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BMS・杉田研究開発本部長 国際共同試験「可能な限り日本も入れていく」 バリューを届けることが使命

公開日時 2022/11/28 04:52
ブリストル・マイヤーズ スクイブ研究開発本部の杉田真本部長は本誌取材に応じ、「我々は、サイエンスを通じて患者さんの人生に違いをもたらすことが可能な疾患領域に対し、サイエンスでアプローチすることに注力している」と強調した。バイオファーマとして成長するBMSの原動力はR&Dだ。11月に新発売した経口投与可能なチロシンキナーゼ2(TYK2)阻害剤「ソーティクツ錠6mg」は、米国FDAの承認から約2週間後に厚労省が薬事承認した。加えて、国内での審査期間が米国より短かったことも注目された。杉田本部長は、「こうした薬剤開発は、エクスターナルのサイエンスや外部のアセットを取り込むことが一つの方法だが、ソーティクツは、内部のサイエンティストが開発したということで非常に意義深い」と指摘した。

BMSは、固形がん、血液疾患、免疫系疾患、心血管疾患などのフォーカスエリアに特化し、国内で唯一2剤のCAR-T細胞療法製品を自前で持つ。11月に発売した乾癬治療薬・ソーティクツはTYK2に対する選択的な阻害効果を持つ新規の作用機序を持つ。大きく分けるとJAKファミリー(JAK1、JAK2、JAK3、TYK2)であるものの、作用機序がこれまでと全く異なっているのが特徴だ。杉田本部長は、「この薬剤はTYK2を阻害することで、乾癬の原因となるIL-12、IL-23、IFN-αによる刺激が核に伝わることを遮断して炎症を抑え、乾癬の進行を抑制する」と説明。「日本では尋常性乾癬に加えて、乾癬性紅皮症と膿疱性乾癬の2つの適応を取得している。ほかにも免疫性疾患領域においては炎症性腸疾患(IBD)や全身性エリテマトーデス(SLE)といった免疫原性疾患に対する臨床試験を行っている。この領域の薬剤には、関節リウマチ治療薬のオレンシアがあるが、それ以外の低分子化合物を開拓しようとしている」と述べ、同薬剤を通じた研究開発の広がりに期待感を表明した。

◎ソーティクツ 患者さんの利便性を重視 1日1回で治療できて症状改善も早期に期待できる薬剤

グローバルの開発方針について杉田本部長は、「BMSは低分子、バイオの両方で研究を進めている。例えばいま研究が進んでいるcendakimabは好酸球性食道炎に対する薬剤で、これは高分子化合物だ」と指摘する。その上で、「サイエンスをベースにこの20年間はバイオが非常に盛んだった。バイオの経験を沢山蓄積する中で、今回のソーティクツは1日1回の経口薬なので、患者さんの利便性を重視し、1日1回で治療ができて症状の改善も早期に期待できる薬剤ということで、我々も非常に期待を持っている」と述べた。

◎オプジーボ 非小細胞性肺がんの術前補助療法などに期待 

オプジーボについては、「新たな適応取得への取り組みを進めている」と明かした。この薬剤は小野薬品との協業が進んでおり、BMSはアジア地域で罹患率の高い疾患に対して臨床試験を行っている。杉田本部長は、「すでに胃がん、食道がんなどファーストラインに近いところで提供できるようになった。今後は、非小細胞性肺がんの術前補助療法などで申請を行っているところ」と述べた。

一方で臨床段階では、BMSがグローバルで買収したマイオカーディア社のmavacamten(マバカムテン)がある。杉田本部長は、「これは閉塞性心筋肥大症に対するミオシン阻害剤で、米国では承認を取得した。当初マイオカーディア社が日本を国際共同試験に入れていなかったので、この製品をいかに日本で早期に開発していくかが現在課題になっている」と明かしてくれた。

◎可能な限り日本も国際共同治験に組み入れ、バリューを日本の患者さんに届ける


杉田本部長は、「日本も国際共同試験に入れるものは可能な限り入れていこうという形で進んでいる」と強調。「もちろん日本で罹患率が低いものは別途考える。あと日本独特というか日本に非常に認められた疾患、例えば先ほど申し上げたcendakimabについては、炎症性食道炎だけでなく、日本では比較的認められている胃腸炎について追加の試験ということが含まれる」と述べた。他にもソーティクツについては膿疱性乾癬や乾癬性紅皮症など日本に患者さんが多いことから国際共同試験では主となる尋常性乾癬の患者さんを登録し、加えて国内試験を活用して膿疱性乾癬、乾癬性紅皮症の患者さんを組み入れることを検討したという。杉田本部長は、「可能な限り日本も国際共同治験に組み入れながら、日本でのバリューを患者さんに届けることが、我々の使命になっている」と述べた。

◎「かなり風向きが変わってきた」 サイエンスをベースに患者のアンメッドメディカルニーズを特定

「かなり風向きが変わってきた。一つには米国で新しい法案(IRA=インフレ抑制法案)が通って、それが製薬業界全体に影響を及ぼすのではないかと言われている。また、ドイツも今までヨーロッパで比較的メーカーにとって有利だったのが、かなりアクセス面で課題が出てきている。その中で日本はいろいろ課題があるにせよ、薬事承認から60日から90日で薬価収載されるなど、ある程度見通しのつく市場でもある」-。杉田本部長は世界市場からみた日本のマーケットをこう表現する。続けて、「もちろん日本独特の考え方もある。言い方に気をつけなければならない」とも前置きしながら、「日本は我々にとって追い風になるようなところもあるので、そこをうまく見つけていくのが課題なのかなと思う」と語ってくれた。

「ただ、この20年間にあったブロックバスターのようなビジネスっていうのは非常に難しくなっているのも事実。やはりサイエンスをベースにしっかりとターゲットの患者さんのアンメッドメディカルニーズを特定し、診断されず困っている患者さんを見つけていくかが重要になるのではないかと考えている」と述べ、製薬ビジネスの変革に思いを込めた。


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