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製薬業界 薬価乖離率・約9.1%に驚きと戸惑い 薬価制度改革の先の市場を垣間見た

公開日時 2017/12/07 03:52

厚労省が12月6日の中医協総会に報告した薬価乖離率・約9.1%、内用薬10.1%の報に製薬業界関係者は一様に驚きと戸惑いの表情を見せた。薬価の乖離率は現行の調整幅を用いた薬価算定方式を導入した2000年度以降、最大となった。特に、内用薬は10.1%と初の二桁台まで拡大した。マーケットの構造変化は着実に進んでいる。ひとつは後発品の浸透、特に2016~17年はARB・テルミサルタン、抗アレルギー薬・モンテルカスト、脂質異常症治療薬・ロスバスタチンなど、大型品の後発品参入が相次いだ。特にオーソライズド・ジェネリック(AG)の参入は、先発、後発双方の価格に大きな変動を生んだ。ただ、要因はそれだけでは語れない。もうひとつ見逃せないのが、多剤併用や残薬への対応など、医薬品の総量規制の影が見て取れる。


なぜ、薬価乖離率が過去最大となったのか。ひとつの答えが、後発品市場の競争激化にある。ここにAGが参入したことで、マーケットメカニズムをさらに複雑化させた。今回の薬価本調査の速報値をみると、血圧降下剤で13.3%、高脂血症用剤12.7%、その他のアレルギー用薬14.5%、精神神経用剤10.8%と、いずれもマス市場に複数の競合薬の存在する製品群を中心に乖離率が拡大していることがわかる。血圧降下剤に注目すると、2007年当時、ARBの先発品同士が市場シェアの獲得競争を繰り広げていた時の薬価乖離率は5.7%。それから10年を経過した今回の薬価乖離率は13.3%と、7.6ポイントも市場実勢価格が下落したことになる。もちろん、この10年間で先発品の特許が満了し、後発品がなだれ込むように参入、市場シェアを広げ、価格面にインパクトをもたらしたことは明白だ。加えて、近年になり、先発系ジェネリックメーカーが主導でAGビジネスを展開するようになると、対先発に対する市場アプローチもより精密化され、シェア争いと価格面での凌ぎあいが激化することになる。


マーケット関係者によると、9月は薬価調査があることから、通常は春先から8月にかけて、先発メーカーは医療機関や保険薬局へのアプローチを強めるという。マーケティング的には定石とされ、後発品やAGの上市数か月前から市場の流通在庫を通常時より増やす戦略に出ることもある。先発品の供給が過剰な状況下で後発品やAGが市場参入するため、購入サイドからのバイイングパワーも強まる。この結果、市場実勢価格を下げる方向にベクトルが働くのだが、そこでもう一つ注目すべきは、必ずしも後発品の価格を引き下げるだけでなく、先発品の価格にも少なからず影響を与え、結果的に先発・後発ともに市場実勢価格を下落させる方向に向かうということだ。


流通当事者によると、特にこれまで薬価差益をメリットとしてきた生活習慣病治療薬の特許切れが相次いだ2017年は、例年を上回る市場への製品の流入が見られたという。ここで改めて注目すべきは、今回の薬価制度改革案で示された長期収載品の薬価引き下げルールだ。後発品のシェアに応じ、段階的に長期収載品の薬価を引き下げ、最終的に長期品と後発品の薬価を一体化する考え方は、実は、いまマーケットで起こっていることと同様に、後発品やAGが市場参入し、市場実勢価格を着実に下落させる市場メカニズムを働かせるパワーを秘めている。ここ数年間に行った国主導による後発品市場浸透策と、そこでの市場競争によってもたらされる市場実勢価格が融合することで、長期収載品の特許切れ後のマーケットにおける価格防衛策や営業コストをかけた市場アプローチを無力化するには最適な方策と見ることができるかもしれない。


◎ジワジワ効いてきた医薬品総量規制の影響


一方で、残薬や多剤併用の課題を克服するための施策が医療現場に与えたインパクトを指摘する声もある。医薬品市場全体の伸びが抑制される傾向にあるのだ。今回の取材で、前回16年度診療報酬改定で新設された、減薬が評価される「薬剤総合評価調整加算」(250点)の影響が大きいとの声も聞いた。1処方当たり湿布薬の70枚上限設定など、医薬品の処方の総量にいわばメスを入れる改革が導入されたことを指摘する声もある。実際、C型肝炎治療薬の薬価引き下げなどによる影響はあったものの、2017年に入り1処方箋当たりの薬剤料や種類数はすでに減少に転じている。こうした中で、いわば医薬品の供給過剰な状況にあったことが価格の崩壊、さらには価格競争のさらなる激化要因を生み出したとの見方もある。


これらの競争市場の製品を数多く取り扱うチェーン薬局のバイイングパワーが増したこともひとつの大きな要因だ。2016年度診療報酬改定で、かかりつけ薬剤師の推進、門前薬局の評価の適正化、チェーン薬局への切込みなどが実行に移される中で、経営の厳しさから身売りする保険薬局も増加した。未妥結減算制度が導入される中で、妥結のために価格崩壊も起きてしまっているのが現状だ。ジェネリックメーカーにとっても、薬価差を武器にシェアを獲得してきた。いわば、保険薬局がスケールメリットを生かし、薬価差を求める保険薬局とジェネリックメーカーの思惑が一致した結果とも見て取れる。

 


 

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