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塩野義製薬・手代木社長 新型コロナワクチンは年内供給目指す 治療薬は今秋までに臨床試験開始へ

公開日時 2021/05/11 04:52
塩野義製薬の手代木功代表取締役社長は5月10日、決算会見に臨み、新型コロナワクチンについて年内の供給を目指す考えを示した。手代木社長は、「大規模フェーズ3を並行させながら、国内では条件付き承認というような形で使わせていただける方向性はないかということで(当局と)お話をさせていただいている」と述べた。また、新型コロナ治療薬についても、9月末までの臨床試験開始を目指す。今年度中に緊急使用許可を取得するなど、実用化を視野に入れる。低分子創薬を基盤として経口薬を最初に開発する考えで、すでに選定を終えた。手代木社長は、「相当いいところまで来ている。早晩良いニュースをお伝えできると思っている」と自信をみせた。

◎感染症リーディングカンパニーとしての決意「早期終息に最優先で取り組む」


「ヒト・モノ・カネ、すべてのリソースを投入するという覚悟だ」―。手代木社長は、感染症のリーディングカンパニーとして、「COVID-19の早期収束に最優先で取り組む」決意を示したうえで、こう話した。2020年度は、インフルエンザの流行が見られず、主力品の抗インフルエンザ薬・ゾフルーザが振るわないなかで、売上高は対前年同期比で10.9%減の2972億円。売上原価や販管費を圧縮するなかで、研究開発費は13.1%増の542億円と集中的な投資を行った。2020年下半期以降は、リソースの集中を加速させていることも明らかにした。「感染症専門メーカーとして積極的に投資すべき時期。積極的に攻めていこうということで積み増しを行った」と説明した。

成果も出始めているという。新型コロナワクチンについては、初の純国産ワクチンの実用化に向けたアクションを進める。国内では臨床第1/2相試験を実施中だが、安全性に大きな懸念がないことを確認しているという。UNIGENに新設した生産設備が本格稼働するなど生産体制も整ってきており、生産体制にも自信をみせる。こうしたなかで、承認に必要な大規模臨床第3相試験をどう実施するかがカギを握る。手代木社長は、「なるべく早く、国民の皆さんに安心していただくような、ワクチンの提供を考えたい」と強調。当局とも条件付き承認や弾力運用などの活用を視野に協議を進めていることを明かした。「ほぼ全例調査に近い形でのフェーズ4をお約束させていただく代わりに条件付き承認をいただけないか」と“想い”を語った。

同社の開発するのは、遺伝子組換えタンパクワクチン。現段階のデータとして、「少なくとも安全性については、2回接種後の副反応を見ても、いま広範に使われているmRNA、ウイルスベクターとはかなり違う。インフルエンザワクチンの延長で考えられるような安全性を今のところは示している。我が国のワクチンを打たれる方には、望んでいただける性質を思っているのでは」と自信をみせた。またファイザーのワクチンなどで流通が課題となるなかで、「1人1バイアルで、通常の冷蔵ルートで開業医にお届けできる」こともメリットにあげた。

◎パンデミックの収束には治療薬が不可欠 経口の候補化合物をファーストランナーに

一方で、英国ではワクチンを2回接種した人でも数万人単位で新型コロナを発症していることを指摘し、パンデミックの収束に治療薬が不可欠との考えを示した。特に、「軽・中等症の患者が重症化することを防ぐことに対するニーズは高い」との考えを示した。そのうえで、塩野義製薬の強みである低分子創薬から選ばれた、経口の候補化合物の開発を最初に手がけることを決めたことを紹介した。

抗体医薬や核酸ペプチドの開発も進めるが、「マーケットのニーズとしてはホテルや自宅で、ウイルスが下げられる安全性の極めて高い経口薬だ」との見解を表明。低分子で経口薬であることをファーストプライオリティに選定した。「COVID19スペシフィックな治療薬がやっと見えてきた」と述べた。経口の新型コロナ治療薬としては、ファイザーがプロテアーゼ阻害薬について、3月から臨床試験を開始しており、半年間で緊急使用許可を取得する計画を立てている。手代木社長は、「ほぼ同じような開発計画を考えている」と述べ、開発スピードを上げる姿勢を強調した。

同社は、ワクチンや治療薬などの予防や治療だけでなく、下水疫学に基づく発症予測、重症化抑制など多角的にリソースを投入し、トータルケアへのアクションを進める。手代木社長は、「世の中が混乱しているのに、患者様にお役に立てるものを出し切れておらず、忸怩たる想いだ」と表明。年末までの今後6か月を「山場」として、「何とか答えを出していく6か月にということで、決意を新たにしている」と表明した。

◎20年度決算 2桁の減収減益 ゾフルーザなど振るわず感染症領域の減収響く


同社の2020年度決算は、売上高が対前年同期比10.9%減の2972億円で、2桁の減収減益。インフルエンザが流行せず、ゾフルーザなどインフルエンザファミリーを含む感染症治療薬の減収が響いた。国内の医療用医薬品売上高は、対前年同期比10.9%減の947億円。主力品のサインバルタやインチュニブは伸びたが、計画に届かず、感染症治療薬の減収を吸収することはできなかった。手代木社長は、コロナ禍で「新しい処方を稼いでいくというのが環境的に難しかったということもあり、伸ばしたには伸ばしたが、力不足だった」と振り返った。

販売管理費については、3.3%減の951億円に圧縮した。この背景として手代木社長は新型コロナの影響で、医療機関の訪問自粛要請があったことなどにも触れ、適正化を進めたとの考えを表明。「今後もデジタル、医療機関の訪問抑制は続くという中で、このあたりは継続して見直そうと思っている」とも述べた。

2021年度は、売上高2.4%減の2900億円の減収減益としている。クレストールのロイヤルティ収入が消滅するほか、サインバルタの後発品上市が影響する見通しだ。ただ、この計画には、新型コロナのワクチンや治療薬などの新たな事業機会を織り込んでいない。手代木社長は、、業績予想を出さないことも考えたことも明らかにし、「プラスの面での数字があり得るが、利益に入れていくのは難しいというのが正直な感想だ」と述べた。そのうえで、新規事業の実現・拡大で、「増収増益を目指す」と強調した。

【20年度連結業績 (前年同期比) 21年度予想(前年同期比)】

売上高 2971億7700万円(10.9%減) 2900億円(2.4%減)
営業利益 1174億3800万円(10.1%減) 900億円(23.4%減)
親会社帰属純利益 1118億5800万円(8.5%減) 1000億円(10.6%減)

【20年度の国内主要製品売上高(前年同期実績) 21年度予想、億円】
サインバルタ 265(262)151
インチュニブ 131(106)182
ビバンセ 3(0)10
感染症薬 98(160)170 –注1 
オキシコンチン類 53(58) 50
スインプロイク 23(21)31
アシテア 3(3)4
ムルプレタ 1(1)1
ピレスパ 51(68)35
その他 320(383)309
クレストール 67(86)65
イルベタン類 33(42)31

ロイヤルティ収入 1446(1669)1298
 うちHIVフランチャイズ 1234(1281)1252
 うちクレストール 166(223)11
 その他 47(165)35

注1)感染症薬の構成製品:ゾフルーザ、ラピアクタ、ブライトッポックFlu・Neo、フィニバックス、フルマリン、フロモックス、セフテム、シオマリン、バンコマイシン、バクタ、フラジール、フルコナゾール、イソジン
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