を実現したい考えだ。5年後を目途にがんの診断、個々のがん患者にあった治療法の選択、創薬などの実用化を目指す。


個々の患者に見合った治療を選択するプレシジョン・メディシン(最適医療)は、欧米各国でも進められており、いまや世界の潮流とも言える。こうした中で、日本の“ベスト・オブ・ベスト”とも言えるメンバーを集結させ、国策との意気込みをもって取り組むのが同プロジェクトだ。


◎13種類のがん診断を可能に 19~21年度の実用化視野 



プロジェクトでは、現在国立がん研究センターが中心となって全国規模で構築されているデータベース「SCRUM-Japan」、「TOP-GEAR」などで集積されたゲノム情報、エピゲノム、画像情報、microRNA/血液など多種多様なデータを、改正個人情報保護法に対応し、ビッグデータとして統合、整備をすすめる。その上で、深層学習(ディープラーニング)を中心としたAIによる解析を活用することで、より精度の高い個別化医療の実現を目指す。欧米でも同様の試みも進むが、日本で集積したデータの質の高さ、精度が一つの強みという。


実用化に最も近いのが、microRNAと血液検査で一度に13種類のがんを診断するシステムの開発だ。1~10万規模のデータ集積を視野に入れるが、すでに多くの患者のデータが解析可能な状況。2019~21年度の実用化を目指し、改良を進める。また、AI技術を活用することでヒストン修飾を高速、高精度で測定する、次世代型シークエンス解析ChIP-Seq解析法を確立。がん組織におけるヒストン修飾状況の解析、診断・創薬への応用を目指す。2019~21年度に次世代型ChIP-Seq解析法として実用化を目指す。


そのほか、2021年度までに実用化のめどを立てる項目としては、▽医用画像解析を通じて、コンピューター診断支援や、人間の識別能力では困難だった治療効果予測や予後推定、病理や遺伝的因子の推定などを行う(CTやMRIなど多くの電子データが解析可能、データ数は数万~数十万)、▽正確な患者情報にひも付られたNGSシークエンスデータが少ない中で、少ないNGSシークエンスデータからも学習を可能とした、半教師あり学習など新たな手法を取り入れて、プレシジョン・メディシンを指向したAIによるがん治療の最適化/クリニカルシークエンスデータの検証・新規開発(多くの患者のシークエンスデータが電子データとして解析可能、数千~数万)をあげている。


◎間野国がん研究所長「産官学一体で世界に伍していきたい」



同研究は、国立研究開発法人科学技術振興機構の戦略的創造研究推進事業(CREST)に採択。最初の2年4か月の予算は8000万円。この間にProof of Concept(POC:概念実証)の取得をめざし、審査に合格すれば追加で3億円の予算を確保することになる。代表者は、国立がん研究センター研究所の浜本隆二・がん分子修飾制御学分野長。


同日の記者会見で、国立がん研究センターの間野博行研究所長は、「AIはメディカル市場で非常に大きなフィールド、産業になる。日本はこの分野で後れを取っている。今回のプロジェクトには、日本のベストオブベストに集まっていただいた。産官学が一体となって、世界に伍していきたい」と述べた。
 

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