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武田薬品・濱村RDBUヘッド HAEの患者支援エコシステム実現 AI受診相談・問診などIT企業と協業

公開日時 2021/06/07 04:52

武田薬品レアディジーズビジネスユニット(RDBU)の濱村美砂子ヘッドは本誌とのインタビューに応じ、希少疾患患者の早期診断をデジタルで支援するエコシステムの実現に注力する方針を明らかにした。遺伝性血管性浮腫(HAE)は、診断率20%、初発から診断まで平均13.8年を要すという。濱村ヘッドは、患者の早期診断を支援するためには、AI疾患コンサルト、AI問診サポート、AI受診相談といった各段階をIT企業と協業することで新たなエコシステムを形成・構築する必要があると指摘。この取り組みに強い意欲を示した。一方でRDBUのMR活動については、「医療の世界もデジタル化が進んでいくと思うので、それに見合うレベル感や価値観を持ったMRが重要になる。デジタルとの融合性の高いチームにしていきたい」と強調した。

「我々のビジョンは、エコシステムの形成、改善を通じ、患者と家族に価値提供できるパートナーになりたいことだ」-。インタビュー冒頭で濱村ヘッドはこう語った。「希少疾患の領域は患者を取り巻くエコシステムが未熟(インマチュア)な状態だと思う。そうしたものを少しでも改善していきたい。通常だと製薬会社は医薬品を開発し、これを患者に届けることが使命となるが、それに止まらず、しっかりと患者の周辺を取り巻くエコシステムを改善することを目指す。これが武田薬品の考え方だ」と言い切った。

RDBUが取り組む遺伝性血管性浮腫(HAE)は、国内推定患者数が2500人に及ぶ一方で既治療患者数は約450人に止まる。医師の疾病認知率も45%で、その結果、初発から診断まで平均13.8年の期間を要する。「患者の時間を無駄にしてはいけない。少しでも改善できることはないか」(濱村ヘッド)との想いの中、2020年1月に「日本における希少疾患の課題」と題する独自の白書を刊行した。白書の副題には「希少疾患患者を支えるエコシステムの共創に向けて」とのタイトルが掲げられている。民間の資源を活用した疾患啓発、デジタルトランスフォーメーションの加速、医療連携の強化が提言されたのは、この時が初めてだ。

◎1社で頑張るよりステークホルダーと協業した方が患者にベネフィットを提供できる

白書の提言を受けて、武田薬品による患者の課題解決に向けたエコシステムの実現への取り組みが始まった。濱村ヘッドはインタビューで次のように語っている。「AIを用いた早期診断のサポートや遠隔相談、オンラインコミュニケーションなどを考える中で、武田薬品が1社で頑張るよりは、IT関連企業やアカデミアなどのステークホルダーと協業しながらやっていく方が患者に大きなベネフィットを提供できるのではないか」-。その結果、患者のAI受診相談はUbie(ユビー)とエムスリーが運営するAskDoctorsと協業。非専門医と専門医のコミュニケーションはUbieのAI問診やエクスメディオの「ヒポクラ×マイナビ」と協業することになる。いずれも検査・発病、診断、治療の各段階におけるペイシェントジャーニーの改善を意識したエコシステムを実現するもの。患者向けと、医師向け-のそれぞれの課題をデジタルやインターネットを活用して改善するという取り組みだ。

◎患者の悩む時間を減らす 患者がちゃんと専門医に辿り着けることをサポート


濱村ヘッドは、「何の病気か迷ったときに症状を入力すると、参考病名を表示してくれるというのが、AI受診相談だ。病院検索システムを使って施設を探すこともできる」と説明し、「これで患者が悩んだり、さまよう時間を少しでも減らすことができる」と期待感を表明した。一方、医師同士のコミュニケーションの部分では、「医師はAI問診表で答えた内容について、HAEと関連する症状がある場合は、そのアラートを受け取ることができる。その上で本当にHAEなのかを専門医に相談することもできる。デジタル系企業と協業することで、患者がちゃんと専門医に辿り着けることをサポートするシステムを開発することができた」と自信をのぞかせた。

◎コンソーシアム設立にも関与 新たな診断支援システムや疾患啓発に期待

さらなる取り組みにも挑戦している。マルチプルステークホルダーとの協業だ。今年2月に設立した一般社団法人・遺伝性血管性浮腫診断コンソーシアムにも参画している。コンソーシアムは武田薬品以外に鳥居薬品やCSLベーリングも名を連ねる。濱村ヘッドは、「今後はIT企業にも入って頂いて電子カルテのスクリーニングなど、医療データ、AI分析、非専門医の診断を支援するシステム開発、未診断の患者の疾患啓発などを考えていきたい」と期待感を表明した。

一方、患者支援として「TOMO」と呼ばれる患者サポートプログラムを設けた。濱村ヘッドは、「医療のサポートでなく、患者さんの悩みを減らすためのアドバイスや心の支え、あるいは、学校や保育所などで血友病の患者さんを預かって頂けない時にどうすれば解決できるかなどの相談を受けている。HAEと血友病で始めた」と述べ、患者の日常生活などにも寄り添う活動を支援する考えを明らかにした。

◎RDBUのMR活動 「デジタルとの融合性の高いチームに」


MR活動の今後についても聞いた。濱村ヘッドは、「これからはデジタルとの融合性の高いチームにしていきたい。我々はコンサルタント型MRを目指している。廊下で立ち待ちするのでなく、医師に相談される、医療のコンサルタントになれるようなMRになれるよう教育していきたいと思う」と述べた。今後のMR像については、「やはりオムニチャネルアプローチのようなものを取り入れて、“これが欲しかった”という情報が欲しいタイミングで届くような仕組みを作り、これをオーケストレーションできないとMRの役割を果たせないのではないか」と強調してくれた。







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