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薬機法等改正法案 衆院厚労委で採決 自公と立民、維新、国民の賛成多数で可決 19項目の附帯決議採択

公開日時 2025/04/17 04:52
衆院厚労委は4月16日、薬機法等改正法案を与野党の賛成多数で可決した。自民、公明、立民、維新、国民の各党が賛成。れいわ、共産が反対した。採決の後に、19項目の附帯決議を採択した。附帯決議は、自民、立民、維新、国民、公明の五派共同提案によるもの。質疑で焦点となった条件付き承認制度については、適切な運用を行うことに加え、「市販後の安全対策を強化することが必要であり、承認にあたっては、強化する市販後安全対策の内容を具体的に定めること」を盛り込んだ。議員立法で野党が提出した医薬品不足を解消するための中間年改定廃止法案については、薬機法等改正法案との同時採決を見送った。

附帯決議では、条件付き承認制度について、「承認後に行う検証的臨床試験の内容および臨床試験成績に関する資料を提出する期限等を可能な限り具体的に定め、正当な理由なく期限内に検証的臨床試験によって有効性及び安全性が確認できなかった場合には、承認取り消し権限を適切に行使すること」などを求めた。

リアルワールドデータ(RWD)の利活用について、臨床試験に完全に変わるものではないとして、「リアルワールドデータのみに基づく薬事承認は慎重に検討すること」などとしている。

この日の討論でも、立憲民主党の井坂信彦議員は条件付き承認制度について必要性は認めたうえで、「効果の不確かな医薬品も有効性の検証が不十分なまま承認されて流通することが懸念される。薬害被害者の方々の当事者団体から反対の声が上がっていることを重く受け止めなければならない」と指摘。共産党の田村貴昭議員は、「これまで検証的臨床試験の成績の提出を必須としていたのが、少人数の患者を対象とする探索的臨床試験だけでは有効性と安全性が十分に評価できない」などと指摘。「米国の迅速承認制度の下で承認された多くの抗がん剤が有用性を示せなかったとする調査結果について検証もされていません。こうした検証なしに、海外の製薬企業の日本市場参入のために行う本改正の規制緩和は、患者に安全性、有用性においてリスクを負わせるものであり、認められない」と主張した。

このほか、附帯決議では、法令違反等があった場合の責任役員の変更命令については、「事業者の経営権にも十分に配慮し、事業者が自律的に役員体制の見直しを行えるようにあらかじめ必要な指導を徹底すること」と求めた。

後発品の業界再編については、「業界の自主的な取り組みを促すだけでなく、個々の後発医薬品企業がその経営状況、製造能力及び品質管理等について第三者による評価を受ける枠組みを新たに検討するなど、客観的な外部の視点を織り込んで、着実に再編を推進すること」などを盛り込んだ。

◎採決が見送られた中間年改定廃止法案 立民・井坂氏「早い時期での採決求める」

この日の採決が見送られた中間年改定廃止法案について立憲民主党の井坂信彦議員は、「私たちの法案は、医薬品の安定供給イノベーション創出の基盤を強固にし、国民に品質の高い医薬品を安定して供給できるようにすることを目的としており、政府提出法案と目的を同じくしている。本来であれば中間年改定廃止法案についても、本日、政府提出法案と同時に採決をすると約束をしていたところであり、引き続き今国会のなるべく早い時期での採決を求める」と述べた。

【医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律等の一部を改正する法律案に対する附帯決議】

政府は、本法の施行にあたり、次の事項について適切な措置を講ずるべきである。

一:製造販売業者等の薬事に関する業務に責任を有する役員の変更命令を発出するにあたっては、事業者の経営権にも十分に配慮し、事業者が自律的に役員体制の見直しを行えるようにあらかじめ必要な指導を徹底すること。また、役員の変更命令を発出する場合の判断の考え方や手順をあらかじめ公表すること。

二:後発医薬品業界の再編を進めるにあたっては、業界の自主的な取り組みを促すだけでなく、個々の後発医薬品企業がその経営状況、製造能力及び品質管理等について第三者による評価を受ける枠組みを新たに検討するなど、客観的な外部の視点を織り込んで、着実に再編を推進すること。また、令和6年度補正予算によるモデル事業の成果も踏まえ、令和8年度中に品目統合による生産効率化の進展、産業力の強化等の観点から具体的なKPIを設定し、令和12年度末までの後発医薬品製造基盤整備基金設置期間中の後発医薬品業界の再編の取り組みを加速化させること。

三:後発医薬品製造基盤整備基金による支援をはじめとした本邦に規定する医薬品の安定供給のための措置の実施状況を踏まえ、医薬品の供給不足が解消されない場合は、後発医薬品の産業構造や薬価の見直しを含め、医薬品の安定供給のための措置を検討し、その結果に基づき必要な措置を講ずること。

