医療ICT革命はどのように進んでいくか MC3.0総括編

公開日時 2016/12/26 00:00
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マルチチャネル3.0研究所
主宰 佐藤 正晃

 

2015年7月より連載開始したMC3.0時代到来であるが、当時は地域包括ケア時代の製薬企業のあるべき姿などと言っていたが正直あまり業界ではピンときていると話をしてくれる人が少なかった。ところが現在では製薬企業にエリアマーケティングの専門部署が立ち上がっている。残り数回に分けて全体の総括と今後医療産業に起こるであろうイノベーションに関して話をしてゆきたい。

 

MRの環境の変化と医療ICT革命

 

今更ながらではあるがMRの活動、大げさに言えば存在意義、役割が大きく変化しているのは読者ご存じのとおりである。業界全体の方向性として、2012年「医療用医薬品製造業公正競争規約」改定以降「持ちつ持たれつ」のMRと医師の関係が大きく変わってきた。その後数年間で製薬業界を震撼させる論文不正事件等が発覚するなどしてCOI(Conflict of Interest)に対する世論の厳しい目も高まり業界全体でプロモーション活動自体を自粛する動きが高まっている。そんな中、MR自身もどのように活動していいのか葛藤の連続であったと思う。

 

私は今回の連載を通して医療産業自体の産業構造の変化を政府や医療機関や先進的な企業の取り組みを紹介する事により先ずは市場環境を知る。そしてその中で自分の役割を見つけ出し、具体的なアクションに結び付けるための方策を業界関係者で議論するきっかけを作ろうと考えていた。医療関係者に話を聞くとMRは自社の薬の処方依頼に一生懸命ではあるが、医療現場の変化に疎いのではないかという声が多数聞こえていた、それは製薬業界自体が時代の変化についていけるかという問いかけにもつながる。

 

医療現場のイノベーションとして最近あげられる、遠隔診察の方向について述べる。医師法第20条の「医師は、自ら診察しないで治療をし、若しくは診断書若しくは処方せんを交付(中略)してはならない」と言われる対面の原則があり長らくの間テレビ電話などを使った遠隔診療を一部の特例を除き認めていなかった、しかし厚生労働省による2015年の遠隔診療事務連絡により、対面と遠隔診察を組み合わせることで事実上のインターネットライブ配信などを活用した遠隔診療の活用を前向きにとらえる動きになってきている。

 

SNSの発展により医師間でのオンライン症例検討会や患者がオンラインで医師に相談できるサイトなど多数生れている。それは、製薬企業においても医師とMRのタッチポイントの変化に同様である、2000年後半よりe-Detailの発展がスタートした。SOVを中心としたMR訪問全盛時代において当時はあくまでもMRを補完するものとしてeの活用が進んでいった。しかしながら実際には訪問規制の広まり等や医師の行動変容に伴いプロモーション活動としてはなくてはならないチャネルになる。

 

デジタルソリューションの進化はすさまじいものがあり、デジタルチャネルの多様化→顧客に対応したデジタルチャネル→医師間の連携を促進するチャネルといったステップで浸透が進んでいく。もちろん薬剤の特徴によりデジタルチャネルの活用は異なり、プライマリーケア領域では、SOVを上げることが処方拡大につながるために、eディテーリングやWeb講演会のリーチ数(視聴者数)の拡大が重点課題と考えられる。スペシャリティ領域(癌領域等)では、医師がより積極的に情報収集を行う傾向にある。

 

 

MC3.0研究所の活動を総括する

 

訪問規制、医療費の高騰、接待規制、プロモーションコードの強化、マルチチャネルの浸透等製薬企業を巡る環境は激変している。様々な環境変化に伴い、顧客の状況に対応したマルチチャネルの戦略が必要とされる中でこれまで製薬各社「製品軸」「顧客軸」での販促活動を行っていた。しかしながら、「地域軸」での活動に関してはほとんど行っていなかったのが現状である。一方、厚生労働省としては地域包括ケアを推進しており、2016年度診療報酬改定においては地域包括ケアシステムの推進と医療機能の分化・強化、連携に関する視点として(1)医療機能に応じた入院医療の評価(2)チーム医療の推進、勤務環境の改善、業務効率化の取組等を通じた医療従事者の負担軽減・人材確保(3)地域包括ケアシステム推進のための取組の強化(4)質の高い在宅医療・訪問看護の確保(5)医療保険制度改革法も踏まえた外来医療の機能分化の5点を軸に取り組みの強化を行っている。

