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AZ・ヴォックスストラム社長 国内売上高ナンバーワンを目指す! 抗がん剤やフォシーガCKD適応に自信

公開日時 2021/04/07 04:52
アストラゼネカ(AZ)日本法人のステファン・ヴォックスストラム社長は4月6日の2020年業績会見で、国内売上高ナンバーワンを目指すと表明した。現在、国内の売上高(内資、外資含む)は4位だが、25年に2位以内になり、最終的に1位を目指す。薬価ベースで売上900億円を超える抗潰瘍薬ネキシウムが22年頃に特許切れする見込みだが、▽タグリッソなどのがん領域製品の拡大▽SGLT2阻害薬フォシーガの慢性腎臓病(CKD)の適応追加▽米アレクシオンの買収効果――などにより、ネキシウムのパテントクリフを克服して業界ナンバーワンになると自信をみせた。

日本で承認申請中の新型コロナワクチン「AZD1222」(開発コード)に関しては、承認取得後に速やかに供給できるよう、パートナー企業の第一三共やKMバイオロジクスの国内拠点で3月から製剤化(ワクチンの充填)を始めたことも報告した。

■都市部の営業車削減 公共交通の利用推進

AZがグローバルで取り組んでいる25年までのCO2排出量ゼロの取り組みに関連してヴォックスストラム社長は、日本の都市部の営業車を削減し、MRの公共交通機関の利用を推進していると紹介した。ただ、「地方では自動車がいる」と指摘。これまでハイブリッドカーへの切り替えを進めていたが、25年までに全ての営業車を電気自動車に切り替える計画を明らかにした。

■AZ製品 「あらゆる領域で標準治療薬に」

同社日本法人の20年の国内売上は薬価ベースで26億2000万ドルで、前年比2%増だった。国内売上ランキング(IQVIAの販促会社ベース)は、16年と17年が7位、18年は8位だったが、19年は5位、20年は4位と近年ランクアップしている。

ヴォックスストラム社長は、20年も業績が好調だった理由として、▽新製品の上市が近年、継続した▽あらゆる領域でAZ製品が標準治療薬になり、非常に高い患者シェアを獲得した▽患者中心のアプローチを推進し、医薬品を提供するだけでなく、“患者をみていく”ことにより、より多くの患者に治療可能な手段を提案できた――ことを列挙。「我々のチームは非常によくやったと思う。日本においてベストな新薬上市ができた」と胸を張った。

21年も4製品の承認取得を計画している。具体的には難治性慢性リンパ性白血病治療薬カルケンス(1月に承認取得)のほか、全身性エリテマトーデスを対象疾患とするI型インターフェロン受容体抗体Anifrolumab、フォシーガのCKD適応、新型コロナワクチン「AZD1222」――となる。

ヴォックスストラム社長は、新薬上市や効能追加が今後も続く見込みのため、「25年に向けて業界内の売上で1位、2位になりたい。我々は日本でナンバー1の企業になりたいとの高い目標を掲げている」と語った。ネキシウムの特許切れ影響と持続成長との関係も気になるところだが、この点ついてヴォックスストラム社長は質疑応答で、ネキシウムの特許切れ時期について「言及しない」とした上で、「(ネキシウムの特許切れを)我々はわかっている。計算もしているし、計画にも反映させている。その上でナンバー1になると話した」と述べた。

成長ドライバーとして、タグリッソ、イミフィンジ、リムパーザ、カルケンスといったがん領域製品や、フォシーガの慢性心不全適応とCKD適応、高カリウム血症薬ロケルマ、喘息の抗体製剤を挙げた。なかでもフォシーガのCKD適応について、「非常に大きな市場だが、十分な治療法がない」とし、「解決策を提供することで、当社の成長をけん引する」と大きな期待を寄せた。20年12月にグローバルで発表したアレクシオンの390億ドル(約4兆円)での買収にも触れ、「有機的にも潜在的にも、我々はアレクシオンの合併でナンバー1になれるとねらっている」と話した。

■タグリッソ EGFR遺伝子変異陽性NSCLC1次治療における新患の81%に処方

同社日本法人の20年業績を詳細に見てみる。主要3領域の製品売上は、がん領域製品は15億1400万ドル、呼吸器・免疫製品は3億2800万ドル、循環器・腎・代謝疾患製品は1億4100万ドル――だった。

特に18年に承認を取得した新薬群が国内ビジネスをけん引した。最主力品のタグリッソは18年8月にEGFR遺伝子変異陽性の非小細胞肺がん(NSCLC)1次治療の適応を取得。20年第4四半期には、EGFR遺伝子変異陽性NSCLCの1次治療における新規患者の81%でタグリッソが処方されるまで成長した。ヴォックスストラム社長は、「タグリッソはEGFR遺伝子変異陽性NSCLCの標準治療薬になった」と紹介するとともに、術後補助療法の効能追加を計画していると説明した。

18年8月発売の切除不能ステージ3のNSCLCに対する初の免疫療法薬イミフィンジは20年に、根治的化学放射線療法後に同剤による治療を開始した患者は81%に達した。18年4月発売の国内初のPARP阻害薬リムパーザは20年に、白金製剤感受性再発卵巣がんの維持療法において64%の患者で処方されるようになり、こちらも標準治療になった。

呼吸器疾患では、18年4月発売のヒト化抗IL-5受容体αモノクローナル抗体製剤ファセンラが発売4か月で重症喘息治療薬市場の首位に立ち、現在シェア46%とマーケットリーダーの地位にある。ただ、喘息に対する抗体製剤ということで患者自己負担が大きい。このため同社は19年11月に、患者向け医療費相談窓口となる無料のコールセンターを設置した。ヴォックスストラム社長はコールセンター設置のねらいについて、「患者が十分な情報を得た上で治療を受けられるようにするためのサービス」と話した。

循環器・代謝疾患では、フォシーガが20年11月にSGLT2阻害薬として初の慢性心不全の適応を取得した。心不全の適応により「口座開設、売上増を実現」(ヴォックスストラム社長)しており、同阻害薬単剤市場のシェアは22.5%と2位につけ、1位に迫っていると説明した。

■新型コロナワクチン 国内での製剤化を開始

同社の研究開発本部サイエンス&データアナリティクス統括部長兼パンデミックワクチンプロジェクト日本リードの田中倫夫氏は、21年2月に承認申請した新型コロナワクチン「AZD1222」の変異株への有効性について、「日本で一番流行しているのはイギリス変異株と理解している」とした上で、「従来株に対する効果と同等の有効性」が期待できるとの認識をを示した。

ワクチンの承認取得後に迅速かつ安定的に供給できるよう、「経験豊富な日本企業とパートナーシップ契約を締結した」とし、パートナー企業の第一三共は3月11日から、KMバイオロジクスは3月19日から、海外で製造された原液の製剤化を開始したことを紹介した。原液の国内製造はJCRファーマに委託しており、JCRは3月末に原液の出荷を始めた。田中氏によると、国産の原液を用いた製剤化も近く始める予定だという。ただし、国産の原液を用いたワクチンは品質試験などを実施した上で承認を取得し、出荷との段取りとなる。なお、AZのワクチンの保管・配送はMeiji Seikaファルマが行う。

欧州連合(EU)によるコロナワクチンの輸出規制強化の日本への影響に関しては、原液は米国で製造して国内輸入しているため、「日本での供給に何ら影響を与えない」と説明した。原液を含む国内生産体制の構築にも早くから取り組んでいたため、「最小限のインパクトで済んだ」と述べた。
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