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【SABCS速報】ATLAS   ER陽性乳がん患者へのタモキシフェン10年投与の有用性示す

公開日時 2012/12/10 06:00

エストロゲン受容体(ER)陽性乳がんにおいて、タモキシフェンの補助療法を標準治療の5年間から10年間に延長することで、再発と乳がん死のリスクを有意に低下することが示された。ランダム化比較試験「ATLAS(Adjuvant Tamoxifen:Longer Against Schorter)」の長期試験の結果から分かった。12月5~8日まで米サンアントニオで開催される第35回サンアントニオ乳がんシンポジウム(SABCS)のGENERAL SESSIONで5日、英・Oxford UniversityのRichard Gray氏が発表した。


試験は、タモキシフェン投与による補助療法の治療期間を10年間に延長することで、これらのリスク削減効果がさらに増大するかどうかを、大規模被験者で検討した。


対象は、5年間のタモキシフェン補助療法を完遂したER陽性患者6846例で、①10年間治療継続(さらに5年継続)群3428例、②5年間で治療を中止する群3418例――に2群に無作為に割り付けた。対象患者のうち、アジア/中東は25%、ラテンアメリカから28%が登録された。リンパ節陰性は54%だった。評価項目は、コンプライアンス、再発、死亡とした。


なお、ER陽性乳がん患者を対象とした、5年間投与の有用性については、メタ解析の結果で行わなかった患者と比べ、治療期間中だけでなく治療開始から10年間の再発率を低下させ、乳がん死のリスクは15年間で約1/3低下することがすでに報告されている。


◎再発率、乳がん死低下 10年目以降に顕著に


平均8年間の追跡した結果、再発は、10年間治療継続群で617例/3428例、5年間群で711例/3418例で、10年間治療継続群で有意に発生率が低かった(p=0.002)。乳がん死は、10年間治療継続群で331例、5年間群で397例だった。


10年目の再発率は、5年間群の14.5%に対し10年間治療継続群で13.1%、15年目の再発率は5年間群で25.1%、10年治療継続群で21.4%だった(通年でp=0.002)。再発率の率比(RR)は、5~9年で0.90、10年目以降は0.75で、リスク低下は、10年目以降に顕著になることが分かった。
乳がん死においても同様の傾向が見られ、5~9年のRRは0.97、10年目以降のRRは0.71で、10年以降でリスク低下が有意に大きくなった(p=0.0016)。10年間治療継続群では10年目以降のリスク低下は29%だった。


10年目の乳がん死は5年間群の6.0%に対し、10年間治療継続群が5.8%で、15年目の発生率は5年間群で15.0%、10年間治療継続群で12.2%だった(通年でp=0.01)。


これらの乳がん死のRRデータと、5年時に実施されたメタ解析の結果から、タモキシフェンの補助療法を10年間行った場合と、全く行わない場合のRRを推定した結果、0~4年のRRは0.71(p<0.00001)、5~9年は0.64(p=0.0001)、10年目以降は0.52(p<0.00001)となり、10年間のタモキシフェン投与は乳がん死のリスクを、最初の10年間で約1/3、10年目以降は約1/2にまで低下することが示された。


主な副作用である子宮内膜がんと肺動脈塞栓症の死亡リスクは、タモキシフェンを全く投与しなかった場合に比べ、10年間治療継続することで0.4%増加するが、乳がん死におけるリスク低下による絶対ベネフィットは12%で、ベネフィットがリスクの30倍にのぼることも示された。


◎Barlow氏 待たれるOxford Overviewの結果 


同発表に対してDiscussantとして登壇した、米・Fred Hutchinson Cancer Research CenterのWilliam Barlow氏は、試験について、試験規模や地域、登録基準、期間などから、同試験は実社会を反映する試験であると評価。さらに、患者背景にも大きな差がみられないことから、「バイアスが治療効果に影響を及ぼした可能性はなさそうだ」とした。


その上で、組織サンプルのデータ入手が困難であることなどから、▽ER陽性の度合いが治療予測因子となるか検査できない▽有害事象の高リスク患者について予測できない▽タモキシフェン5年投与後にアロマターゼ阻害薬に切り替えた症例との治療効果を比較できない――などの課題が残ると指摘した。


Barlow氏は、「すでに5年間のタモキシフェン補助療法を受けたER陽性乳がん患者において、投与期間を10年間に延長することで、ベネフィットが得られることを明確に示した」とした上で、結論を出すには「15年間必要だった」と指摘。2013年に報告されることが期待される、同試験の対象患者を含む2万2000人を対象とした解析「Oxford Overview」の結果が明らかになることが待たれるとした。なお、同試験の結果は同日付の「THE LANCET」Online版に掲載された。

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