 

 

医療機関が製薬企業に望む事

 

これまでMC3.0では様々な医療機関の取材を通して医療ICTをベースとした現場の様々なインタビューを伝えてきた。地域包括ケア時代の製薬企業の活動に対してはかなり厳しいコメントが多数あった。「これまでのMR活動は対象を医師に絞ってきたことに問題がある。医師は新薬について必要に応じ自分で勉強する。むしろナレッジを埋めるという点では、保険薬局で在宅医療を支える薬剤師と組むことが求められるのではないか」。京都第二赤十字病院  田中 聖人先生談 実際MRの活動幅自体はかなり限定的になっているのは言うまでもなく様々な医療職種と連携を取りながら事業を進めなければならない。

 

処方元の医師を抑えることは非常に重要である一方で、医療多職種連携の時代に医師と連携するビジネスモデルだけではコミニュケーションゴールを達成することはできない、どのようにして面で医療産業を抑えるかが非常に重要なテーマなのである。

 

勿論、実際の地域医療の現場に即した情報収集や情報提供コンテンツの選択をすることも製薬企業として急務である。

 

「大学の教授と製薬会社は良い悪い含め過度に関係を持ちすぎた歴史がある。製薬企業も変わってきていると思うが、できればお抱え学者でない、実践的な医師にフォーカスをして欲しい。最先端の医療を学ぶことが本当のプライマリーケアに必要かというと、決してそうではない。地域医療のシステムを作ろうとしている医師や医療者にもっとフォーカスして欲しい。むしろ地域の医療ニーズを理解していると話が出来ると思う」(石巻市立病院開成仮診療所 長純一先生談)新薬の情報提供ももちろん大切ではある一方で実際に現場でのニーズに即した対応の依頼などはMRにとっても頭が痛いコメントである。

 

 

地域包括ケア時代のエリアマーケティングとは

 

これまではHPやGP担当のMRが個別医療機関を訪問して、自社の薬剤のプロモーション、医師や医療機関の治療方針における自社製品のプレゼンス向上をメインに活動を行ってきた。しかしながら地域包括ケア時代の今地域ニーズをつかみエリア全体を攻略する活動が必要になる。地域やグループの治療方針における自社製品のプレゼンスの向上に向けてのメッセージを発信しなければならない。例えばその中の話題としては、医療圏全体の患者動向、医療圏内の機能分化検討に必要な情報、医療圏内の治療方針立案に必要な情報などが必要になってくる。このような情報を入手するためには、新しいリソースを活用してマーケティング活動を行わなければならない。昨今様々なデジタルヘルスベンチャーが生まれてきており、その中にはこれまで可視化するのが困難と思われてきた様々なデータを組み合わせて販売するヘルステックベンチャーも存在しているので上手く活用するのも一考である。医療業界のイノベーションを牽引していく様々なICT企業が誕生している、現在製薬企業においてもデジタルヘルスに注力する企業が増えてきている。

 

ソフトウェア利用に薬価がつく時代ICTと製薬今まで近くで遠い関係が一気に急接近してきている。私自身デジタルヘルスの領域の熱は今後ますます高まると感じている。次号に続く。

 


マルチチャネル3.0研究所とは:(MC3.0研究所)
「地域医療における製薬会社の役割の定義と活動スタイルを定義することを目的にして、製薬企業の新たなる事業モデルを構築し地域社会並びに患者や医師をはじめとする医療関係者へのタッチポイント増大に向けたMRを中心とするマルチチャネル活用の検討と実践を行う研究機関」である。設立2015年4月主宰 佐藤正晃(一般社団法人医療産業イノベーション機構 主任研究員)

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