四:条件付き承認にあたっては、承認後に行う検証的臨床試験の内容および臨床試験成績に関する資料を提出する期限等を可能な限り具体的に定め、正当な理由なく期限内に検証的臨床試験によって有効性及び安全性が確認できなかった場合には、承認取り消し権限を適切に行使すること。

五:本改正は、条件付き承認制度を米国の迅速承認制度と同様の制度とすることを目指すとされているが、米国の迅速承認制度によって承認された抗がん剤には、承認から五年以内に延命効果やQOLの改善を示さなかったものがあると指摘されていることを教訓に、条件付き承認制度の適切な運用を図ること

六:条件付き承認制度によって承認された医薬品等については、市販後の安全対策を強化することが必要であり、承認にあたっては、強化する市販後安全対策の内容を具体的に定めること。また、安全対策には、医薬品副作用被害救済制度における情報も生かすこと

七:医薬品の添付文書に条件付き承認制度によって承認された医薬品であることや承認の条件を明記し、患者にも十分な情報提供を行うこと。

八:条件付き承認制度によって承認された医薬品等により副作用被害を受けた場合には、医薬品副作用被害救済制度によって迅速な救済を行うとともに、医薬品副作用被害救済制度の対象となっていない抗がん剤の扱いについては、引き続き検討していくこと。

九:医薬品等の有効性及び安全性の評価において最も信頼性の高い方法は、比較臨床試験であること。薬事承認申請に際して添付する資料を定めた一般規定である。本改正後の医薬品医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律第14条第三項等の品質、有効性及び安全性に関する資料として厚生労働省省令で定める資料は、原則として臨床試験の試験成績に関する資料であることに変わりがないことを改めて確認すること。

十:リアルワールドデータは臨床試験に完全に変わるものではなく、薬事承認におけるリアルワールドデータの利活用には、適合性および品質が適切なレベルで担保されたデータベースの構築と、リアルワールドデータの利点と限界を十分に踏まえた基準の確立等が必要であり、引き続きリアルワールドデータの利活用のための適切な基盤の構築に努めていくとともに、リアルワールドデータのみに基づく薬事承認は慎重に検討すること。

十一:革新的医薬品等実用化支援基金について創薬環境の整備に資する事業に対して適切な支援が透明性を持って行われるよう、対象事業に関する基準の策定、対象事業の認定及び認定取り消し等を適正に行うとともに、基金の執行状況について定期的に公表すること。

十二:創薬力の向上により国民に最新の医療用医薬品を迅速に届けるための構想会議の中間とりまとめを踏まえた政策目標と工程表に基づき、成果目標の実現に向けて関係府省が一丸となって必要な施策事業の推進を確実に行うこと

十三:処方箋なしでの医療品医薬品の販売について、いわゆる零売規制の具体的な運用を定める厚生労働省令やガイドライン等の策定にあたっては、処方箋医薬品以外の医療品医薬品の積極的なOTC化推進及び薬剤師との相談を通じて、患者が主体的に医薬品を選択購入するセルフメディケーション推進の政策方針に逆行することがないように留意し、処方箋の交付を受けたもの以外のものに対して医療用医薬品の販売が認められるやむを得ない場合の範囲運用については、国民の医薬品へのアクセスを阻害しないよう十分に配慮すること。

十四:前項の運用については、本改正以前に零売を行ってきた薬局等が、国民の医薬品へのアクセスによる一定の役割を果たしてきていることも考慮し、過度な指導や規制により営業継続が困難となることのないよう、必要最小限かつ合理的な規制措置にとどめること。

十五:医療資源の効率的な活用を図る観点から、セルフメディケーションの社会的意義について国民への周知啓発を推進し、地域の医薬品供給体制の多様性と安定性の確保に努めること。

十六:国連女子差別撤廃委員会の勧告を尊重し、緊急避妊薬の全国の薬局での恒久的な販売について、面前服用をはじめ、年齢制限、親の同意価格などのセクシャルリプロダクティブヘルスアンドライツに関する諸課題について、これまでヒアリングやパブリックコメントでしか意見を聞いてこなかった当事者、とりわけ若い世代の意見を代表するものを検討の場に参画せしめること。

十七:リフィル処方箋の利用状況に関する実態調査を行い、利用が進まない理由を把握するとともに、患者と医療機関の負担軽減、医療費の抑制、医師の業務負担軽減等のリフィル処方箋利用のメリットについての周知広報に努めることにより、リフィル処方箋のさらなる利用促進に取り組むこと。

十八:地域における薬局の役割機能をさらに整理、明確化し、国民にわかりやすいものとするとともに、地域に必要な役割機能を持つ薬局に対し、適切に診療報酬上の評価を行うこと。

十九:薬学教育を受けた薬剤師の専門性を有効活用するため、プライマリーケアへのさらなる薬剤師の関与を検討し、必要な措置を講ずること。また、薬剤師のさらなる専門性向上のため、養成課程における教育内容、生涯にわたるキャリア形成のあり方、ふさわしい処遇等について検討を行い、必要な措置を講ずること。

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